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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第8章 デビルウンディーネのガディ登場、広場販売編
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弱みは欠点ではない。強みに集中しないことが欠点である

初めての露店販売編終了です。飲み会をするみたいです。

「カンパーイ!」

皆が声を上げ、居酒屋で飲みかわす。

俺たちは盛大に打ち上げをした。スコリィは相変わらずイゴラの隣に座っている。俺もちゃっかりガディの隣に座ったけど。


程よく食べ、酒が回ってきたころ、俺は立ち上がった。本当はこんなことしたくないけど、俺が店長だからしなければならない。

「皆、今回はイゴラくんがMVPだ。褒めたたえるように!」


ぱちぱちぱち。

「さすがっす! 感涙を禁じ得ないっす!」

「いいぞ!」

「レンガパン、おいしいです!」


「だけど倒れるまで何も言わないのは今回限りだよ。みんな、何か弱みなどあるなら先に言っていてほしい。俺は粘土をこねるのと多少速く走れるくらいしかできない。あとは全部だめだ」

周囲の苦笑いをスルーしてスコリィを促す。


「あたしは完璧っすね。ピクシーにしては背が高いっすけど。まあ女としてはモテないっすけどそれ以外は完璧っす」


「ちょっとまって。でかい女性は需要があるぞ。……その話はあとで時間を作ってじっくりするから、次」

次に、イゴラを促す。

「ボクは背が低いし、力も体力もないから、欠点だらけです。今回も体力不足でこんなことになってしまって」

「身長はこの先に伸びるかもしれないし、体力はこれからついていくよ。一緒に頑張ろう」


そしてガディを促す。

「ワタクシも魔法以外は全然だめで。あと、デビルガーゴイルの娘として、本当はもっと迫力が欲しいのですが。この見た目のせいで、魔法を活かせる戦闘系の仕事に就けなくて」


「なるほど。美しさは罪ってやつ、だね」


最後にペッカ。

「俺様は、……特にないぞ。お前らより長生きしているしな」

「そっか。頼もしいな」


首をゆっくりと動かしながらみんなをぐるりと見る。背が高い、背が低く体力がない、美しすぎる、という欠点。戦いでは弱みかもしれないが、商売にはあまり関係がない。むしろ、強みにすらなる。


このパーティなら、魔王ショッピングモールにも一矢報いることができるかもしれない。

「ちなみにこの世界って魔王が一番強いの?」


よくぞ聞いてくれたという感じでペッカがしゃべりだす。


「異世界人はよく勘違いするが、魔王はもう力で世界を支配する方向を変えて、経済力で世界を支配する方向にいっている。その代表がショッピングモールだ。あいつらは経済で支配するのが一番楽だと気が付いたんだ。ドラゴン族も伝統工芸などで対抗しようとしたがまったくかなわなかった。今では世界中にショッピングモールを作っている。一号店から4号店までがでかくて、『ショッピングモール四天王』と言われている。三号店がこの前来た、その、ガディの父だ」


ガディが頭を下げる。膝の上に置いたこぶしに血管が浮いている。こわい。キレないで。


スコリィが唐揚げを口に放り込みながらしゃべる。

「悪い奴だとはわかっているっすけど。安くて使いやすいからつい買ってしまうっす。コラボもよくしてくれるし」


完全に掌の上の消費者だ。でもそれが一番幸せなのかもしれない。


「なるほど。なんとなくわかった。で、魔王の支配が続いて何年なの?」


「大戦争が終わったのは80年前だ。はっきりしてきたのは、ここ30年といったところか。魔王は大戦争からもう6代目だが経済拡大に余念がない。こちらの田舎のほうには興味ないみたいだが」


「そっか。こちらの世界の様子がちょっとわかったよ。ありがとう。さ、俺の顔みたいに暗い話はやめにして、今日はたくさん食べて飲もう」


そのあとは皆で飲んで食べて、気分良く酔っ払った。


爪の突き立てたような細い月が、窓の外に少しだけ見えていた。

みんなちょっと自分の弱みを話したようですが、一人(一匹)話してませんね。

ともかく、初めての露店販売、終了です。


感想・コメントお待ちしています!


2025.8.14 主人公の一人称を俺にして、それに合わせて各所書き直しました!

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