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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第10章 三日月の宿場町編
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夜中に出てくるモンスターは気持ち悪い奴が多い

ペッカが暗闇を怖がって来ているようですが……。

「……俺様は深い森の中で暮らすフォレストドラゴンなのに、暗闇が……怖い」

ペッカは小さく震えながら呟いた。


「……まあ、わからなくもないよ。森の中は月明かりも入るし、完全な暗闇ってわけじゃないだろ?」


「そうだ。俺様の目は夜でもよく見える。だが、光が完全に消えた空間にいると……子供の頃の記憶が蘇る。今日のような暗い夜は魔法灯がないと寝ることもできない」


ペッカの顔には珍しく怯えが浮かんでいた。普段は威勢がいいのに、こんなふうに弱音を吐くのは初めてだ。

「子供の頃、俺様は……」

そのとき、 ギチギチギチギチ…… という不気味な音が廊下から響いた。


ペッカの顔色がさらに悪くなる。

「……何の音だ?」


俺もすぐに警戒した。ドアの外に出てみると、常夜灯の消えかけた廊下の先に…… うねうねと動く異形の影 があった。


「あれはクレセントワーム……! 月の出ていない暗い夜に出現するやつだ」

巨大なミミズナメクジモンスター 。

長さは5メートルはあろうかという巨大さだ。体をうずまきのように丸めて近づいてくる。


「クソッ、ペッカ! 出番だ!」

「……無理だ」


ペッカは青ざめた顔で俯いた。

「無理って……ペッカ、誇り高きフォレストドラゴンだろ!?」

「無理だ! 暗闇が……動けない……!」


ペッカの体はガチガチに固まり、足が震えていた。完全に恐怖で身動きが取れない状態だった。

「くそっ……!」


その間にもクレセントワームが ギチギチギチ…… と這い寄ってくる。

「俺がやるしかないか……!」


と、身構えたそのとき。

「こっちっす!」

「任せてください!」


それぞれの部屋からカーキ色のジャージのスコリィと、黄色のパジャマのイゴラが飛び出した。

スコリィは素早く魔法を撃ち込むが、ヌメヌメしたクレセントワームの体にはあまり効果がない。イゴラが体当たりするも、弾力がありすぎてダメージにならない。


「ちっ、硬いしヌルヌルしてて攻撃が……!」

「やばい、魔力が吸われるっす! こいつは近くから魔力を吸い取るっす!」

ドレイン系の能力……! 


宿の魔法の灯りが消えかけていたのも、こいつの仕業か。

「一旦距離を取れ!」


ゆっくりと這うように近づいてくる巨大なミミズを睨みつける。


二人が来てくれたけど状況は好転しない。

ガディはきっと熟睡している。


俺はいつになく頭をフル回転させた。


こいつ、ナメクジとミミズの合成みたいなやつだから…… 。


「塩だ!」

「は?」

「ナメクジは塩で縮むだろ! 塩をかければ、倒せるかもしれない!」

すぐさま、荷物の中を探る。確か保存用の塩が——あった!


俺は袋から塩を掴んで、クレセントワームに向かって全力でぶちまけた!

「くらえっ!」

〈ジャリジャリジャリッ!〉


塩がクレセントワームの体に降りかかる。

〈ジュウウゥゥ!!〉


異様な音とともに白煙が立ち上る。

〈ギィィィィィィィィッ!〉

クレセントワームは苦しそうにのたうち回り、体がしぼんでいく。


「効いてる!」

皆が袋に手を入れて、袋の中の塩を撒き散らした。


「これで……!」「くらえ!」

クレセントワームは最後の断末魔を上げると、ついに動かなくなった。

俺たちは息を整えながら、それを見下ろした。


「……やった、のか?」

ペッカはまだ震えたまま、ベッドの上で息を詰めていた。

「ペッカ。終わったよ」


ペッカは情けなさそうに俯く。

「……すまない。俺様……本当に、何もできなかった」

「まあ、誰にでも苦手なものはあるさ。でも、克服する方法はいくらでもある」


「……克服、できるのか?」震えるペッカの声。

「そりゃあ、もちろん」


ほとんど空になった塩の袋を振りながら、軽く笑う。

「例えば、塩を常備するとか」


俺の軽い口調にペッカは驚いた顔をして、それから苦笑いを浮かべた。

「……お前、センスないな」

「お互い様だろ」

ペッカはまだ怯える様子だったが、どこか安心したようにも見えた。

ペッカは随分と心をひらいてくれたようです。

夜の話なので夜に更新してみました。


感想・コメントおまちしています!


2025.8.15 主人公の一人称を俺にして、それに合わせて各所書き直しました!

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