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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第8章 デビルウンディーネのガディ登場、広場販売編
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異世界にコーヒーが無いなら転生したくない

パンが全く売れず、情報収集という形で解散したが……。

 情報収集という体裁で、俺は街の路地裏にある隠れ家的な喫茶店で休んでいた。

 一番奥のテーブルで深く椅子にもたれかかる。


 そもそも、俺は異世界に来て色々ありすぎだ。皆の前では平気そうにしているが実はかなり疲れが溜まっていた。


「ふーーっ」

 俺は久々のコーヒーを喉に流し込む。脳にカフェインが程よく流れ込んでくる。


 それにしても 異世界にコーヒーがあってよかった。転生者が持ち込んだのかもしれない。


 ここは『ムーンバックス』という喫茶店だが、異世界は非常に月が人気だなな、と俺は自分の屋号にルナとつけてよかったと安堵するが、目下売上が下がっているのは気分が悪い。


 夜の経営がメインらしく、昼下がりの今はほどんど誰もいなかった。店長らしき人もやる気がなくカウンターの奥で何か本を読んでいる。


 他に客もいない。一番奥の窓際の席。窓の外の裏路地の向こうには、小川と小さな石のアーチの橋が見える。だけど人通りはない。


 その絵画のような橋を見ながら、つい愚痴を呟く。

「このままじゃあ、仕入れ費と宿泊費を賄うだけで精一杯になってしまう……」

 手に持った小型のハニワ人形を転がしながら考える。


「ルルドナ、どうしてるかなあ」

 転生前の世界の知識がある彼女は、やはり頼りになる。しかも俺が忘れてしまっている知識まで思い出してくれる。


 ――そのとき、異変が起こった。起こるはずのないことが起こったのだ。

「困っているみたいね」

 いきなり、ハニワに話しかけられた。

「え?」

 俺はまじまじと手元の小型ハニワを見つめる。

「る、ルルドナ?」


「そうよ。元気がないけど、何かあったの?」


「ルルドナだ! いま無事なのか? 何もされなかった?」

 相手の問いかけを無視して矢継ぎ早に問いかける。


「落ち着いて。無事よ。結界の中に入れられて眠らされているだけ。結界に閉じ込められた私がずーっと暴れていたら、変な魔法かけられて眠らされてしまったの。で、気がついたらこの小型ハニワに意識がうつったみたいね」


「よ、よかったぁ。ひとまず無事なんだな」

 俺は力を抜いて安堵の息を吐く。


「ええ多分、私の体は今頃、三号店のディスプレイに展示されているわ。気分が悪いけど、……美しいって罪ね」

 ……結構、余裕がありそうだな。


「美しいからじゃなくて珍しいからだと思うけど……。ともかくそのまま暴れないで大人しくしていてくれ。絶対に助けに行くから」


「珍しい上に美しいのよ。暴れたりはしないわ、どうせ眠っているし」


 憎まれ口をたたきつつも目を細めたハニワ人形を見つめ安堵する。


「で、ともかく俺らは、ちょっとメンバーが増えたんだけど……困ったことがあって……」

 言い淀む。


「メンバー増えたのはいいことじゃない。で、困りごとって何? はやく言いなさい」

 ハニワの形で苛ついているがその姿も可愛らしい。


「馬車代がなくて……」


 一瞬、動かなくなる。

「……現実的な悩みね」


「馬車代のために、麓の街で路上販売をしているんだが、一日目はうまくいった。問題は今朝。昨日の三倍も材料を仕入れたのに、全く売れなくなってさ……。今は午後に備えて情報収集という体でいったん解散してるんだが」


「油断して調子に乗ったパターンね」


「詳しく話すよ。何かアドバイスをしてほしい……」


 ――路地裏の喫茶店で俺は、小さなハニワに向かって話しかける不気味な男になっていた。


 ――およそ2時間後、ルルドナのアドバイスに従ってさらに工夫を重ねて、販売を再開することにした。

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