ゴミがいずれ、宝になることもある
疑いの視線。しかしその視線は俺たちではなく、フォレストドラゴンのペッカに向けられていた。
「おいそこのドラゴン、……もしかしてペッカ坊やじゃないか?」
「え?」
両者に不穏な空気が流れる。小さめとはいえドラゴンに坊やなどと、この人形は大丈夫なのだろうか。
「その声、その仕草、もしかして、ゴミ山の小人ピノキさん?」
不穏な空気が一変し、懐かしむような空気になった。ていうか幼くなってる。
「やっぱりなあ!」「そだよなあ!」椅子やテーブルたちが歓声を上げる。
「なつかしいなあ、こんなに大きくなっちまって! ついこの間まで一緒にゴミ山で遊んでいたのになあ。といってもフォレストドラゴンとしてはまだ小さい方か」
「ま、まあ、そうなんだよ。まだ分類としてはフォレストミニドラゴンなんだ」
段々と子供っぽい喋り方になる。久々に親戚のおじさんに会った少年のようだ。
「おう、それでもおれたちと遊んでいたときと比べれば大きくなったもんだ! もう少し大きくなればフォレストミドルドラゴンか?」
……大きさで名前が変わるなんて出世魚のようなものだろうか。
俺たちが再会の様子を傍観していたら、神妙な空気になった。
「しかし、そういうことか。お前さんが魔王と対立か……。これも因果か……」
「ちょっとどういうこと?」
「いや、このペッカ坊やの家族は、その縄張りの多くを消されちまったんだ」
「消された? 奪われてたではなく?」
「そうだ。この世界にある大森林の多くはフォレストドラゴンの縄張りだったが、そのほとんどが魔王によって破壊された」
「魔王は自分たちの経済成長のために、理由を多くつけて、やれエコだの持続可能な成長だのいいながら、結局は森を破壊して、でかい建物建てて自分たちだけの経済利益を確保したんだ」
吐き捨てるように人形のピノキが言う。
「……そもそも魔王ってどんな奴なんですか」
俺が質問すると、ピノキさんは待ってましたと言わんばかりに、魔王のことをまくしたてる。
「最悪なクソ野郎さ。詳しい外見はわからんが、見たことも聞いたこともない魔法や魔道具であっという間に森を焼き払っちまう。焼き払った後はすぐさま自分たちの大型店を作るのさ。こんな田舎は全然相手にされないからこのちんけな森は大丈夫だったが」
……ちんけな森に10億は払った俺は何なのだろう。
しかしやたらと情報通の家具たちである。古いものには魂が宿るといういけど、今後家具の前では失言のないように気をつけよう。
「俺が元いた世界と似ているような。ショッピングモールとか」
「……もしかしたら魔王は異世界人かもな」ペッカがつぶやく。
俺はつい不平を言う。
「迷惑なやつだ。こんな素晴らしい世界でスローライフせずにショッピングモールを作るなんて、転生者の風上にも置けない」
ピノキさんが手をたたく。
「にいちゃん! わかってるじゃねーか! この世界は、素晴らしいんだよ! アイツラがいなけりゃおれたちだって大事にされてまだまだ現役だったはずなんだ」
「どういうことです?」
「どうもこうも、おれたちは激安家具の通販を始めた魔王ウォルマゾングループに負けたのさ。このくらいちょっと修理すりゃまだまだ使えるのによお。お陰で森の中のゴミ山に捨てられて月の光浴びてたら、こうやって魔導生物になっちまった」
……この世界の月は非常に大きな魔力があるらしい。
「ところで、貴方がたは森から離れて魔法の効果が切れたりはしないですか?」
「おう! 大丈夫よ。 兄ちゃんの土のお陰で、痛みが消えたどころか、魔力が満ち溢れて体が元気になってしかたねえ!」
湿布みたいなものだろうか。これは売れるかもしれない。
「何にせよ、それなら、一緒に来ませんか? ルルドナを取り戻しに」
先程の強力な魔法を味方につけたくて、俺は提案をする。
「取り戻し? 姐さんはどうしちまったんだ?」
「実は……魔王モールに誘拐されました」
「あ? 魔王の奴らが?」
家具たちがざわめき立つ。
「行くに決まっているだろう! 姐さんにもらった第二の命だ!」
「おお!」「あたぼうよ!」
「しかし、こんな大所帯で向かってたら、すぐに魔王の奴らに戦争を仕掛けにいくと勘違いされるんじゃないのか?」
そもそも動く家具がいたら騒ぎにならないのだろうか。異世界だからいいのだろうか。
そこに出てくるフォレストドラゴンのペッカ。
「俺様に解決策がある。俺様はどこにいてもこの森にあるものはたいてい召喚できる。先程のウッドドラゴンのように加工して召喚もできるが、そのままピノキさんたちを召喚することもできる」
加工して召喚。これもうまくすれば売れそうだな。
「もっとも、加工して召喚したものは、俺様から離れると全然動かなくなるけどな」
――売れない、か。
「ともかく、俺様と召喚契約すれば、いつでも召喚できる」
ペッカが手(前足か)を差し出す。
「おう、ペッカ坊やなら安心だな。いいぜ、召喚させてやらあ」
人形のピノキがぱちんと弾くようにドラゴンの手を叩いて、契約は成立したようだ。
俺はさらに強力な助っ人を仲間にすることができたようだ。




