弱みは欠点ではない。強みに集中しないことが欠点である
「カンパーイ!」
皆が声を上げ、ジョッキを打ち鳴らす。
俺たちは盛大に打ち上げをした。
スコリィは相変わらずイゴラの隣に座っている。俺もちゃっかりガディの隣に座ったけど。
程よく食べ、酒が回ってきたころ、俺は立ち上がった。
店長だから、こういうことから逃げるわけにもいかない。
「皆、今回はイゴラくんがMVPだ。褒めたたえるように!」
〈パチパチパチ〉
「さすがっす! 感涙を禁じ得ないっす!」とスコリィ。
「いいぞ!」ペッカも上機嫌。
「レンガパン、おいしいです!」ガディ、結構つまみ食いしてたな。
一通り、皆がイゴラくんを褒めたあと、声を落として言う。
「みんな、きいてくれ。……正直さ、今回、調子に乗ってたよ、俺」
神妙にこちらを見る。少し緊張するが続ける。
「イゴラくんが倒れたとき、めちゃくちゃ怖かった。それからずっと怖がってた。また誰か倒れるんじゃないかって。だからさ、全員の弱みを教えておいてくれないかな」
まずはスコリィを促す。
「あたしは完璧っすね! 背が高すぎることくらいっす……」
「ちょっとまって。でかい女性は需要があるぞ。……その話はあとで時間を作ってじっくりするから、次」
次に、イゴラを促す。
「ボクは体力がなくて……。今回も体力不足でこんなことになってしまって」
そしてガディを促す。
「ワタクシも魔法以外は全然だめで。特にこの見た目のせいで、魔法を活かせる戦闘系の仕事に就けなくて」
「なるほど。美しさは罪ってやつ、だね……」
誰からも返事が無い。
最後にペッカ。
「俺様は、……特にないぞ。お前らより長生きしているしな」
「そっか。頼もしいな」
首をゆっくりと動かしながらみんなをぐるりと見る。背が高い、体力がない、美しすぎる、という欠点。戦いでは弱みかもしれないが、商売にはあまり関係がない。むしろ、強みにすらなる。
この顔ぶれなら、魔王ショッピングモールにも一矢報いることができるかもしれない。
「ちなみにこの世界って魔王が一番強いのか?」
よくぞ聞いてくれたという感じでペッカがしゃべりだす。
「異世界人はよく勘違いするが、魔王はもう力で世界を支配する方向を変えて、経済力で世界を支配する方向にいっている。ショッピングモールでな」
……どういう魔王だよ。
「1号店から4号店までがでかくて、『ショッピングモール四天王』と言われている。三号店がこの前来た、その、ガディ嬢の……父だ」
最後だけ、ペッカが言いよどむ。
その言葉にガディが頭を下げる。膝の上に置いたこぶしに血管が浮いている。こわい。キレないで。
スコリィが唐揚げを口に放り込みながらしゃべる。
「ショッピングモール、安くて使いやすいからつい買ってしまうっす。コラボもよくしてくれるし」
完全に掌の上の消費者だ。でもそれが一番幸せなのかもしれない。
「なるほど。なんとなくわかった。で、魔王の支配が続いて何年?」
ペッカが思い出すように視線を巡らせて答える。
「詳しくはわからん。ショッピングモールが盛り上がってきたのはここ20年ほどか」
その言葉に一同が頷く。
「そっか。こちらの世界の様子がちょっとわかったよ。ありがとう。さ、暗い話はやめにして、今日はたくさん食べて飲もう」
そのあとは皆で飲んで食べて、気分良く酔っ払った。
爪の突き立てたような細い月が、窓の外に少しだけ見えていた。




