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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第6章 水の精霊と広場販売編

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喫茶店の同じ席に何度も座ると常連になった気分になる

 看板の注文を受けて3時間。

 陶器のミニ看板は、無事にできあがった。


 パンや陶器の販売を皆にまかせ、俺は胸ポケットの小ルルドナとともに配達へ出かけた。


「きちんと、ほかにも注文したい人がいないか営業するのよ」

 石畳の小道を足取り軽く歩いていると小ルルドナに釘を刺される。


「まあ、努力してみる」


 ……にしても、足取りが軽い。アイデア1つでこんなに売り上げが良くなるなんて。


「いやぁ、いい日だなぁ!」


「……私まだ助けてもらってないんだけど」

 小ルルドナが俺の胸ポケットから抗議の声を発する。


「いいじゃないか。この分だと楽勝だ。どーんと稼いで、ハニワ人形を挨拶の品として渡せば万事解決だ」


 小ルルドナのため息。

「はあ……。そうやって油断しているときが、何でも危ないのよ」


「今の俺なら大丈夫だろ」

「……」


 どうやら俺は調子に乗っているらしい。


(いいじゃないか。異世界だし)


 注文された看板を花屋・肉屋・八百屋の筋肉オヤジたちに届け、ついでに「ほかのお店もほしい人がいたらすぐに作りますので」と営業をかけておく。いかついオヤジたちは機嫌よく受け取ってくれた。


 花屋には花瓶のセットを営業かけたが、20セットしか注文してくれなかった。


(まあ、別の店に売ればいいだろう)


 どちらにしても売り上げは十分。


 俺はすっかり気をよくして、また、コーヒーを飲みに行った。


『ムーンバックス』……ここのコーヒーは悪くない。


 店に入ってブレンドコーヒーを注文し、前回と同じ席に座る。



 (あとはほかのメンバーに露店を頑張ってもらえば、馬車代はどうにかなるだろう。――そうだ。リーダーは、まず自分の精神を整えるべきだ)


運ばれてきたコーヒーの香りを楽しみながら自分に言い聞かせる。

「つまり、コーヒーを飲むのも、立派な仕事なのだ……!」

「一人で何を言っているの」


 呆れ声の小ルルドナを無視してコーヒーをすする。


 ――にしても、この店のコーヒーカップ。


 ここの陶器もなかなか見事である。

 ……というか俺より随分とレベルが上だ。


 だけど臆している場合じゃない。コーヒーを味わった後、思い切ってマスターに切り出す。


「マスター、突然すみませんが、陶器のミニ看板、置いてみませんか?」


 控えめに、だけどどこかに自信をにじませつつ尋ねてみる。

 見本となる看板を取り出す。


 やせ型のスキンヘッドのマスターは、あまりやる気がない様子だったのでダメ元の営業だ。初めての営業行為に少しだけ緊張する。

 しかし、相手の反応はあっさりしていた。チラリとこちらを見ただけで俺に告げる。


「……ああ、悪くないね。窓において路地から見えるようにするといいね」

「製作は早くできます。ただ、2万ゲルほどかかりますが……」


「2万ね。いいよ。じゃあ、よろしくね。明日の午前中に届けて。デザインは任せるよ。この店に合った雰囲気にしてくれればそれでいいから」


 やる気のないマスターは意外と決断が早かった。

 感謝を伝え、早速制作のため足取り軽く広場に戻った。


 ……その先に、基本的なミスがあるとも知らないで。

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