表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第11章 魔王モール3号店編
48/232

信頼区間なんて蹴り飛ばせ

 ――会場の奥に設置された大型モニター。


 俺の手元のハニワとルルドナの周りにいたハニワが共鳴したのか、ルルドナの周りに置かれていたハニワが――暴れ出した。


 会場全体が、目を見開いてモニター向こうのハニワたちの様子を見る。


 モニターの向こうのハニワは、腕をぐるぐると回して、まるで踊るように、壁にぶつかる。

 〈ピシッ! ……ピシッ!〉


 その周囲の空間に、徐々に亀裂が入る。


『魔王様の結界が! ヒビが入っております!? しかも 土人形の少女の目! 怖いです! これは怒らせてはいけないタイプの人が怒ったときの目だー! こちらを呪い殺さんというほどの怒りが垣間見えるのは気のせいでしょうか!?』


 それを見たシュワルツとデータサイエンス部長が、慌てた様子で近寄る。


「……いかん! あの土人形少女からは底しれないパワーを感じる! あれをやって終わらせるぞ! データサイエンス部長!」

「は……、はい!」


 二人は天に手をかざし、……上空に禍々しい黒色のオーラを纏った巨大な球状の岩を出現させる。


 空気が、変わった。

 ――それはまるで、闇の月。黄昏色の残る夜空に、月が召喚される。


『この魔力量! まずいです! 会場の皆さん、衝撃に備えてください!』


 闇のオーラに包まれた球状の巨岩を見ていたら、目の奥の痛みが走る。

 同時に、……思考がとぎれとぎれになり、足が動かなくなる。


 スコリィもガディもペッカもピノキさんや家具たちも、同様に……動けない。


 ――これは、絶望。

 絶望は、良く知っている。何せ転生者だ。


 ――いや、違う。きっと幻覚魔法だ。また幻を見せられているんだ。

 自分に言い聞かせる。


 〈ゴオオォォォ!〉

 だが、ものすごい圧力の風があたりを駆け巡り、リアルさを主張する。


 ……わかっている、終わりは突然、やってくる。人は、あっさりと死ぬ。自分も。


 シュワルツの声とデータサイエンス部長の声が重なる。

「「信頼区間ルナメテオ!」」


 上空の月が勢いよく落ちてくる。足が、動かない。


 〈ゴゴォーー! バリバリバリバリ!〉

 周囲が嵐の爆音に包まれる。

 空気が割れる音。


 こちら向かって落ちてくる、闇の月。


 死を覚悟したそのとき、――胸ポケットから何かが飛び出すのが見えた。


***

 上空から落ちてくる巨岩が風を切る音。いや、落ちてくるのはもはや闇の月だ。


 ――もう、助からない。


 そう悟ったとき。


 胸ポケットからハニワ人形が飛び出した。人形はまばゆい光に包まれ、囚われていた少女……ルルドナと入れ替わる。


 俺の前、城壁の縁にふわりと降り立つ土質の脚。


 ――ルルドナ。


 彼女が脚を振り上げる。

 その蹴りに幾重もの魔方陣が重なる。


 〈ゴゴゴゴォ!! ダーン!〉


 腹の底に響く爆音と土煙とともに、……会場が静まる。


 少女の片足を高く蹴り上げた姿。


 二つに割れ不自然なほどゆっくりと闘技場に落ちる、――黒い月。


「クタニ」


 足をおろし、くるりと振り返った少女が俺に声をかける。


 俺は手を伸ばし抱きつくような中途半端な格好をしていた。

 咄嗟に助けようとしたのか、それとも――ただ、触れたかったのか。


 固まってしまった俺に、彼女は続けて言う。


「ちょっとは、まともな顔になったじゃない」


 少女――ルルドナは俺に笑顔を向けていた。

 ちょっとだけ意地の悪そうな、屈託のない笑顔。


「元からこうだよ。粘土を練るのが好きなだけな、拙い顔だ」

 手を引っ込めた俺はいつもより強がって口の端を上げる。


 ルルドナの後ろでは、真っ二つに割れた黒い月が……妙にゆっくりと左右に倒れていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ