表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第11章 魔王モール3号店編
44/196

ゴーレム亜人の少女は人見知り

助けに来てくれたのは?

「あのぉ、もう大丈夫ですよ、皆さん」

巨大なレンガ帽をかぶった少女が立っていた。


目の下にはクマ、ぼさぼさの黄緑の長い髪。服はアルプスの少女みたいなワンピースだけど、くすんでヨレヨレだ。細い手足は、いかにも引きこもりって感じだ。


しかし、彼女は――魔法陣の光の宿る片手で軽々と天井を支えている。

俺たちを押しつぶそうとしていた天井の縁は、溶けたように粘土状になっていた。


拘束されたまま、俺は尻を突き上げた変な体勢で、ぽかんと美少女を見つめていた。


「あ、……ありがとう。……それで、君は?」俺が訪ねる。

「わ、わたしは、イゴラ・ゴレムの妹、ライムチャート・ゴレムです」天井を支えている少女が言う。


「は?」体は明らかに人間だ。たしかに頭にはレンガの帽子をかぶっているけど……。


「……えっと、す、少し複雑な家庭環境と……、か、体環境でして。兄の魔力が不安定になる新月の日前後などは、わ、私が出てきちゃうんです」


後から分かったことだが、彼女は確かに妹。ゴーレムに"寄生"しているような存在で、イゴラくんと、体――というか、正確には頭を共有しているらしい。


「なるほど。だから門のときはイゴラくんで、寝たら君だったから、捕らえられずに済んだんだね」


うなづく彼女。天井は持ち上げたまま。


「……それで、いつまでそれ持っているの? 重くない?」


「え? こ、これは、ですね……えへへ」

やや得意げに笑った彼女の手のひらから、やわらかな光が放たれ、天井がぼんやりと発光しはじめた。岩はゆっくりと溶けていき、やがて粘土のような塊となって彼女の手の中へ。


「こ、ここへ来たのも、お、同じ魔法を使ったんですよ……!」はにかみながら胸を張る少女。


足元には、いつの間にかぽっかりと穴が開いていた。どうやら、さっきの魔法で道を掘って、そこからここまで来たらしい。


「おお! これはレアスキルの還元魔法っす! めちゃくちゃ魔力が必要なはずっす!」

尻を突き上げたままの姿勢でスコリィが声を上げる。

……お前はもっと姿勢を気にしろ。


「これはこれは」

ドラゴンのペッカが感心する。


「ワタクシより魔力が高いかも」

デビルウンディーネのガディも素直に驚いた表情だ。


ドラゴンとウンディーネに感心されるほどの魔力……。

なんかすごいのが出てきたぞ。


「えっと、……イゴラくんは?」


「あ、兄なら、この頭のレンガの中の空間で寝てます。魔力が安定すれば……、戻ると思います」といって頭を指差す。


イゴラくん、そんな不思議な存在だったんだ。メンバーの中では唯一、この異世界で典型的なファンタジーキャラだと思って、親近感を抱いていたのに……。


「じゃあ、時間が経てば特に何もしなくても自然にイゴラくんに戻るの?」


「わ、わたし、ひ、人前に出るの苦手で……いい、いつも兄に任せて引っ込んでるんです。兄の魔力が不安定なときだけ、わ、わたしが出てきちゃって……」

兄の中に引きこもる少女……! 新鮮でいいな!


「新たな推し要素が見つかったっす!」スコリィが目を輝かせる。


俺は無視して続ける。

「へえ、不思議な関係だな……! イゴラくんは君のこと知っているのか?」


「し、知らないと思います。ま、魔法みたいなので憑依している状態なので……」


「ていうかどうやってここがわかったの?」


「この不気味なペンダントで全部きいてました」

ライムチャートちゃんがクビからぶら下げていたものを取り出す。それは、俺が作り、みんなに渡していた、特殊アイテム。


「それは……通信ハニワ!」


「これはすす素晴らしいですね。どど、どんなに研究しても、こんなものを作れるとは思えません!  デザインは良くないですけど」――さすがハニワ嫌いのイゴラくんの妹だ。ハニワのことになると容赦ない。……俺の自信作なんだけど。


「……あのみなさん、ひとまずここから出たほうがよくないですか?」

キリッとした顔で提案するガディ。さすがお嬢様である、


袋と縄で拘束され、まるで芋虫みたいな姿なのに、表情ひとつ崩れない。


そうだ、まずはここから脱出せねば……! 俺はできる限りジェントルな声で彼女に頼みかける。


――尻を突き上げたまま。


「ときにライムチャートさん。俺たちの拘束を解いてもらうと助かるのだが」


「あ、は、はい! き、気づかなくてすみません!」

おどおどした様子で、彼女は、俺たちの縄を、魔法ですべて溶かして解いてくれた。


誤字じゃない。彼女は、本当に“生命以外の固形物ならほぼすべて、分解したり溶したりできる”らしい。


……いや、チートかよ。

ひとまずピンチは切り抜けました。

次回、魔王ショッピングモールの中を散策します。


2025.4.8 加筆修正しました。


2025.8.15 主人公の一人称を俺にして、それに合わせて各所書き直しました!


感想・コメントお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ