魔王モールの店長だって腰痛には勝てない
鑑定の途中、横から来た槍……!
〈ガツンッ!〉
占いテントに、横から入ってきた槍。
――これが……本当の“横槍を入れる”ってやつか!
目の前に飛び出してきたのは、槍。
それも、天幕の横腹を突き破り俺たちのもとに届く、規格外の長さのものだった。
俺たちが動けないでいると、外から大きな声がした。
「出てこい、優勝者!」
「いったい誰だ!?」
占い師が怒りに満ちた声を上げると同時に、俺達を反対側の出入り口から逃がす。
慌てて外に出て敵を見た。
外で待ち構えていたのは、長さ5メートルはあろうかという異常に長い槍と――
それを筋肉質の片手で持ち上げる、ケンタウロス。
……いや、日焼けした上半身は中年体型のぽっちゃりオヤジ。
下半身は馬――中年ケンタウロスじゃねえか!
「我はショッピングモール三号店が店長、ウェストフィ・留堂なるぞ! 昨日我がいない間に暴れてくれたそうじゃな! その実力、我が確かめさせてもらうぞ!」
普通、屋内では槍を使っての戦闘は不利になるはずだが、ショッピングモールは天井を高くとってあるため関係ないようであった。
ウェストフィ・留堂は、息を荒げ、怒りに囚われている様子だった。
槍を突き出す。
〈ガキィン!〉
目の前に来る槍先に手に持っていたハニワ兜で防ぎながら、質問を返す。
「アレは大会ですよ? 俺はエントリーして、勝っただけです!」
〈ガキィン! ガキィン! ガキィン!〉
槍攻撃をハニワの兜で弾き続ける。
弾くたびに魔法の光が兜から発せられる。
この兜、俺の代わりに防いでくれていないか?
まるで腕を動かされているような感覚になる。
攻撃の手を止め、俺に大きな声で呼びかける。
「それが、魔王様の結界を破ったアーティファクトか! なるほど強力!」
「そんなにかっこいいものではない! ハニワだ!」
「は、ハニワ……? ともかく、この技を防いでみよ!」
そういうと、腰を低くして、槍をその手に浅く持ち替える。
「ドミナント・スピアー!」
名前を聞いた瞬間、俺はハニワ兜を心臓の前に構えた。
(ドミナント系は急所狙い――たぶん一点突破型!)
〈キィィィン!〉
読みは当たり、ハニワ兜が攻撃を弾く。が、衝撃で兜が宙を舞う。
「ヤバい……!」
落ちた兜は、最も落ちてはいけない場所へ――。
〈スポッ!〉
そう、落ちたのはルルドナの頭の上だ。というかハマった。
「は?」
眠そうに俺らを見ていたルルドナの頭にミラクルフィットした。
俺は状況を理解できず、ただルルドナの反応を待った。
ゆっくりとしゃべりだす彼女。
「……えっと、ウェストフィ・留堂さん? あなた、全然本気じゃない。様子見だけしに来ているでしょ?」
怒りを抑えて睨みつけるルルドナ。
「やはり、見抜かれておったか……」
そう言うと、店長、もとい中年ケンタウロスは、そのまま槍をおさめて(魔法で消して)、大きく背伸びをし、くるりと背を向けて歩き出した。
「話がある……こちらへ来い」
くるりと背を向け、歩き出すケンタウロス店長―― 。
「!!」
その背中に、俺たちは息を呑んだ。
無数の湿布。しかも、貼り方がプロ。
首、肩、背中、腰。いや何枚貼ってんだよ。
……気持ちは、わかるけど。




