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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第9章 馬車移動と硬いスライム編
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ロングテール戦略を尻尾での攻撃と勘違いしている異世界人は多い

「何者だ!」

 アマゾネスワンのシラトリが後頭部を抑えながら、頭を動かし警戒する。


「おい、しっかり、しろ、この、ポンコツ、たち!」

 四角い物体が俺、スコリィ、イゴラ、ペッカ、ガディ、俺の頭を土台にポンポンと跳ね回る。


 あっけにとられるバザーの店員たち。


「あれ? 俺たちは、いったい何を……?」

 買い物をしていた俺ら一同は頭をふりながら、ぽんぽんと跳ね回る四角いスライムを見つめる。


 スライムがあきれたように言う。

「お前ら、買い物誘惑魔法にかかってたんだよ!」


 はっとして、手に取っていた『世界の粘土図鑑』を店の棚に返す。

 その背表紙を見て少しだけ離れるのをためらう。


(いやでもこれは買ってもいいやつでは? え、この感覚も魔法?)


「そうなのか。そうだったな……。そうきっとそのせいで買っているんだな」

 安堵する俺たちをよそに、よろめきながら呟くシラトリ。


「この物体、まさか解呪魔法を……!?」


 四角いスライムは威厳たっぷりに俺たちに説教する。

「お前ら、こんな初歩的な魔法で何やってるんだ! いいから露店から離れろ! またかかるぞ!」


 魔法を解除してくれたのか、意識がよりはっきりする。

 はっきりした視線の先にあったのは、ぶちぎれた悪魔の顔だった。


「私の魔法が、初歩的ぃ~?」

 

〈ブチブチブチ!〉


 血管が切れる音がする。

 寝起きのような気分でバザーの露店からふらふらと離れる。


「初歩的な魔法だろ? オイラの村のじっちゃんたちはもっとすごい魔法が使えたぞ!」

「そもそもあなたは何なのです? こんなキューブ状のモンスターなんて見たことないですよ!」


「どこにでもいる、スライムだよ!」

「そんなに硬そうなスライム、初めて見ましたねぇ」


「ふん、物を売るんならもっと見識を広めたがいいぜ!」

「それはそれは失礼、硬いスライムさん。しかしあなた、そんなに硬いなんて、スライムとして出来損ないじゃないんですかぁ?」


「だったらどうした! 魔法の初心者!」


「……ならば! うちの商品『体が柔らかくなる体操~あなたも180度開脚~』本と特殊な柔軟薬はいかがですかぁ! 今なら30%オフですよぉ!」

 にやりと笑うシラトリ。……スライムに開脚の本売るなよ。


「オイラには押し売りは効かねえ! 田舎育ちなめるな!」

 田舎育ちの俺たちは恥じ入ってうつむく。どうやら皆、買い物誘惑魔法は完全に解けたみたいだ。


「おっと、下手に動かないでください。私も商品を運んでいる途中。ここは紳士らしく、召喚魔法で戦い、勝ったほうの言い分をきくことにしましょう。私の召喚獣が勝てば、あと10品は買ってもらいますよ!」


 勝負を持ち掛けられた。この異世界での勝負ってこんな感じなのだろうか。

 しかし、召喚。ちらりとペッカを見る。ペッカが口の端をあげる。


「では、俺たちが勝ったら、ハニワ人形をすべて買い取ってもらう!」


「ハニワ、人形? ……まあ、いいでしょう! 勝つのは私です! どうせ私は初歩的な魔法しか使えませんけどねえ! いでよ! ロングテール・グリフォン!」


 そういうとめちゃくちゃ気合を入れた感じで、異様なほどしっぽの長いグリフォンを召喚した。

 ――でかい。

 高さが4メートルはある。尻尾の長さはその倍はある。


 その名前、絶対にロングテール戦略を意識しているが、たぶん意味を間違って覚えている。


「バカめ!」

 相手の召喚にひるむこと無く前に出たペッカ。


 ペッカから召喚されるのは、――木製の人形と、家具。


「おう、ペッカ坊。元気にしてたか?」

 召喚したのは木の人形と家具、だった。ピノキさんが散歩ついでに来たという感じだ。


「人形? 家具?」

 シラトリは動揺している。


「あいつ、やっちまえばいいのかい?」

 ピノキさんがきく。


「ああ!」

 ペッカが力強く応える。


 戸惑っていたグリフォンは気を取り直し、大口を開け、咆哮。次の瞬間、尻尾で鞭のように攻撃してくる。


 〈ガガガガガッ!〉


 ――だが、次の瞬間。巨大なゴミの壁が出現し、グリフォンの攻撃を防ぐ。


「ゴミの壁!?」

 シラトリから驚嘆の声があがる。その声のすぐあと、何本もの触手となったゴミが、グリフォンを絡めとる。


「やっちまえ! お前ら!」

 絡めとったグリフォンに家具たちが覆いかぶさり、やたらめたったらと殴り掛かる。


 「キューン……」

 すぐにグリフォンは動かなくなり、薄い光とともに消えていった。あまりにあっさり終わってしまったが、それを想定していた俺は、ここぞとばかりに前に出る。


「勝負あり、ですね」

 得意げに胸を張った俺が言うが、シラトリはまだ現実を受け入れられない様子で、膝をついて召喚獣が消えた地面を見つめていた。

(※ロングテール戦略……マニアックな商品でも長い期間広い範囲に売ればいいという通販企業がよくやる戦略)

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