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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第4章 高身長ストーンピクシーのバイト編
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最初のアルバイトが来るとき店長の方が緊張するけど必死に隠してる

【あらすじ】雑貨屋をひらき、客もぼちぼちやってきたが、まだまだまともな商品もない。昨夜作ったハニワが動けば高く売れると期待して駆けつける。月明かりに一晩当てていた人形は動くのか?


【登場キャラ】

・クタニ(主人公):転生者。若返り転生おっさん。中身はハニワオタク。陶器とハニワ制作でスローライフ経営を目指している。屋敷と山を100億で購入し、借金生活。

・ルルドナ:クタニが作ったハニワから生まれた少女。強気だがやや抜けている。昼に強制的に寝てしまう夜勤担当。会計もしている。


・イゴラ:ミニゴーレム。最初の客。

 残念ながら、ハニワは……、動いてなかった。

 まるで、昨夜のうちに魂をどこかに捨て去ってしまったかのように、静かだった。


「うーん、やっぱりルルドナが特別なのかなぁ」

 ハニワに顔を近づけながら考え込む。


 ルルドナは腕組みしながら答える。

「私が特別なのは確かだけど、全く動かないものかしら……」

 特別なのをさらっと自称しつつ、ハニワを観察する。


 しばらく二人で考え込むも、手がかりがも出てこない。


 もしかして、と小さく言って言葉を続ける。

「俺の涙が条件なのかな……」

 ……いや、おっさんの涙に需要はないだろう。

 神の見えざる手も引っ込むわ。

 絶対にきっかけにはなり得ない。


「あり得なくもないわね。……ともかく、次は泣かせるわ」

 腕まくりをして笑顔を向けるルルドナ。怖い。

「お……穏便に、頼むよ」


「にしても、高く売れるものがないわね」


「俺の作ったハニワは……」

 動かなくても、珍しくて売れるかもしれない。


「あんなもの、きっともの好きしか高く買わないわよ」

 

「あんなものから生まれたくせに……」

 

「そんなこと関係ないわ。……あ、私、もうすぐ寝るわ……」

 昼間になると強制的に寝てしまうルルドナは、店内の掃除をさっと済ませて、ソファに寝てしまった。


***

 扉がきしんで開いた。そこに立っていたのは――

 あのクレーム爺さん。

 だが今回は、まるで別人のように深々と頭を下げていた。


「改めて礼を言う。婆さんの病が、ひとまず治った。あんなにつらそうだった咳が止まったんだ。ありがとよ」


 まるで江戸っ子時代劇の一幕みたいだ。俺は戸惑いながらも、笑顔で応じる。


「お役に立てて、何よりです」


「……ついでに、こいつがワシの孫だ。昨夜、世話になったそうだな」


 後ろにいたのは、昨日のフードの長身の女の子。ヒト族だろうか。

「この子の両親は都会で働いててな。自然の中で育ててたんだが……」

 言葉を切り、フードの女の子に視線を送る。だけど彼女は微動だにしない。


「学校出てもふらふらしとってな。夢を叶えたい言うて、月見草を買ったらしい。まったく世話の焼ける孫でな……」


 嘆く爺さんに俺は、軽く返事をする。

「まあまあ。あれ、あまり売れなかったですし」

(ほんとは完売だけど)


「それで、君は何か病気だったの? 夢を叶えたかったのかな?」

 俺は子どもに話しかけるように言う。


「言いたくない」

 頬をふくらませてそっぽを向く。まるで幼児みたいな反応。


 露草色のさらさらヘアーがフードから出て腰のあたりまである。服はへそ丸出し短いパーカーでショートパンツをはいている。全体的にスレンダーでモデル体型だ。

 顔はやはりよく見えない。


 爺さんが咳払いして言う。

「なんでも貯金箱の中身をはたいて、前払いしたらしいな。ツケでモノを買うなんて百年早え。残りは奉公して返すそうだ。社会勉強だ、ちっと鍛えてやってくれ」


 ……俺の了承を待たずに話が進んでいく。


 100万円受け取ってる身としては、断る権利なんてなかった。

 次郎長ばりに堂々とした爺さんは「じゃ、頼んだぞ」とだけ言い残し、立ち去った。


***

「よろしく。俺はクタニ。奥のソファで寝てるのがルルドナ」

 今回はちょっとだけマシなソファに寝かせてある。


「ストーンピクシーの、スコリィ・アパミスです。ルルドナさんにもご挨拶していいですか?」


(ストーンピクシー? あまりファンタジーでは出てこない種族だな)

 にしても、この子は意外としっかりしてる……と思ったのも束の間。


「か、かわいい……」

 ルルドナの寝顔を見て、よだれを垂らしていた。


 (あ、この子……しっかりしてるんじゃなくて、変態をうまく隠してるタイプのやつだ)


 くせのあるアルバイトを選んでしまったかもしれないと天を仰ぐ。だが頭上には薄暗い天井しかなかった。


 (そもそもピクシーって、とても小さくて人間とほぼ同じ見た目で、とても小さいはず。この子は、ストーンピクシーって言ってたけど、大きい種族なのか?)


 彼女の背中には、ピクシー特有の羽が小さく生えている。肌質はヒトっぽいけど、ざらざらしてそうだ。

 興味が尽きない存在だけど、……そんなことより。


「おほん! 鑑賞はそこそこにしてもらおう。……実は今、売る物がないんだよ。仕入れ先、心当たりない?」


「え、仕入れ先もなしに雑貨屋始めたんすか?」


 顔に「このヒト、バカですか?」って書いてあるが、見なかったことにした。


「おうよ。裏山から自給さ! だけど山には今、危険なモンスターがいるみたいで、立ち入るのは控えているんだ。こういうときのために仕入れ先がほしいんだけど」


「……それなら私に任せてくださいっす!」


 そう言って、最初の店員は飛び出していった。

 直前に見えた横顔は、妙に悪だくみを企んでいるように見えた。

不安しか無いですが、ストーンピクシーのスコリィは良い商品を持ってくるのでしょうか?

彼女は月見草で何の病気を直したのでしょう?

※ストーンピクシーは本作の想像上の生物ですのであしからず。


【本日の新商品】

レンガパン:280ゲル(仕入れ90)

※複雑になってきたので、新キャラや商品まとめます。→https://ponkotsu-isekai.blogspot.com/


感想・コメントお待ちしております!


2025.5.8 誤字脱字修正しました!

2025.7.6 スコリィの容姿の説明、追加しました。

2025.8.11 主人公の一人称を俺にして、それに合わせて各所書き直しました!

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