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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第15章 ギリシャ神と古代樹とゴーレム兄妹編
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神との戯れは……実際にやると気疲れするだけ

「ときにあなたたちはどうしてここに来たのです?」


「はい! 古代樹からいい枝を探して、挿し木で増やして盆栽も販売しようとしてるっす!」

 スコリィが元気に説明しだす。憧れの神様に会えたことが嬉しいらしい。

 しかしその神様の反応は本人にも意外なもののようだった。


「……あら、あなた、スコリィちゃんね。大きくなっちゃって」

「え?」


「あなたはあの頃まだちっちゃかったから、きっと覚えてないでしょうけど……」

 イゴラくんが間に入って説明をしだす。

「僕らがとても小さいころに会ってるんですよ。僕のおじいさんの盆栽仲間で。スコリィさんは小さかったから覚えていないかも」

 イゴラくん、スコリィより年上だったのか。

 ゴーレムもピクシーも長寿だから、人と感覚は違うだろうけど。


「二人とも仲良かったですものね。ふふふ、微笑ましくていいですね。二人がいつまでも仲良しであるように祝福しておきますね」

 ……神様に祝福された幼馴染ってお前ら一世代前の漫画の主人公かよ。


「はい、じゃあ二人ともー、枝ぶりがちょうどいいやつを探してきてー」

 邪魔者扱いされる前に俺が手をパンパンと叩いて、指示を出す。


「あ、それ私もいいですか?」

 酔っぱらったまま提案してくるデメテル様。


 ……なんと俺たちは神様と一緒に挿し木の枝探しをすることになった。

 (え、何このイベント。まあいいや。枝を探すふりをしてデメテル様の美貌をちらちらと目に焼き付けておこう)


 小一時間後。デメテル様が満足げに言う。


「あー楽しかった! では、素敵な器、期待してますよ」


 神様に笑顔で見送られ、貴重な体験をした俺たちは妙に疲れて家路についたのだった。


***

「あんたたち、何をしていたの?」

 唯一、デメテル様と面識のないルルドナが、帰りの遅かった俺たちを問い詰める。


 俺たちは両手に土にさした大量の枝の布袋を抱えていた。

「神と戯れていたのさ……」

「へえ~。ここにも来ていたらしいけど、二度も会うなんてそれはそれは奇遇ね~」


 全然信じてない調子でルルドナが俺の前へ詰め寄る。

「あの、本当っす。偶然、古代樹の枝でビールを飲まれてたっす」

 首をまげてスコリィの方を見るルルドナ。

 隣でイゴラくんがうんうんと首を縦に振っている。


「ふーん、本当のようね。……まあいいわ。作るんならとっとと作りなさい、盆栽鉢」

 二人の言葉についに信じることにした様子のルルドナ。 

(……俺ってこういうとき信頼ないなぁ)


 気を取り直して、作業場所のほうをのぞき込むとペッカが木彫り細工に黙々と取り組んでいるのが見えた。意外とペッカは職人気質だ。こちらを横目で見て一言いう。

「木をあまり乾燥させてはならない。早く植木鉢を作ってやれ」

 さすがフォレストドラゴン。木に関してはまさにプロフェッショナル。


 かくして俺は神様に献上する盆栽の鉢を作ることになった。


***

 その日の夜。

 盆栽となる枝を見ながらなら創作意欲が湧くようで、何とか納得いく作品がいくつかできた。これらのうちどれかは気に入ってくれるだろう。


「あーようやくできた」

 俺は立ち上がって、背伸びをする。月時計を見るともう9時を回っていた。

 そのとき、外から覗き込む視線を感じた。


「誰だ!」

 窓を開けてみてみるが誰も見えない。

「え、なに?」

 店のほうから夜勤をしていたルルドナが出てくる。


 ルルドナは何か表情がさえない。魔王モールから帰ってきてからずっとこうだ。

「そこに誰かいたような気がしたんだけど……」


 窓から身を乗り出してあたりを見渡す。しかし、何の気配もない。

 不気味な風が顔をなでる。 裏手に広がる森は、まるで何かを隠しているかのように、闇を抱えて沈黙していた。

 一緒に顔を出していたルルドナが怪訝につぶやく。

「……何もいないわよ」


「この森には、凶悪なモンスターなんていないんだよな?」

 ルルドナに質問したつもりだったが、俺の頭にふらりと乗っかるペッカが答える。


「ああ、俺様の住んでる森だからな」

 いやおまえ暗いの怖いからってここに住みついてるじゃねぇか。

 おかげで、たくさんの魔法灯で照らされたペッカの部屋だけめちゃくちゃ明るい。


「……まあ、俺の気のせいだろう」

「神様と枝集めなんかしてたから、疲れてるのよ。今日はさっさと寝なさい」

 外の様子も気になるけど、ルルドナの様子もどこかおかしい。

  9時に寝ろなんて、彼女が言うはずがない。


 ……もしかして、占いで判明したあの事実――。

  転生前の自分が、『ただのデータ』だったってことを気にしてるのかもしれない。

 でも、人間だって、結局は情報のかたまりなのに。


「そう、だな。早めに休ませてもらうよ」

 外の闇を切り離すように、俺は窓をパタンと閉める。


 静かにあくびをして、作業場所を片付け、寝床へ向かった。


 ――次の日、そこで詳しく調べなかったことを、俺は酷く後悔することになる。

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