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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第21章 雑貨屋増設編
180/198

足るを知れ、と言う奴は商売人に向いていない

【あらすじ】増設したイートインスペースが好調すぎて、雑貨屋スペースが存続の危機に。今から、作戦会議のようだが……。

【登場キャラ】

・クタニ(主人公):転生者。若返り転生おっさん。中身はハニワオタク。陶器とハニワ制作でスローライフ経営を目指している。屋敷と山を10億で購入し、借金生活。

・スコリィ:ストーンピクシー。魔法学校実技首席卒業。高身長の推し活女子。勘と目がいい。仕入と店番担当。

・ペッカ:フォレストミニドラゴン。子犬サイズ。経営知識を自慢したがる。暗いのが恐い。木彫り細工と配達担当。

 イートインが開設されてから、雑貨屋スペースはめっきり客が来なくなった。


 ――高い棚で区切られたふたつのスペース。


 イートインははじめから大成功し多くの人が押しかけている。


 一方の雑貨屋スペースはひどく静かだった。

 かつては子どもが駄菓子をねだり、お年寄りが薬草を探す声でにぎわっていたのに、今は食器のカチャリという音だけが遠くから響く。


 そう、雑貨屋なのに、売れている品の多くはパンやお総菜、お菓子など食材だったのだ。

 それらのスペースは、イートインに移動してしまった。


(いやいやまじで丘の上の食堂になったりしないよな……)


 その状況でも、不敵に口の端を上げる。

 店長をそれなりに長くやっていると逆境にも強くなる。

 誰に言うでもなく、力説する。

「だが、忘れてはいないだろうか、土湿布の存在を」

 お年寄りに大人気の、湿布。


 月の石が入ることで、なぜかものすごい疲労回復効果がある。

 魔王モールにも出荷している、すごい商品だ。


「それはもう主力にはできんぞ」

 ペッカがあっさりと却下する。


「月の石が入っていることがわかったから、高級品にしてしまったし、何度も使えることがわかってしまったからな」

「う……」

 厳しい指摘に口ごもる。


「そもそも、このあたりの地価はすべて上がったから、人々は財布の紐を固くしてるはずだ」

「おのれ巨人めっ!」

 白々しくも叫んでも、むなしく宙にかき消えるだけだった。叫んで売り上げが伸びるなら誰も苦労しない。


「てんちょー、もう諦めたがいいっす」

 雑貨屋スペースに残ったスコリィがカウンターの隅でビーフジャーキーをつまみ食いしている。

 ……よく食えるな、大食い大会であれだけ食べたのに。


「そもそもイートインの売り上げが良すぎて、こっちの売り上げなんて無くてもいいくらいっす」

「それをいっちゃあ、おしまいよ」


「まあ、イートインで食べ過ぎた客が消化剤を買ってくれるからちょっとはマシっすけど」

「そんな売り上げの伸ばし方はいやだ」


「だいたいてんちょーって異世界の知識で一儲けできないんすか?」

「ハニワがあるだろ。よく見ろ」

 棚に並ぶハニワたちを指さす。


「もっと便利なものっす」

 あきれるスコリィに、ため息をついて語り出す。


「便利……? そうやって便利さを追求するから世の中が乱れるのだ……。異世界の住民はスローライフをもっと味わうべきなのだ。足るを知れ……」


「商売人が言うセリフじゃないっす」

「そういう雑貨屋があってもいいだろ」

 決め顔でスコリィを見たが、ため息交じりに言葉が返ってきた。

「こりゃ一生赤字っすね」


 スコリィにそういうこと言われると頭にくるな。

 さらに、隣からもため息。


「とにかく、便利でインパクトのある商品でも考えておけ。俺様はもう配達に行くぞ」

 ペッカはあっさりと配達に飛んでいってしまった。


 その背中を見送りつつ、呟く。

「そんなもの、簡単に思いつけば苦労しないよ」


 横からのぞき込んだスコリィがずばりという。

「でも、てんちょー、実は考えがあるんすよね」

 ……こういうときは、勘がいいな、こいつ。


「前々から作ってみたいと思っていたものが、なくもない」

 そう、実は、アイデアが頭にあったのだ。


 棚の奥に並ぶ陶器を見つめながら、胸の奥に秘めていたアイデアを形にしようと決心する。

 ありえないと思っていたが、やってみる価値はあるかもしれない。


 火を使わずに陶器を仕上げるスキル――それを応用できれば。いけるはずだ。


アイデアとはいったい……!?

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