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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第9章 馬車移動と硬いスライム編
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異世界で馬車移動するとアクシデントが起こる確率はほぼ100パーセント

【あらすじ】ルルドナを取り戻すため、魔王モール3号店に向かう転生者のクタニ、バイトのスコリィ、イゴラくん。広場販売でいろいろあったが、何とか馬車代をかせいで、いよいよ魔王モールへ移動することに。→【馬車移動編スタート】

 ――出発の朝。

 注文を受けていた看板を無事に届け、皆で馬車乗り場に立っていた。

 ここから魔王ショッピングモールまで二日。


「一番いい馬車を」


 俺は札を見せびらかして業者に注文する。


 こういうときにケチりすぎると、アクシデント引き寄せ体質の俺は絶対に何かを引き寄せてしまう。

 知らない土地の移動でケチったらろくなことがない。

 バックパック動画を見た経験から得た教訓である。


 ――しかし今回は、その配慮こそが、引き寄せの原因であった。


 馬車は広々とした4人乗りで、向かい合うように座った。馬車なんて初めて乗るけど、ちょっとわくわくする。


 ちなみにペッカは小型状態なので、幼児料金で済んだ。

 一番奥に幼児用の不思議な素材のサイコロのようなイスが用意されていたのでそれに座らせることにした。プラスチックより少し柔らかい、変わった素材だ。妙に柔らかくて、触るとわずかに温かい。


 馬車が出発する。意外とスムーズで、揺れも少ない。クッションなどに結構な工夫がしてあるようだ。

「ミッドライフシティよ、さらば」

 俺が後ろの窓からの遠ざかる街を見ながら目を細めて言う。


 すかさずスコリィが突っ込みを入れる。

「テンチョー、カッコつけすぎっす」


 ――次は、ファストライフシティ。


 皆がセカセカと急いでいる大都会らしい。


 ファストライフシティから馬車で2時間くらいで、魔王ショッピングモール3号店に行けるらしい。


 イゴラくんが妙にそわそわして言う。

「ボクって、実はファストライフシティ行ったことないんですよね。いろんなパンがあるんだろうなぁ」


「アタシが案内するっす! 初めての推し活をしていたころ、何度か行ったことがあるっす!」

 初めてのおつかいみたいに言うな。イゴラくんは何番目の推しなんだろう……。


 哀愁のある顔を崩していなかった俺にガディが尋ねる。

「店長さん、もうこちらには戻らないんですか?」


「いや、戻るよ。家買ってしまったし、借金もあるし……」


 悪そうな顔をしたスコリィが悪だくみを提案してくる。

「逃げちゃえばいいんじゃないんすか?」


「いやあ、100億という高額だから、できないなあ。否が応でも取り返しに来ると思うよ。ともかく、半年に一度は納めなきゃだから、ルルドナは取り返して、俺に経営指南してもらわないと」


 そういえば胸ポケットの小ルルドナはしゃべらなくなった。


 ガディが100億に反応する。

「ワタクシ、いろんな人の借金取りの話を聞いたことがありますけど、100億ってすごい金額じゃないんですか?」


 俺はガディの手前、少しかっこつけて返事をする。

「そんなに多額の借金は無いのと同じだ、ってどこかで読んだ気がする」


 馬車の中で開き直ってふんぞり返る。

 ま、……まともに考えたら胃が痛くなるからな。


「100億もの借金を気にしないなんて、意外と大物ですね」とイゴラが感心する。


 するとペッカがからかってくる。

「化け物の借金取りが来たりしてな」

 俺が異世界の化け物の借金取りを想像して青ざめていると、意外なところから意外な言葉が出てきた。


「いいなあ、借金取り。借金取りの仕事、ガーゴイルたちの間で人気職なんですけど、すべて面接で落ちたんですよね……」

 ガディが手を組んで聖女のように悲しげに目線を上に向ける。


 借金取りの仕事、人気なんだ……。異世界は広いなあ……。

「顔がきれいすぎるんだよ。ガディみたいなきれいな借金取りがきたら嬉しくなるから、ずっと会うためにずっと返さない者もいるんじゃない、かな」

 むしろ我ながらいいアイデアだと思ってしまう。


「そんな……。強力な魔法が使えるのに、顔で落ちるなんて」

 逆の意味で顔で落ちた経験のある人が聞いたら複雑な気分になるだろう発言。


 俺は慌ててフォローする。

「もっといい職があるよ。販売も仕事も楽しかった、だろ?」

「まあそうですけど……。とにかく将来のことは父を懲らしめてから、考えます」


 懲らしめるって……。やる気満々のガディ。祈るように組んだ手に力が込められて血管が浮いている。


「戦いに行くわけじゃないから……」

「俺は戦ってもいいぞ」とペッカがドンドンとイスに座ったまま、子供のように尻でジャンプする。

 そのとき――派手にジャンプをしすぎてイスがごろりと転がる。

 

 そのまま俺らの足元を転がって反対側の壁に派手にぶつかる。

〈ゴロゴロ、ドカッ!〉


 当のペッカはふわりと浮かんで難を逃れる。すると予想外のところから声が出てきた。

「いってー! 何するんだ、このチビドラゴン!」


 ――なんと、イスから声がしたのだ。

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