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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第21章 雑貨屋増設編
182/199

新商品ができたらチビドラゴンとアフロ少女が勝負をし始めた

【あらすじ】雑貨屋にイートイン作ったら、売れ行きが良すぎて、イートインだけになりそうだったので、雑貨屋のテコ入れのために新商品を思いついたクタニだが……。

【登場キャラ】

・クタニ(主人公):転生者。若返り転生おっさん。中身はハニワオタク。陶器とハニワ制作でスローライフ経営を目指している。屋敷と山を10億で購入し、借金生活。

・ルルドナ:月の石を材料にしたハニワから生まれた少女。中身はクタニが転生前に契約していたAI彼女。強気だがやや抜けている。昼に強制的に寝てしまう夜勤担当。会計もしている。


・イゴラ:ミニゴーレム。魔法学校学科首席卒業。魔法やモンスターの知識が深い。力はあるが体力は無い。パン作り担当。

・スコリィ:ストーンピクシー。魔法学校実技首席卒業。高身長の推し活女子。目がいい。仕入と店番担当。

・ペッカ:フォレストミニドラゴン。子犬サイズ。経営知識を自慢したがる。暗いのが恐い。木彫り細工と配達担当。


・スラコロウ:四角いスライム。柔らかくなりたい。魔法知識が豊富で、特別な解呪魔法が使える。陶器の型担当。

・ダリ:腹を空かせてやってきた、謎の半アフロ少女。たまに俳句っぽくしゃべる。乾燥魔法が使える。調理(乾物)担当。魔王モールの占いを信じてやってきたらしい。

「これが新商品だ!」

 配達から戻ってきたペッカに新商品を突き出す。まだ手に残る土の感触が、今日一日の苦労を物語っていた。

 スラコロウはシフトが終わるや否や、逃げるように二階へ引っ込んでしまった。

 さっきまで研究室にこもっていたスコリィは明日の早朝シフトのために早めに帰ってしまった。


 満を持して見せたのは、小さな棚だった。

 木の板と、自分の魔力でこねた土を組み合わせた試作品。釘の代わりに小さな陶片をはめ込み、装飾もすべて焼き物で統一している。

 日の光が反射して、陶器の部分だけがほのかに光った。ちょっとした魔道具のようにも見える。


「ふむ、釘を使わないから材料費が浮くし、さびも心配ないし、見た目もいいな」

 ペッカは尾を小さく揺らしながら、素直に感心している。

「ふっ、関節に釘を使わないからエコだぜ」

 得意げに胸を張るが、誰もそのエコの定義を知らない。


「エコはいいが、強度が足りないんじゃないのか?」

 ペッカが悩ましげに言う。エコ、通じた。


「それがさ、固くなれと念じれば、固くなるんだよ」

「また地味なレベルアップをしたわけか」


 ちょっとあきれ気味のミニドラゴン。

「何とでも言え。これでイートインの奴らに一泡吹かせようぜ」


 向こう、イートインに視線をやると、昼を過ぎても席が埋まっていた。

 備前さんと信楽さん、ガディの三人が、汗を光らせながら皿を運んでいる。


 奥の厨房では、イゴラくんとアツミさんがまるで踊るような手つきで料理を作っていた。

 ……もう、イートインというより、町一番の人気食堂だ。


「ん、ダリちゃんがいない?」

 その声と同時に、棚の影から小さな足音。

「わたしなら、ここだ。よく見ろ、雇用主」


 振り向くと、腰に手を当てたダリちゃんが得意げに立っていた。

「……相変わらず五七五が好きだね」


「あふれる才能がそうさせるのだ。それより、あちらではすることがないから、こちらを手伝いにきた」


「いや、コロッケとか新メニュー大変だろ」


「揚げ物の調理はまだ危ないから禁止されている」


「なるほど……」


 三人も一気に雇って、さらにアツミさんまで助っ人に来て、多すぎると思っていた。だけどすごい人たちのおかげで現場は意外とスムーズに回っていた。


「あっちはいいから、こっちの経営に切り替えよう。この棚を売ればいいんだな」

 切り替えの早い少女だ。


 棚と言っても、二段のカラーボックスくらいの大きさだ。この世界にどのくらい需要があるか、よくわからない。エコという要素が、どれほどウケるかもわからないし。

「けっこう、いいできだろ? それは試作品だから、ダリちゃんにあげるよ」


 軽い気持ちで言ったつもりだった。けれど――

「わたしにか!?」

 ダリちゃんの目がまんまるになった。驚き、喜び、そして戸惑いが一度に浮かぶ。


「いや? 二階のキミの部屋に置いておくといいよ」

「そんなことはない。あ、ありがとう……」

 普段はふてぶてしいくせに、声が少し震えていた。


 その様子を見ていたペッカが大きめの声を出す。

「そうか! 子ども向けの棚として売ればいけるぞ」


「子どもって。お前も子どもだろう、チビドラゴン」

「俺様は子どもじゃない。もう一人暮らしをしている」


「わたしなんて、ここまで野宿しながらきたぞ」

「……な、なんだと!? 野宿!?」

 暗闇が恐いペッカは、きっと野宿をするなど考えられないだろう。

 目を見開いてダリを見ている。


 これ以上、ヒートアップしないように止めに入る。

「はいはい、そこまで。棚の細かい装飾デザイン考えるから、二人ともアイデアを出してよ」


 止めに入ったが、どうもこの二名は相性が良くないようだ。

 あまりシフトをかぶらせないようにしないと、と画策を計画したが、無駄だった。

「ドラゴン、勝負だ! どっちがいいデザインを思いつくか、勝負だ!」

「いいだろう! 俺様の機能的デザイン知識を見せてやろう!」

 誇り高きフォレストドラゴンが一介の少女の挑発に乗ってどうする。


 ……まあ、いいデザインができるなら、たまにはこういうのもいいのか?


たまにはこういうのもいいです、よね?

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