死神なんてその辺のおっさんだ――そう奮い立ったら、殺された
「おっと、博多弁ば忘れとったばい。こん雑魚ば、消さんとね」
「……は、ははは! そうか! お前、その姿! 神の子が醜いゴーレムに転生したか!」
神の子? イゴラくんの妹だからゴーレムじゃないのか? ていうかライムチャートちゃんかわいいだろふざけるな。
――『うちは少し複雑なんです』
かつてライムチャートちゃんが悲しそうに言った言葉を思い出す。
「その軽い口ば、早よとじんね!」
タナトスの言葉に激昂したライムチャートちゃんの手から光の矢が放たれる。
しかし、――すべてよけられる。地面に触れる直前、その存在そのものをクレーターのように消滅させる。
古代樹の根が露出する。
間髪入れず、光の矢が降り注ぐ。
タナトスはすべてを避ける。死神ってあんなに動けるのか。
戦いのレベルが一気に上がり、俺たちは見守ることしかできなくなってしまった。
「さすがだ!」
タナトスは魔法を発動させようとするも、闇の球体が出現した瞬間に、光の帯に消滅させられ、中に消えていく。
「ははは、すばらしい力だ! だが、そんなに強力な力を使い続けて、いつまで持つかな……!」
「雑魚はようほえるばい」
還元魔法は生命には使えない。そう言っていたのを思い出す。つまりあの矢は当たっても、還元魔法のダメージにはならない。
こちらが何かフォローしなければ。ペッカとスコリィに視線を送る。
しかしそのとき、戦況が動いた。
「恐ろしいまでの力だな! だが使いこなしていないようだな!」
「はあ?」
ライムチャートちゃんの攻撃が単調になり、多数の光の矢はあっさりよけられ、次々とクレーターのような穴をあける。
彼女はもう何千本もの光の矢を出現させては攻撃している。
あきらかに挑発しているタナトスはにやりと笑う。
「そろそろ集まってきたか……。さあ、これはどうかな……!」
(集まってきた……?)
タナトスの発言に疑問がかすめる。
ただ、考える暇もなく闇の球が出現。その数、数百を優に超える。ライムチャートちゃんの魔法がいくつか消滅させられるが、追いつかない。
「その技はもう見ました」
彼女が両手をかざすと光の魔法陣が次々と闇球体を覆い、消滅させていく。数百もの球体が……すべて、消えた。
ただ、さすがに肩で息をしはじめるライムチャートちゃん。
そこで、不可思議なことがおこる。球体が消滅するとともに闇の煙が周囲を覆う。
「なんだ……?」
煙が晴れたとき、タナトスに地面から湯気のようなものが集まっていた。
(古代樹の根から力を吸い取っている……!?)
「この古代樹の力、いただくぞ!」
タナトスがそう言うと、古代樹が枝先から枯れ始める。
「無駄ばい!」
光の矢が半円を描き相手を取り囲む。
――しかし、タナトスが放った闇のオーラに打ち消される。
……相手の力が、増している!
「ははは! この古代樹はやはり世界樹の名残か。力が、違う……!」
タナトスがライムチャートちゃんを集中的に攻撃する。
〈ブォン〉〈ブォン〉〈ブォン〉
白い魔法陣を出現させ、すべて消滅させているけど、あまりに数が多い。
このままでは、彼女の魔力が持たないのは明白だ。
(気をそらさなければ……!)
俺は声を張り上げ、タナトスを挑発する。
「仮にも、死神が古代樹の力を吸い取らねばならないなんて、無様だな!」
タナトスへ小型ハニワを投げつけて、走り出す。
ハニワはやはり、鎌で切り落とされる。
「また、奇妙な呪具を使う転生者か……」
一瞬、こちらに注意を向けるタナトス。その顔は雑魚にかまう暇はないと、怒りで塗り固められていた。
怖じ気づきそうになるが、こっちだって何度も死ぬ思いをして過ごしてきたんだ。死神なんてご近所さんだ。つまり、死神なんてその辺のおっさんだ。
「お前、やっぱりこのハニワは怖いようだな! 切り落としているのがその証拠!」
「……念のためだ」
ライムチャートちゃんへの攻撃の手を緩めずに、こちらへも攻撃をしてくる。それを避けつつ、ハニワを投げ、皆にも声をかける。
「みんな! 遠慮せずに投げろ!」
俺は事前に渡しておいた小型ハニワを皆に投げるよう指示する。
「りょーかいっす!」とスコリィ。
「くらえ!」勢いよく投げるペッカ。
三方から離れて投げつける。
「小癪な……!」
タナトスはすべてカマで切り落とすが焦りは隠し切れない。
このハニワ、タナトスとはどうも相性が悪いみたいだ。調子に乗っていくつも子どものように投げつける。その様子を見たタナトスが俺を正面からにらみつける。
「もういい! お前から消してくれる!」
怒りの形相で腕を振り上げ、闇の槍を出現させ、勢いよく放つ。
不気味に歪む――黒い、槍。
これまでの直線的な攻撃とちがい、不規則な軌道でこちらに迫る。
必至に避けようとするが――。
〈ドスッ〉
「……え?」
気がついたときにはその槍に胸を貫かれ、吹き飛ばされていた。
――俺は、驚くほどあっさりと、命を落とした。
地面に散らばったハニワの欠片が、調子に乗った俺を不気味に笑っているようだった。




