博多弁の妹ほど頼れる存在はない
地面のパンを使って、どうにかなるのでしょうか?
「どうにかなるって?」
上空を舞う敵は旋回の高度を低くして、こちらに狙いを定めている。
「夜明け前の鳥は食べもんがほしいだけやけん。別に私達が悪いわけじゃなか」
「そんなこと言っても、俺達がごちそうなのは変わらない……って、来た!」
慌てふためくと、ライムチャートちゃんはそのまま倒れ込むように、両手をつく。
その両手と周りのパンとなった地面が光る。
「ま、まさか……」
彼女が使えるのは還元魔法だけではない。
立派な石の塔をつくることもできていた。
再構成の魔法も使えるのだ。
ガルーダの爪が迫る。
俺たちに勢いよく振り下ろされる鋭い爪――!
〈ポスッ〉
間抜けな音がする。ガルーダの爪が掴んだのは、巨大なハンバーガーだった。直径2メートルは超えるほどの巨大ハンバーガー。
しかもあれは、てりやきチーズバーガーだ……!
「……」
バサバサ、とホバリングするように上空で静止し、己の爪が掴んだ獲物を見るガルーダ。
そのバーガーに納得したのか、静かにその場を去っていった。
「よ、よかったぁ……」
「……ふう、チーズば入れんと危なったね」
いや、それはどうでもいいだろ。
「そう、なのか?」念のために尋ねる。
「この世界の魔物はグルメになってますからね」
手に持った小型のバーガーを俺に差し出す。結構余裕あるな。
「しかし材料って、どうやって調達したんだ? チーズとか肉とか……」
「森ん中にあるタンパク分ばそれっぽくしただけよ。土とか、その中にいる……」
「ちょ、ちょっと待った! いい! 言わなくていい」
世の中には知らないほうがいいことがある。眼の前のハンバーガーが美味しい。それでいいではないか。店でやるとコンプライアンス違反になりそうな考えだけどな……。
「そりゃ残念ばい。異世界人は化学に詳しいけん語りたかっちゃけど。どぎゃんにせよ、地面のパンがなければ危なかったばい」
薩摩弁が混ざっているような気がしなくもないが、ともかくイゴラくんのお陰で助かった。
「で、これからどがんすっと? 登って日の出ば見ると?」
もう空はかなり明るくなっている。日の出は近い。
「……まずはこの穴から出ないと」
そう、俺らは、パンの地面のぶん低くなった窪地にいた。
2mくらいだろうか? 幅広い落とし穴に落ちているようなものだ。
「私は魔力切ればい。休むけん、あとよろしくね」
彼女はハンバーガーを食べ終えると、もそもそとレンガ帽子の縁に手をかけ―― 。
〈スポンッ〉
レンガの帽子に体を引っ込めた。
「ちょ、え……?」
俺は彼女が引っ込んだレンガの帽子を持ち上げてみる。……重い。20キロはあるぞ。スコリィのやつは軽々と持ち上げてたけど。
これを持ったままでは穴から出ることができない。
俺は見上げながら考え込んでいた。
――そのとき。
ふいに、穴の上から──黒い影が、俺を覗き込んだ。
覗き込む影の正体は……?
またこのパターンでひいてすみません。
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