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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第14章 茶屋から帰省編
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おやじ臭いと言われても気にならなくなってからが本当のおやじのはじまり。――雑貨屋、決起集会

 日が沈んでから店じまいして、俺たちは町の居酒屋に来ていた。(以下、お酒名は自動翻訳されます。)


「では、仲間も増え、ルルドナも取り戻して、営業再開できたし、飲むぞー!」

「「「かんぱーい!」」」


 俺がジョッキを高らかに掲げ叫び、皆で乾杯をした。

 こんな挨拶、普段の俺なら絶対やらない。でも、今夜は違った。ジョッキを掲げる手に、迷いはなかった。やはり、信頼できる仲間がいると違うのかもしれない。


「今夜は無礼講だ! じゃんじゃん飲んでくれ!」

 俺が言うとペッカが「いつも無礼講だけどな!」と珍しくツッコミをする。出来上がるの、はえーよ。


「いやあ、一時はどうなることかと思ったっすけど、また店ができるのはいいっすねえ」

 スコリィがチューハイを飲みながら、入社十年目の中堅社員のような貫録で言う。


「……ちなみにスコリィはまだ借金が残ってるからな」


「もうチャラにしてほしいっす! 新月祭バトルで命張ったんすよ!? チャラでいいじゃないっすかー!」


「それはそれ、これはこれ。お金の話は厳しいの。毎月の給料から20パーセント引かせていただきます」


「じゃあ、アタシが一番バイト歴長いんだから給料上げてほしいっす!」

 チューハイのジョッキを一気飲みして反論するスコリィ。


「店の売り上げが大きく伸びるまでそんなことはいたしません!」

 こっちもビールを一気飲みして堂々と言い返す。若返り転生して胃袋も丈夫になった俺をなめて貰っては困る。


「じゃあ当分は無理じゃないっすか! もういいっす! 食いだめするっす!」


 スコリィは目の前の食べ物を手当たり次第に腹に詰め込みだした。イゴラくんの前なのに遠慮がない。 もっともイゴラくんは気にした様子もないけど。というかやはりちょっと元気がない。疲れているだけだろうか?


「にしても、ここのお酒、おいしいですね」

 白ワインを水のように飲むガディ。いつの間にかボトルが3本空いている。この人、肝臓が召喚獣か何かなのか?

「あの、飲みすぎは……(会計が怖い)」


 上機嫌で満面の笑みを浮かべる彼女に、俺はストップをかけられない。

「でもうちの里のお酒もおいしいんですよ。ぜひ今度仕入れてください」

「お、いいね。でも入荷できるほど近いの?」

「ええ、ウンディーネの里はここから歩いて二時間くらいですよ」


「意外と近い!」

 きっとガディみたいな美人がたくさんいるところなんだろう。ぜひ足を運んでみなければ。

「意外と近いな! よし、次は『聖水仕込みの銘酒』を取り扱って、客単価を上げるぞ!」


「あんたは土こねてればいいんでしょ?」

 ルルドナが赤ワインのグラスを回しながら、いたずらっぽく言う。頭にはハニワの兜。すっかり馴染んで、もはや身体の一部に見える。


「そうなんだけど、売れたらまた別の喜びがある」


「それはいいことね。どういう人に使ってもらいたいか考えながら作るといいわ」

「細かいことはいいんだよ! 駆け出しなんだから創作意欲にハニワとか作っていたらいつか大流行するかもしれない!」

「それダメなクリエイターが言うやつじゃあ……」


「俺様が木彫り細工を教えてやってもいいぞ」

 ペッカは怪しげなマムシ酒を飲んでいる。こんな田舎の居酒屋で飲めるんだ……。

「いやペッカのやつかなりすごいよ。飛騨の職人も驚くよ」

「飛騨?」


「転生前の世界の木彫り職人の地域だよ。いやマジですごい作品があるんだよ。それこそドラゴンの彫り物もあるぞ」

「ほう! それはぜひ一度拝んでみたいな……!」

 機嫌よくマムシ酒を傾ける。だけど、その目には少し哀愁の色があった。うーん、ドラゴンは伝統工芸で対抗して住処を追われているって言ってたし、いつか詳しく聞いてあげないとなあ。


「オイラ、ほとんど手伝えてないけど、飲み食いしていいのか?」

「ああ遠慮するな。スラコロウと組んでいれば、いい作品が作れそうだ」


 スラコロウには、その程よい硬さを活かして器の型になってもらっている。イメージを言えば自由自在に変形する型なんて最高なんですけど。


「うーん、でも何か働きたいぞ」

「まあそのうち忙しくなって役割なんて腐るほど出てくるさ」


「そんなものか」

「触手がたくさん伸ばせるのならそれを有効活用した役割があるかもな。ともかく、考えすぎるな丸くなれ」


「あ、お前、オイラの決めセリフを!」

 スラコロウは俺の頭の上で飛び跳ねるがあまり痛くない。


 ***

「……ふふ、賑やかでいいわね」

 赤ワインのグラスをくるくる回しながら、ルルドナが呟いた。

 そうだ。ルルドナとしては一気に仲間が増えた感覚なんだ。まあでもまんざらでもないようだ。


「仲間と呼ぶにはまだ日が浅いかもだけど」俺がちょっと悲しげにいう。

「異世界ではそんなこと気にしなくていいわよ。もうれっきとした仲間よ」


「そう、かもな」

 俺は器の日本酒の波打つさまを眺める。ゆらゆらと同心円状に揺れている。


「……にしてもここの器はなかなかいい」俺が日本酒を入れた器を掲げ、いろいろな角度から見る。

「クタニの作品、ここにも置いてもらいなさいよ」ルルドナが俺にすすめる。


「ハニワを?」

「馬鹿ね。お酒用の器よ」


「そうだね。いい器で飲むとお酒がうまくなるからね」

「今自分の作品のことさらっといい作品って言ったわね……」

「実際、作品はかなり上達しただろ」


「売れ残り、結構あるんだけど」

「それは、ほら、爆買いしてくれる人が出てくるよ、……きっと」

 俺は目が泳ぐ。


 ルルドナは大きくため息をつく。

 そのときイゴラくんがフォローしてくれる。

「クタニさんの作品、確かに上達しましたよ。僕が最初に依頼した器と比べたら」

 なんだか結構ひどいことをいわれた気がする。


「……それに比べて僕のパン作りはちっとも上達していないし、皆さんに迷惑とか心配かけてすみません」

「何言ってるんだ。あんなおいしいパン、なかなか作れないって。自信持ってくれ! ていうかうちの主力商品なんですけど!」

「そうかもですけど、戦闘面とか、全然役に立ててないし……」

 イゴラくんがしょぼんとうつむく。


「はい、今日はそういうのなし! ほら、飲め! 明日から多めに焼いてもらうからそれで実力伸ばせばいいの! 戦闘面はこのメンツがおかしいの!」

 俺は肩を組んでうざい感じでイゴラくんにからむ。予想以上に酔っているのかもしれない。


「そう、ですね。明日からまた鍛えなおします!」

 イゴラくんのけなげな笑顔が、やけに胸に残った。……スコリィと一緒に、推し活でもするか。


「それならアタシ、戦闘修行に付き合うっす!」

 しっかり聞き耳を立てていたスコリィが手を挙げて提案する。


「おお、いいね! 青春だね!」

 俺が親指を立てると、スコリィにジト目で見られる。


「……てんちょー、おやじ臭いっす」

 

 距離を置くスコリィと、その言葉に力強く頷くガディを前にしても、全く気になることはなかった。酒の力か、これが本当のおやじの始まりか、……深く考えるのはよしておくことにした。

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