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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第11章 魔王モール3号店編
46/196

魔王モールでは引きが悪いと最初からラスボスレベルと戦うことになる

いよいよバトルです。

――新月祭バトル会場。


それぞれの目利きした品を登録。


まずは選手席から観戦することになった。


ルルドナは……会場の観客席の奥の特別展望台のモニターに映し出されている。

ついでに俺のハニワたちも奥に置かれている。もっと手前に置いてくれ。


「あのモニターのある場所のすぐ上の部屋、ルルドナさん眠ってるっす」

スコリィが目の前に指で輪を作っている。視力増強魔法だろうか。


……ともかく近くにいることで安心する。


『さあ、やってまいりました! 新月祭の目玉! 価格比例召喚バトルです!』

ナレーションの声が響く。


――会場の広さはサッカーコートほど。


1組ずつ会場に入って魔物に与えた合計ダメージをポイントとして競うらしい。もちろん魔物はこちらを倒そうとしてくる。


俺たちの他にもたくさんエントリーしているらしく、控えの席にたくさん五人組が座っている。

毎回何試合もあるようだ。観客の歓声がでかく、まるで競馬場のようだ。ていうか賭けることもできるらしい。


『お次は平和な時代に転生してしまった勇者5人組だ! 持ち込み品の合計は200万ゲル!

勇者たちの対するは、……メドゥーサ支店長だー! これは危険だ! やり手の女性支店長は何人も部下を石化させた危険な御局様だー!』


異世界転生してきたイケメン勇者たちが挑んでいる。俺たちは固唾を飲んで見守る。

結果、すぐに負けた。 一瞬で全員石化。


『いやあ、流石に支店長! 強い〜! あ、怪我された人々は、魔王保険に入ってくだされば治療受けつますよ〜! 死にたくなかったら入って下さいねー!』


抜け目ないな、この大会は。運営側はどちらにしろ黒字ってわけか……。


『さあ次の対戦は……』

――というテンションで対戦は続いた。


……300万のミノタウロス支店長、150万のクラーケン海洋責任者、220万のバジリスク毒味監督官。


俺たちは戦慄した。どのモンスターもあまりに強い。100万超えの支店長クラスは特に異次元の強さだ。


――棄権も考えながら見ているうちに、……ついに、俺達の順が訪れた。


『さあ! お次はなんと異世界人とストーンピクシー、デビルウンディーネの亜霊、ゴーレム亜人という異色の組み合わせだ!』


俺たちはやたらと大袈裟に紹介される。


『彼らの選んだ商品は、素晴らしいです!』

え、まじ?


「ペリドットの魔法石100万!」え、高い。

「木彫りのドラゴンの彫刻400万!」 たっか。

「精霊の長命酒200万!」お酒だよ?

「魔道古文書300万!」まって、本がそんなにするものなの?


全員、自慢げにドヤ顔をしている。


……みんなもっと安いもの選んでくれよ。

まあ、俺の奴はテキトーな弥生土器みたいなの選んだから大丈夫だろうけど。


『そして、……神々の盃! なんと1000万!』


――あ、自分の引きの悪さ忘れてた。


「合計……なんと、2000万!」


最悪だ。200万でメドゥーサなのに。


――俺が棄権しようとしたとき、召喚された対戦相手。

その姿に会場から驚きの歓声が上がる。


「召喚されたのは、……な、なんと! 我らが三号店副店長! デビルガーゴイルのシュワルツ様だー!! 中途採用ながら異例の副店長抜擢! その戦闘力は計り知れない! 召喚魔法の腕は魔王軍の中でも指折りだ!」


……ちょ、え? 


召喚された相手を見る。白いタキシードに、白いシルクハット、悪魔のような漆黒の肌。

忘れようもない、うちの看板を壊し、ルルドナを誘拐した、……ガディの父親。


……おそるおそるガディを振り返る。

〈ガッ〉

拳を打ち付けるガディ。

気合い十分で敵を睨みつけ、リングに上がるボクサーさながら会場に進み出る。


「ちょうどいいぜ! テメェら、遠慮はいらねえー! オヤジは一旦ボコボコにしてやる!」


完全にブチギレモードだった。会場に入り込みリーダーのように前に進み出る。

〈オォォーーー!〉

歓声が上がる。


棄権するという選択肢が無くなったことを察知した俺は、一番後ろからトボトボとついていった。


**

「が、ガディちゃん!? 人様の前ではお淑やかにしなさいって言ったでしょ!?」


悪魔の化身のように登場して空に浮いていた副店長シュワルツは、思いの外動揺していた。


ガディは構わずに続ける。

「反抗期なんでね! 三流企業をブラック経営してる親父なんて聖なる心を持った娘に殴られて当然だ!」

……反抗期の争いは家の中だけにしてくれ。


「やるしかないのか……。これもまた運命。うちは魔王保険にも入っているし……。許せ、娘よ!

……出でよ! アイスリバーゼネレーション!」


氷のゾンビたちが大量に出現する。不気味だが親近感を覚えるオーラをまとったゾンビたち。

その数、――数百はくだらない。


「相変わらずせこい召喚しか使えねーな! オフクロ直伝の水魔法でくたばれ! 激流の鋭矢(ウォーター・アロー)!」


〈ガガガガガガガッ!〉

水の矢を数百も作り出し、氷のゾンビたちを射貫く。

次々と倒れていくゾンビたち。


……しかし倒れたのは手前の数十体のみ。残りはまだ数百体。


「ちっ、数が多いな……!」

ガディが舌打ちする。


「はっはっは。その程度か! いくらでも使い捨てできるんだよ! この時代にはなあ!」

高笑いするシュワルツ。


『最初からハイレベル! ナレーションが追いつきません! 』


ゾンビたちが意外な素早さで襲いかかってくる。

目前に迫るゾンビたち。


「ペッカ! ピノキさんたちを召喚だ!」俺がペッカに呼びかける。

「おう!」すぐに応えて魔法陣を展開するペッカ。


〈ヴォオオン!〉

木の人形とイスやベッドが召喚される。

――闇の魔法を使う、ゴミ山の木製の家具たち、ピノキファミリー。


『おおっと! これはこれは珍しい木のおもちゃと家具たちを召喚だ!』


すぐに敵を認識したピノキファミリーは歓喜の声を上げ、魔法を唱える。

「こりゃやりがいがあるな! 闇のタコ触手ダーク・オクトパス!」


〈ドォン!〉


俺たちの目前まできたゾンビたちは、地面から生えた無数のゴミの形成体に絡め取られる。


『し、信じられません、あれは闇の形成召喚です! あの家具たち! 大量のゴミを使役しているようです! タコのような触手! 強い強い、ゾンビたちの必死の抵抗も虚しく、一気に五十体以上が消えたー!』

ナレーションの驚愕する声。


この分だとこちらの圧勝と思われた――そのとき。


「――ふん、ぼんやりしていていいのかな! ブラックマシンガン!」

俺とスコリィ、ライムチャートちゃんに闇の弾丸が迫る。


「まずい! 伏せろ!」

俺は思わず叫んで伏せる。


〈ズガガガガガッ! 〉

しかし……ガディの水の自動迎撃魔法で全て撃ち落とされる。


『副店長の得意魔法、マシンガン召喚!  弱そうなメンバーを狙うも、素晴らしい迎撃魔法!全て撃ち落とす!』

……弱そうって。


俺らの前に立ち、その周囲に水の渦を作るガディ。

「オヤジぃ! そんなチンケな量じゃかすり傷すらつけられないぜ!」


全く動揺せずに、シュワルツが応じる。

「そうかな? ブラック・ドミナントアロー!」


次の魔法。

俺だけに向かって、四方八方から多数の矢が複雑な放物線を描き迫る!


――数が、多い!

〈ジュババババッ!〉


ガディの迎撃魔法がほとんどを防ぐ。

だが、魔法をすり抜けた数本の矢が俺に迫る。


……あれ、これシンプルに死ぬパターン?


「危ないっす!」

なんとスコリィが、その矢をすべて素手でつかむ。


『さすがピクシー! 素晴らしい動体視力! 弱そうな異世界人が狙われるのを読んでいたか!?』


このチームの弱点がすぐにバレる。

……ナレーション余計なこと言うな。


「ありがとう! スコリィ!」

「給料アップよろしくっす!」

スコリィが矢をポイッと捨てながら親指を立てる。


「……ああ」

ちゃっかりしてるな。


すると、それまで黙っていた少女が声を出す。


「そ、そろそろ、自分もいいですか?」

ライムチャートちゃんが地面に手をつく。


〈ドォン!〉

地面が一度波打つ。

――次の瞬間。


氷のゾンビ軍団の足元が、全て泥になって、すっぽりと吸い込まれた。

サッカーコートの半分くらいを泥沼に変える。

……こちらの攻撃、闇の触手ごと。


『おおお! これは還元魔法! 神話の時代の超古代魔法です! こんなところにダークホース! 氷ゾンビ部隊は全滅です!……しかし、味方も埋まってしまった! ガディ、ピノキ、ペッカ、3名は上半身だけ出ています!』


味方三人を巻き込んだ魔法は、……アイスゾンビ部隊を全滅させてくれた。


……この子、底知れない感じだけど、マジでヤバいな。


「少し埋めただけたい。クタニさん、動かんといて! ちなみに戦いんときは博多女子みたいになるけん」

……戦闘のときのキャラを気にしている!?


彼女が俺とスコリィの肩に手を置く。

すると足元から何か召喚される。

みるみる目線が上がる。

足下に細い石の塔のようなものができて、俺とスコリィは三階ほどの高さから会場を見下ろすことができるようになった。


『おおっと、次は築城召喚! 防御結界付きです! これも古代魔法です! 一瞬で弱点補強! それにしてもすばらしい魔力量です!  創造魔法の域に達しています!』


「これで勝ち確ばい。疲れたけん休むね」

そう言って頭のレンガの帽子の縁に手をかけると――。

〈スポンッ!〉

彼女は、帽子の中に亀の手足のように吸い込まれていった。


……え、まだどうすればわかんないんですけど。


俺が動揺していると、シュワルツが声をあげる。


「……どんな珍しい魔法でも、最後には私にひれ伏す! 出よ! データサイエンス部長!」


〈シュウゥーン!〉

魔法陣の中から竜と人の亜人のような白スーツが出現する。


『データサイエンス部長だ! 若手の黒メガネの高身長イケメンワイバーンだー! 』


空中に浮かんだ白服スーツのイケメンは眼鏡を中指でクイッとして、少し間を置き呪文を唱える。

「……データサイエンス魔法、ヒストグラムワイヤー」


俺たちは、頭から生えた魔法の糸で結ばれてしまう。


『これは、データサイエンスの基礎魔法! 地味に動きにくい!』

ナレーションの解説。ネタばらしでは……。


スコリィが頭の魔法のワイヤーをつかんで叫ぶ。

「こ、これは切れないっす! でも無理して切るより、このまま遠距離魔法で押し切った方がいいはずっす!」


彼女が直感でものを言う。

……そんなにうまくいくわけが……。


『ああっと、一瞬で弱点を見抜かれたー! 遠距離攻撃で攻めればそんなに脅威ではありません!』

ナレーションがネタバレ解説をする。

……いいぞ! もっとやれ。


にしても、直感すげーな。


「今のうちっす! 黒縁メガネイケメンなんて時代遅れっす! アンデサイト・ストーム!」


私情を挟んだスコリィから、複数のドリル状の岩石が出現し、複雑な軌道を描きながらイケメンに向かっていく。


『これは珍しい! 岩石魔法と風魔法を合わせた技だ! ストーンピクシーならではか!これは軌道が複雑! 防ぎ切れるか!』


「予測し、防げ――先読みのベイズセオリーバリア

データサイエンス部長から静かに呪文が唱えられる。


――すると、空中モニターのようなA4サイズの板状バリアが出現する。


〈ガガガガガッ!〉


『全て防いだー! さすが新魔法! 無駄なく最小の動きで、強力な魔法を防ぎ切った!』


「はっはっは、どうだうちの部長は強いだろう!」

シュワルツが勝ち誇ったような声をあげる。


「そんなせこい省エネ魔法なんて誰も推さないっす!」

イケメンワイバーンが右目をピクリをさせ、こちらを睨みつける。


……意外と挑発に弱いのか!?


「考える時間で先手を取られるぞ! 間抜けー」

俺も挑発してみる。


ワイバーンがメガネを外して、鬼の形相でこちらを睨みつける。


「動く者を消し炭にせよ、――回帰分析フレア」


外したメガネを腕ごと振り回す。メガネが光り出す。

……絵的にどうなの、あれ。


〈ゴオォォーー!〉

滑稽な動作とは裏腹に、……彼の周囲に赤紫の光の炎が巻き上がる。


「テンチョー、言い過ぎっす! キレまくってるっす! あれ絶対やばい魔法っす!」

スコリィがこっちを批難する。

……うっせえ、ノリだよ。


『これは! まさに最新魔法! あの光がメガネから出ている間は、相手の動きを予測し近づく者全てに火柱を上げ、消し炭にするぞ! さあどう出る!?』

さあ、けったいな魔法が出てきました。


クタニたちの運命やいかに?


感想コメントお待ちしています!


2025.8.15 主人公の一人称を俺にして、それに合わせて各所書き直しました!

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