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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第15章 ギリシャ神と古代樹とゴーレム兄妹編
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死神なんてその辺のおっさんだ――そう奮い立ったら、殺された

「おっと、博多弁ば忘れとったばい。こん雑魚ば、消さんとね」

「……は、ははは! そうか! お前、その姿! 神の子が醜いゴーレムに転生したか!」


 神の子? イゴラくんの妹だからゴーレムじゃないのか? ていうかライムチャートちゃんかわいいだろふざけるな。


――『うちは少し複雑なんです』

 かつてライムチャートちゃんが悲しそうに言った言葉を思い出す。


「その軽い口ば、早よとじんね!」

 タナトスの言葉に激昂したライムチャートちゃんの手から光の矢が放たれる。


 しかし、――すべてよけられる。地面に触れる直前、その存在そのものをクレーターのように消滅させる。

 古代樹の根が露出する。

 間髪入れず、光の矢が降り注ぐ。

 タナトスはすべてを避ける。死神ってあんなに動けるのか。


 戦いのレベルが一気に上がり、俺たちは見守ることしかできなくなってしまった。


「さすがだ!」


 タナトスは魔法を発動させようとするも、闇の球体が出現した瞬間に、光の帯に消滅させられ、中に消えていく。


「ははは、すばらしい力だ! だが、そんなに強力な力を使い続けて、いつまで持つかな……!」


「雑魚はようほえるばい」

 還元魔法は生命には使えない。そう言っていたのを思い出す。つまりあの矢は当たっても、還元魔法のダメージにはならない。

 こちらが何かフォローしなければ。ペッカとスコリィに視線を送る。


 しかしそのとき、戦況が動いた。

「恐ろしいまでの力だな! だが使いこなしていないようだな!」

「はあ?」

 ライムチャートちゃんの攻撃が単調になり、多数の光の矢はあっさりよけられ、次々とクレーターのような穴をあける。

 彼女はもう何千本もの光の矢を出現させては攻撃している。


 あきらかに挑発しているタナトスはにやりと笑う。

 

「そろそろ集まってきたか……。さあ、これはどうかな……!」


(集まってきた……?)

 タナトスの発言に疑問がかすめる。


 ただ、考える暇もなく闇の球が出現。その数、数百を優に超える。ライムチャートちゃんの魔法がいくつか消滅させられるが、追いつかない。


「その技はもう見ました」

 彼女が両手をかざすと光の魔法陣が次々と闇球体を覆い、消滅させていく。数百もの球体が……すべて、消えた。

 ただ、さすがに肩で息をしはじめるライムチャートちゃん。


 そこで、不可思議なことがおこる。球体が消滅するとともに闇の煙が周囲を覆う。

「なんだ……?」


 煙が晴れたとき、タナトスに地面から湯気のようなものが集まっていた。

(古代樹の根から力を吸い取っている……!?)


「この古代樹の力、いただくぞ!」

 タナトスがそう言うと、古代樹が枝先から枯れ始める。

 

「無駄ばい!」

 光の矢が半円を描き相手を取り囲む。


 ――しかし、タナトスが放った闇のオーラに打ち消される。

 ……相手の力が、増している!


「ははは! この古代樹はやはり世界樹の名残か。力が、違う……!」


 タナトスがライムチャートちゃんを集中的に攻撃する。

 〈ブォン〉〈ブォン〉〈ブォン〉

 白い魔法陣を出現させ、すべて消滅させているけど、あまりに数が多い。


 このままでは、彼女の魔力が持たないのは明白だ。


(気をそらさなければ……!)


 俺は声を張り上げ、タナトスを挑発する。

「仮にも、死神が古代樹の力を吸い取らねばならないなんて、無様だな!」

 タナトスへ小型ハニワを投げつけて、走り出す。


 ハニワはやはり、鎌で切り落とされる。


「また、奇妙な呪具を使う転生者か……」

 一瞬、こちらに注意を向けるタナトス。その顔は雑魚にかまう暇はないと、怒りで塗り固められていた。

 怖じ気づきそうになるが、こっちだって何度も死ぬ思いをして過ごしてきたんだ。死神なんてご近所さんだ。つまり、死神なんてその辺のおっさんだ。


「お前、やっぱりこのハニワは怖いようだな! 切り落としているのがその証拠!」

「……念のためだ」


 ライムチャートちゃんへの攻撃の手を緩めずに、こちらへも攻撃をしてくる。それを避けつつ、ハニワを投げ、皆にも声をかける。

「みんな! 遠慮せずに投げろ!」


 俺は事前に渡しておいた小型ハニワを皆に投げるよう指示する。

「りょーかいっす!」とスコリィ。

「くらえ!」勢いよく投げるペッカ。


 三方から離れて投げつける。


「小癪な……!」

 タナトスはすべてカマで切り落とすが焦りは隠し切れない。

 このハニワ、タナトスとはどうも相性が悪いみたいだ。調子に乗っていくつも子どものように投げつける。その様子を見たタナトスが俺を正面からにらみつける。

「もういい! お前から消してくれる!」


 怒りの形相で腕を振り上げ、闇の槍を出現させ、勢いよく放つ。

 

 不気味に歪む――黒い、槍。

 これまでの直線的な攻撃とちがい、不規則な軌道でこちらに迫る。

 必至に避けようとするが――。


〈ドスッ〉


「……え?」

 気がついたときにはその槍に胸を貫かれ、吹き飛ばされていた。


 ――俺は、驚くほどあっさりと、命を落とした。


 地面に散らばったハニワの欠片が、調子に乗った俺を不気味に笑っているようだった。

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