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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第8章 デビルウンディーネのガディ登場、広場販売編
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喫茶店の同じ席に何度も座ると常連になった気分になる

皮算用が終わり、特注の看板が出来上がったようですが……。

なんとか無事に陶器看板を作りあげる。


パンや陶器の販売を皆にまかせ、俺は胸ポケットの小ルルドナとともに配達へ出かけた。


「きちんと、ほかにも注文したい人がいないかきくのよ」


石畳の小道を歩いていると小ルルドナに釘を刺される。


「まあ、努力してみる」


……にしても、足取りが軽い。


アイデア1つでこんなに売り上げが良くなるなんて。


「いやぁ、いい日だなぁ!」

「……私まだ助けてもらってないんだけど」

小ルルドナが俺の胸ポケットから抗議の声を発する。


「いいじゃないか。この分だと楽勝だ。どーんと稼いで、ハニワ人形を渡せば万事解決だ」

「はあ……。そうやって油断しているときが、何でも危ないのよ」


「今の俺なら大丈夫だろ」

「……」


俺は自分の実力が認められたと有頂天になっていた。


注文された看板を花屋・肉屋・八百屋に届け、ついでに「ほかのお店もほしい人がいたらすぐに作りますので」と営業をかけておく。


いかついオヤジたちは機嫌よく受け取ってくれた。


花屋には花瓶のセットを営業かけたが、20セットしか注文してくれなかった。

――まあ、別の店に売ればいいだろう。


どちらにしても売り上げは十分。


俺はすっかり気をよくして、また、サボってコーヒーを飲みに行った。

『ムーンバックス』ここのコーヒーは悪くない。


店に入ってブレンドコーヒーを注文し、前回と同じ席に座る。


あとはほかのメンバーに売ってもらえば、出張費はどうにかなるだろう。


――そう、リーダーは精神を落ち着かせるのも仕事だ。


「つまり、コーヒーを飲むのも、立派な仕事なのだ……!」

「一人で何を言っているの」

呆れ声のルルドナを無視してコーヒーをすする。


この店のコーヒーカップ。

ここの陶器もなかなか見事である。


……というか俺より随分とレベルが上だ。


だけど臆している場合じゃない。思い切ってマスターに切り出す。

「マスター、突然すみませんが、陶器の新しいミニ看板、いりませんか?」


俺はコーヒーを飲み終わった後、控えめに尋ねてみる。

手提げカバンから見本となる看板を取り出す。


やせ型のスキンヘッドのマスターは、あまりやる気がない様子だったのでダメ元の営業だ。

しかし、チラリとこちらを見て俺に告げる。


「……ああ、悪くないね。窓において路地から見えるようにするといいね」


「製作は早くできると思うのですが、2万ゲルかかるのですが……」


「2万ね。いいよ。じゃあ、よろしくね。明日の午前中に届けて。デザインは任せるよ。この店に合った雰囲気にしてくれればそれでいいから」


やる気のないマスターは意外と決断が早かった。

俺は発注の感謝を述べて、早速制作のため広場に戻った。


……そこに、基本的なミスがあるとも知らないで。

陶器看板、パンを売るよりよほど稼いでますね。

だいたいの飲食の商売は薄利多売です。雑貨屋ということを忘れてしまわねばいいのですが。


【商品メモ】

特注ミニ看板 2万ゲル:縦20センチ横30センチくらいの白地に青い模様をつけた看板。ひもを通す穴も上の両端に空いている。文字は基本的にガディに書いてもらう。


感想・コメントお待ちしています!


2025.8.14 主人公の一人称を俺にして、それに合わせて各所書き直しました!

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