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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第8章 デビルウンディーネのガディ登場、広場販売編
33/232

弱みは欠点ではない。強みに集中しないことが欠点である

「カンパーイ!」

 皆が声を上げ、ジョッキを打ち鳴らす。


 俺たちは盛大に打ち上げをした。

 

 スコリィは相変わらずイゴラの隣に座っている。俺もちゃっかりガディの隣に座ったけど。


 程よく食べ、酒が回ってきたころ、俺は立ち上がった。

 店長だから、こういうことから逃げるわけにもいかない。


「皆、今回はイゴラくんがMVPだ。褒めたたえるように!」


 〈パチパチパチ〉


「さすがっす! 感涙を禁じ得ないっす!」とスコリィ。

「いいぞ!」ペッカも上機嫌。

「レンガパン、おいしいです!」ガディ、結構つまみ食いしてたな。


 一通り、皆がイゴラくんを褒めたあと、声を落として言う。

「みんな、きいてくれ。……正直さ、今回、調子に乗ってたよ、俺」


 神妙にこちらを見る。少し緊張するが続ける。


 「イゴラくんが倒れたとき、めちゃくちゃ怖かった。それからずっと怖がってた。また誰か倒れるんじゃないかって。だからさ、全員の弱みを教えておいてくれないかな」


 まずはスコリィを促す。


「あたしは完璧っすね! 背が高すぎることくらいっす……」


「ちょっとまって。でかい女性は需要があるぞ。……その話はあとで時間を作ってじっくりするから、次」

 次に、イゴラを促す。

「ボクは体力がなくて……。今回も体力不足でこんなことになってしまって」


 そしてガディを促す。

「ワタクシも魔法以外は全然だめで。特にこの見た目のせいで、魔法を活かせる戦闘系の仕事に就けなくて」


「なるほど。美しさは罪ってやつ、だね……」

 誰からも返事が無い。


 最後にペッカ。

「俺様は、……特にないぞ。お前らより長生きしているしな」

「そっか。頼もしいな」


 首をゆっくりと動かしながらみんなをぐるりと見る。背が高い、体力がない、美しすぎる、という欠点。戦いでは弱みかもしれないが、商売にはあまり関係がない。むしろ、強みにすらなる。


 この顔ぶれなら、魔王ショッピングモールにも一矢報いることができるかもしれない。

「ちなみにこの世界って魔王が一番強いのか?」


 よくぞ聞いてくれたという感じでペッカがしゃべりだす。


「異世界人はよく勘違いするが、魔王はもう力で世界を支配する方向を変えて、経済力で世界を支配する方向にいっている。ショッピングモールでな」


 ……どういう魔王だよ。


「1号店から4号店までがでかくて、『ショッピングモール四天王』と言われている。三号店がこの前来た、その、ガディ嬢の……父だ」


 最後だけ、ペッカが言いよどむ。

 その言葉にガディが頭を下げる。膝の上に置いたこぶしに血管が浮いている。こわい。キレないで。


 スコリィが唐揚げを口に放り込みながらしゃべる。

「ショッピングモール、安くて使いやすいからつい買ってしまうっす。コラボもよくしてくれるし」


 完全に掌の上の消費者だ。でもそれが一番幸せなのかもしれない。


「なるほど。なんとなくわかった。で、魔王の支配が続いて何年?」


 ペッカが思い出すように視線を巡らせて答える。

「詳しくはわからん。ショッピングモールが盛り上がってきたのはここ20年ほどか」

 その言葉に一同が頷く。

 

「そっか。こちらの世界の様子がちょっとわかったよ。ありがとう。さ、暗い話はやめにして、今日はたくさん食べて飲もう」


 そのあとは皆で飲んで食べて、気分良く酔っ払った。


 爪の突き立てたような細い月が、窓の外に少しだけ見えていた。

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