表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第21章 雑貨屋増設編
173/198

増設するなんて不安しかないけど女の子はいつも元気

【あらすじ】雑貨屋にイートインを増設することになりました。

【登場キャラ】

・クタニ(主人公):転生者。若返り転生おっさん。中身はハニワオタク。陶器とハニワ制作でスローライフ経営を目指している。屋敷と山を10億で購入し、借金生活。

・ルルドナ:月の石を材料にしたハニワから生まれた少女。中身はクタニが転生前に契約していたAI彼女。強気だがやや抜けている。昼に強制的に寝てしまう夜勤担当。会計もしている。


・イゴラ:ミニゴーレム。魔法学校学科首席卒業。魔法やモンスターの知識が深い。力はあるが体力は無い。パン作り担当。

・スコリィ:ストーンピクシー。魔法学校実技首席卒業。高身長の推し活女子。目がいい。仕入と店番担当。


・ペッカ:フォレストミニドラゴン。子犬サイズ。経営知識を自慢したがる。暗いのが恐い。木彫り細工と配達担当。

・ガディ:デビルウンディーネ。黒い角がある水の精霊。神秘的な美しさだが、戦いになると口調が荒れる。社会勉強のため雑貨屋で働いている。掃除と店番担当。


・スラコロウ:四角いスライム。柔らかくなりたい。魔法知識が豊富で、特別な解呪魔法が使える。陶器の型担当。

・ダリ(ダリャン):腹を空かせてやってきた、謎の半アフロ少女。たまに俳句っぽくしゃべる。調理(乾物)担当。魔王モールの占いを信じてやってきたらしい。

・備前:先代勇者パーティの一人。近くで信楽とお茶屋を経営していたが、破綻して主人公の店で働くことに。映画好きでノリがいい。

・信楽:先代勇者パーティのリーダー。90年代オタクの姿をしているタヌキっぽいおっさん。



 増設はすぐに終わった。

 信楽さんが器用に木材を加工し、日当たりのいい場所に簡易のイートインができた。


「ジオラマ作りにはまっていた時期がありましたからな!」

 ジオラマにしてはでかいけど、……90年代オタクって自分で何でも作るよね。


 しかもセンスもいい。ナチュラルウッドの明るい木材で広いバルコニーみたいになっている。立地のおかげで眺めもいい。ここでコーヒーとパンを食べると最高だろう。


 数時間で改装は終わり、20席ほどの座席がある雑貨屋になった。

 店で買ったものを、飲食できる。


 どんな雑貨屋だよ……。


「にしても、イートインスペース、広いな。個人の料理屋さんくらいあるぞ」呟くと、


「広い方がいいっす」スコリィが店の前で腕組みして見上げる。

「いい感じだ」ダリちゃんがスコリィの横で肯定する。二人はもうかなり仲良しになったみたいだ。


 しかも料理人も配膳のプロも存在する。人の準備がほとんどいらないというのはうれしいことかもしれない。


 にしても、雑貨屋と飲食店の組み合わせは……。

「なんか違うような……」

「きっと、心が追いつかないだけだ」ダリちゃんが僕にいって背中をポンポン叩く。

 黙れ小娘。起業家のメンターみたいな空気を出すな。

 ……経営者は不安なんだよ。


「え、なにこれ」ルルドナが起きてきた。午後4時。だいたい彼女が起きる時間だ。


「ああ、イートインスペースを増設した」

 勝手に増設したことを怒られるのを覚悟して、店の入り口にいるルルドナに近寄って説明する。


「……たしかに、一番売れているのパンと総菜だからいいかもね」

 あっさり肯定するルルドナ。

 ……器、大きいな。


「ちょ、クタニ殿!」

 またもや、信楽さんに引っ張っていかれる。


「またですか」

「あの赤い美少女は誰でござるか!?」

「ふ、俺の作ったハニワから生まれたルルドナです」

「な……あのような完成度の高いアーティファクトを……!? パパと呼んでいいでござるか」


「ダメに決まってるだろヘンタイ! 娘でもねぇよ!」つい声を荒げる。

「しかし実質、娘といえる存在では……」

 ……確かに、そういう関係ともいえなくもない。


「いやいや、娘じゃない、どちらかというと、妹だ。普段はお兄ちゃんと呼んでもらっている」

 そういったとき。

〈ポコン!〉

「呼んでないわ!」

 ルルドナのスリッパが頭に命中した。


「そもそも、妹じゃないでしょ!」

 遠くから抗議するルルドナ。近づくとイヤな予感がするみたいだ。


「なるほど、ツンデレ妹でござるか」

 ……おい、ツンデレの概念は90年代にはなかっただろ。


「お姉ちゃん、強いね」

 いつの間にか、ダリちゃんがルルドナのそばにいた。


「わかる?」ルルドナは近づいてきた少女の目線に合わせるようにしゃがんでほほえむ。

「なんとなく。わたしはダリャン、よろしくね」

 リズムよく自己紹介をする少女。自慢げに半アフロをゆらす。

「よろしく、ルルドナよ」

 笑顔で挨拶を返すルルドナ。


 意外と小さい子と相性いいのか?

 いや、案外ダリちゃんが誰とでも打ち解ける空気を持っているのか。


「ともかく、彼女はこの店の夜勤担当兼会計です。昼間は強制的に眠ってしまうから、覚えておいてください」

 と言った瞬間。


 二階から衣装を抱えて降りてきた備前さんがルルドナをみて目を見開く。

「何、この子……!」

「は?」

 空気が一瞬でぴりつく。二人の視線が交錯する。


 赤い色のイメージカラーをもっている者同士、相性が悪いのかもしれない。

 ルルドナのほうが、オレンジに近い赤色だけど。


 まるで強者同士の立ち会い。

 魔力の渦が周囲をざわつかせる。

 空間を削るような熱のある魔力のぶつかり合い。屋敷がきしむ。


 ――まずい。慌てて間に入ろうと走り出す。

 しかし。

「あなた……! めちゃくちゃかわいい! 私のイメージしてた理想のお茶屋の娘だわ!」

 備前さんは喜びのあまり小躍りをしてルルドナをいろんな角度から見つめる。


「……は?」

 可愛いと言われて、顔を赤くしたルルドナ。固まって動かない。


「さあ、衣装合わせするわよ!」

 そのまま備前さんに店の中に連れて行かれてしまった。

 ……衣装合わせって、何の?


不安なときは女の子の明るさが良かったりしますよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ