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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第14章 茶屋から帰省編
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魔王ペイなんてお断りですわ、元悪役令嬢はそう言った

魔王ペイは導入されるのか……?

「こちらが魔王ペイです! 店側の手数料はたったの1.98%! 魔法カード支払いでスムーズにお会計ができる、今話題の決済術なんですよ!」


――魔王ペイ。どうやら、魔法陣の札をレジ前に置いて、専用のカードをかざすだけで支払いが完了するらしい。


「このエレガントなシステムさえあれば、店員さんの負担は減り、お客さんも小銭をカチャカチャする時間がいらなくなります!」

「いや、それ、いいです」

俺がきっぱりという。


「こんな観光地でもない田舎に、そんなもんあってどうするんですか?

お年寄りが使えるんですか? 魔王カードって壊れないんですか?

故障間隔は? てかコンビニのレジでも、あのペイマークの多さ、意味わかんないんですよ。覚えきれないですって!」


俺は日ごろの鬱憤をこめてペイ次郎を責め立てる。いつの間にか転生前のバイトの愚痴も混ざっていた。


「こ、コンビニ……?」

ペイ次郎は明らかに動揺している。額に流れる汗を白いハンカチでふいている。

なんでショッピングモールあるのにコンビニねーんだよこの異世界はよ。あってもどうせクビになるだろうけど。


「て、てんちょー。言うときは言うんすね……! いよっ! 兄ちゃん男前!」

スコリィが妙なテンションで応援してくれる。

なんで江戸っ子風なんだよ。


「と、ともかく、今なら手数料0%実施中ですよ!」ペイ次郎が必死に食らいつく。


「はっ! それがどうした! そのあと俺らが依存したところで手数料をじわじわ上げていくんだろ! そんなの転生者にはお見通しだ!」

俺がどこかのさえない探偵のように相手を指さす。


「あなたも強情ですね……。今ならわが魔王ペイのマスコットキャラクター、白犬の……」

「おいちょっとそれ以上言うな! 偉い人に怒られる!」


「おっほっほ。魔王軍の、ペイ次郎さん、ここはいったん引いたほうがよさそうですわよ。魔王ペイなんてスローライフには似合いませんことよ」


俺たちのやり取りを楽しそうに聞いていた瀬戸さんが出てくる。さすが元悪役令嬢。貫禄が違う。

その顔を改めてみたペイ次郎が、腰を抜かして5メートルほど後ずさる。


「お、おお、お前は! 伝説の六古窯の……瀬戸!」


「おっほっほ。そうよ」


「そうか、こいつがこんなに強気なのは、お前がいたからか! ……いや、ちょうどいい! まとめて契約させてくれるわ!」

俺が強気なのは日頃のうっぷんを晴らしたかったからです。


腰を抜かしたままいきりたつペイ次郎。がくがくとした足で立ち上がる。


「おっほっほ。威勢がいいですわね。ちょうどいいですわ。わたくしがお相手しましょう」

その巨漢を揺らし、彼女はショルダーバックを放り投げた。


***

「私の力にやられて、団子を注文するといいわ」

またこのパターンか。魔王モールはいつか団子専門店になるぞ。


「ほら、あなたたちこれを」

俺たちはなぜかみなサングラスをかけさせられる。え、何このシュールな光景。3D映画でも見るの?


しかしその理由はすぐにわかった。

次の瞬間、光が炸裂する。

「すべてを包み込め! 純白光魔法、瀬戸の入れホワイトベール!」

それは、あまりに眩い、白い光。

幾重にも重なったそれは、まるで、太陽が作り出したオーロラ。


しかし――敵もサングラスをかけていた。

用意いいな。


「ふああははは! 光の力に慢心し、自分を甘やかしたな」

まずい、ああみえて、ペイ次郎の力は絶大か――。


「よかろう……最後の手段だ!」

ペイ次郎が掲げた魔法陣が、まるでQRコードのような模様を浮き上がらせ光だす。


……最後の手段早くない?

「すべてを決済せよ、電子マネー魔法! 即死決済ペイデス!!」


俺たち全員の前に幾重にもバーコード魔方陣が展開される。

「それはどこまでも対象についていき、数秒後に必ず相手を貫くビームを放つぞ! 全員くたばれ!」


ペイ次郎、なんだかやけになっている。

ってこれ、実質、……死の宣告じゃないか!


「ちょ、逃げてもついてくるっす!」スコリィも慌てている。

「これまずいぞ」ペッカも魔方陣を攻撃するが効果がないようだ。

「わわたしは自動迎撃魔法がありますからら」ガディだけずるい。って動揺してるからまずそうだ。


慌てる俺らをなだめるように、オペラ歌手のような瀬戸さんの声が、静かに、響きわたる。


「すべての魔法よ、飛び去れ。鳳凰文炉縁・ホワイトイットフェニックス

〈ブオォォーー!!〉

炎のように白く燃えた魔法が、バーコード魔方陣を一掃していく。


ペイ次郎の即死決済魔法は――決済できなかった。


死の宣告を受けた俺たちは、いきなりの大魔法同士の争いに、ただただ呆然と立ち尽くすしかなかった。


こうして瀬戸さんの活躍によって魔王ペイの導入事件は無事に終わった――かのように見えた。

魔法考えるのに時間かかってます……。


感想・コメントお待ちしております!


2025.8.15 主人公の一人称を俺にして、それに合わせて各所書き直しました!

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