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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第11章 魔王モール3号店編
46/232

魔王モールでは引きが悪いと最初からラスボスレベルと戦うことになる

 ――新月祭バトル会場。

 それぞれの目利きした品を登録。


 俺たちはサッカーコートほどあるバトル会場まできていた。

 まずは他のチームの戦いを選手席から観戦することになった。


 ルルドナは……会場の観客席の奥の特別展望台のモニターに映し出されている。

 ついでに俺のハニワたちも奥に置かれている。もっと手前に置いてくれ。


「モニターのすぐ上の部屋、ルルドナさん眠ってるっす!」

 スコリィが目ざとく見つける。モニター上の小さなガラス張りの部屋。遠くて何があるかよく見えない。視力良すぎだろ。


 ……ともかく、無事そうで安心する。


『さあ、やってまいりました! 新月祭の目玉! 価格比例召喚バトルです!』

 ナレーションの声が響く。


 1チームずつ戦い、魔物に与えた合計ダメージをポイントとして競うらしい。もちろん魔物はこちらを倒そうとしてくる。


『さあ、最初のチームです! 持ち込み品の合計は200万ゲル! この価格に対するは、……メドゥーサ支店長だー! これは危険! やり手の女性支店長は何人も部下を石化させた危険な御局様だー!』


 俺たちは固唾を飲んで見守ることにした。


 ――結果、すぐに負けた。 一瞬で全員石化。


『いやあ、流石に支店長! 強い〜! あ、怪我された人々は、魔王保険に入ってくだされば治療受けつますよ〜! 死にたくなかったら入って下さいねー!』


 ……抜け目ないな、この大会は。


『さあ次の対戦は……!』


 ――というテンションで対戦は続いた。


 ……300万のミノタウロス支店長、150万のクラーケン海洋責任者、220万のバジリスク毒味監督官。


 戦慄した。あまりに、敵が強い。

 

……ついに、俺たちの順が訪れた。


『さあ! お次はなんと異世界人とストーンピクシー、フォレストドラゴン、デビルウンディーネの亜霊、ゴーレム亜人という異色の組み合わせだ!』


 俺たちはやたらと大袈裟に紹介される。


『彼らの選んだ商品は、素晴らしいです!』

 え、まじ?


「ペリドットの魔法石100万!」え、高い。

「木彫りのドラゴンの彫刻400万!」 たっか。

「精霊の長命酒200万!」お酒だよ?

「魔道古文書300万!」まって、本がそんなにするものなの?


 全員、自慢げにドヤ顔をしている。


 ……みんなもっと安いもの選んでくれよ。

 俺はテキトーな皿を選んだから大丈夫だろうけど。


『そして、……神々の盃! なんと1000万!』


 ――あ、自分の引きの悪さ忘れてた。


「合計……なんと、2000万!」


 最悪だ。


 ――俺が棄権しようとしたとき、召喚された対戦相手。

 その姿に会場から驚きの歓声が上がる。


「対して召喚されたのは、……な、なんと! 我らが三号店副店長! デビルガーゴイルのシュワルツ様だー!! 中途採用ながら戦闘力だけで異例の副店長抜擢! その戦闘力は計り知れない!」


 ……ちょ、え? 


 召喚された相手を見る。白いタキシードに、白いシルクハット、悪魔のような漆黒の肌。

 忘れようもない、うちの看板を壊し、ルルドナを誘拐した、……ガディの父親。


 ……おそるおそるガディを振り返る。


 〈ガッ〉

 拳を打ち付けるガディ。

 気合い十分。相手を睨みつけ、リングに上がるボクサーさながら会場に進み出る。


「ちょうどいいぜ! テメェら、遠慮はいらねえー! オヤジは一旦ボコボコにしてやる!」


 完全にブチギレモードだった。会場に入り込みリーダーのように前に進み出る。

 〈オォォーーー!〉

 ひときわ大きな歓声が上がる。


 棄権するという選択肢が無くなったことを察知した俺は、一番後ろからトボトボとついていった。


***

「が、ガディちゃん!? 人様の前ではお淑やかにしなさいって言ったでしょ!?」


 悪魔の化身のように登場して空に浮いていた副店長シュワルツは、思いの外動揺していた。


 ガディは構わずに続ける。

「反抗期なんでね! ブラック経営してる親父なんて聖なる心を持った娘に殴られて当然だ!」

 ……反抗期の争いは家の中だけにしてくれ。


「やるしかないのか……。これもまた運命、か。うちは魔王保険にも入っているし……。許せ、娘よ!

 ……出でよ! アイスリバーゼネレーション!」


 氷のゾンビたちが大量に出現する。不気味だが親近感を覚えるオーラをまとったゾンビたち。

 その数、――数百はくだらない。


「相変わらずせこい召喚しか使えねーな! オフクロ直伝の水魔法でくたばれ! 激流の鋭矢(ウォーター・アロー)!」


 〈ガガガガガガガッ!〉


 無数に生まれた水の矢が、氷のゾンビたちを射貫く。

 次々と倒れていくゾンビたち。


 ……だが、倒しても倒してもゾンビが湧いてくる。


「ちっ、数が多いな……!」

 ガディが舌打ちする。


「はっはっは。その程度か! そのゾンビはいくらでも使い捨てできるんだ! 」

 高笑いするシュワルツ。

 

 目前に迫るゾンビたち。


「ペッカ! ピノキさんたちを召喚だ!」俺がペッカに呼びかける。

「おう!」すぐに応えて魔法陣を展開するペッカ。


 〈ヴォオオン!〉

 木の人形とイスやベッドが召喚される。

 

『おおっと! これはこれは珍しい木のおもちゃと家具たちを召喚だ!』


 すぐに敵を認識したピノキファミリーは歓喜の声を上げ、魔法を唱える。

「こりゃやりがいがあるな! 闇のタコ触手ダーク・オクトパス!」


 〈ドォン!〉


 目前まできたゾンビたちは、地面から生えた無数の触手に絡め取られる。


『信じられません、形成召喚です! あの家具たち、大量のゴミを操っています!  ゾンビたちがあっという間に減っていく!』

 ナレーションの驚愕する声。


 この分だとこちらの圧勝と思われた――そのとき。


 空中から攻撃が飛んできた。

「――ふん、ぼんやりしていていいのかな! ブラックマシンガン!」

 俺とスコリィ、ライムチャートちゃんに闇の弾丸が迫る。


〈ズガガガガガッ!〉

 しかし……ガディの水の自動迎撃魔法で全て撃ち落とされる。


『副店長の得意魔法、マシンガン召喚! 弱そうな転生者を狙うも、素晴らしい迎撃魔法で全て撃ち落とされる!』

 ……弱そうって。


 俺らの前に立ち、その周囲に水の渦を作るガディ。

「オヤジぃ! そんなチンケな量じゃかすり傷すらつけられないぜ!」


 全く動揺せずに、シュワルツが応じる。

「そうかな? ブラック・ドミナントアロー!」


 次は大量の矢の魔法。四方八方から多数の矢が複雑な放物線を描き迫る。


 ――数が、多い!

 〈ジュババババッ!〉


 ガディの迎撃魔法がほとんどを防ぐ。が、魔法をすり抜けた数本の矢が俺に迫る。


 ……あれ、これシンプルに死ぬパターン?


「危ないっす!」

 なんとスコリィが、その矢をすべて素手でつかむ。


『素晴らしい動体視力! 弱そうな異世界人が狙われるのを読んでいたか!?』


 ……ナレーション余計なこと言うな。


「ありがとう! スコリィ!」

「給料アップよろしくっす!」

 スコリィが矢をポイッと捨てながら親指を立てる。


「……ああ」

 ちゃっかりしてるな。


 そのとき、黙ってみていた少女、ライムチャートちゃんが前に出る。


「そろそろ、よか?」

 ……九州弁?


 彼女が地面に手をついた瞬間。


 〈ドォン!〉

 地面が一度波打つ。


 氷のゾンビ軍団の足元が、全て泥になって、すっぽりと吸い込まれた。

 

サッカーコートの半分くらいを泥沼に変える。

 ……こちらの攻撃、闇の触手ごと。


『おおお! これは還元魔法! 神話の時代の魔法です! こんなところにダークホース! 氷ゾンビ部隊は全滅です!……しかし、味方も埋まってしまった! ガディ、ピノキ、ペッカ、3名は上半身だけ出ています!』


 味方三人を巻き込んだ魔法は、……アイスゾンビ部隊を全滅させてくれた。


「少し埋めただけたい。クタニさん、動かんでね! ちなみに戦いんときは博多女子みたいになるけん」

 ……戦闘のときのキャラを気にしている!?


 さらに彼女は魔法を続ける。

 

 足下に細い石の塔のようなものができて、俺とスコリィは三階ほどの高さから会場を見下ろすことができるようになった。


『次は築城召喚! 防御結界付きです! これも古代魔法です! すばらしい魔力量です! 創造魔法の域に達しています!』


「これで勝ち確ばい。疲れたけん休むね」

 

 そう言って頭のレンガの帽子の縁に手をかけると――。

 〈スポンッ!〉

 彼女は、帽子の中に吸い込まれていった。


(……え、まだどうすればわかんないんですけど)


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