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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第21章 雑貨屋増設編
170/199

得意料理が乾物の少女ダリャンと失業した先代勇者を雇う

【あらすじ】間違って注文した2トンもの肉の山をビーフジャーキーに変えた少女が、雇ってもらいたいと申請するが……。

【登場キャラ】

・クタニ(主人公):転生者。若返り転生おっさん。中身はハニワオタク。陶器とハニワ制作でスローライフ経営を目指している。屋敷と山を10億で購入し、借金生活。


・ペッカ:フォレストミニドラゴン。子犬サイズ。経営知識を自慢したがる。暗いのが恐い。木彫り細工と配達担当。

・ガディ:デビルウンディーネ。黒い角がある水の精霊。神秘的な美しさだが、戦いになると口調が荒れる。社会勉強のため雑貨屋で働いている。掃除と店番担当。


・スラコロウ:四角いスライム。柔らかくなりたい。魔法知識が豊富で、特別な解呪魔法が使える。陶器の型担当。

・ダリ:腹を空かせてやってきた、謎の半アフロ少女。たまに俳句っぽくしゃべる。乾燥魔法が使える。調理(乾物)担当。魔王モールの占いを信じてやってきたらしい。


・備前:先代勇者パーティ【六古窯】の一人。近くで信楽とお茶屋を経営していたが、破綻して主人公の店で働くことに。映画好きでノリがいい。外見は、十代後半のお茶屋の娘。


・信楽:先代勇者パーティ【六古窯】のリーダー。外見は、90年代オタクの姿をしているタヌキっぽいおっさん。


「わたしの名前は、バースム・ダリャン」

 髪の毛がもじゃもじゃの少女が言う。日焼けした肌に、茶色い半アフロの髪。ぼろぼろのローブ。


 バースム・ダリャン……不思議な響きの名前だ。まあ、異世界に来てからみんな不思議な名前だけど。

「いい名前だ。ダリャンちゃん……。いや、ちゃん付けると呼びにくいな。ダリちゃんでいいかな?」

「いっきに芸術家っぽくなってないか!?」


 上々の反応に、口の端が緩む。

 ツッコミもいける、とメモを取る。


「乾物はお手の物だ。わたしを雇ってくれるか?」

 肉の山をビーフジャーキーにして、腐ってしまうのを回避した謎の少女――ダリちゃん。


 こちらに雇用を迫る。


 彼女の魔法のおかげで、俺の発注ミスはうやむやになるだろう。……助かった。


 ゆっくりと彼女に近づきながら、決めたことを言う。

「いや実は、キミは……最初から雇おうと思っていた! 料理が得意って言ってたから、惣菜を作ってもらう。このお姉さんとおじさんは仕事がないけどな!」


 彼女は一瞬うれしそうな顔をするが、二人に仕事がないと言うと目を伏せて暗い顔になる。

(しまった)

 ……別々に面接すればよかった。


 そもそも六古窯の二人は面接じゃないんだけど。

 ていうか伝説の勇者がバイトの面接に来るな。


 思わず口から出てしまった言葉に後悔していると、大人げない非難が背中に浴びせられる。

「あれぇ、あの子にはあって、私たちにはないんだぁ。悲しいなあ。私も信楽ちゃんも、料理、めちゃうまいんですけど~」

 しゃべり方をギャルっぽく変え、拳に火をともしながら備前さんが言う。赤い光の帯が周囲を漂う。


 彼女の二つ名は『炎の備前』。炎の魔法を体に纏って戦うのが得意らしい。他にも封印魔法とか針灸魔法とか使うみたいだけど。


「絶対に丸焦げにするタイプじゃないですか」彼女の燃える拳を見ながら一歩引く。


「拙者がいれば、焦げなどさせませんぞ……! 土鍋魔法がありますからな……!」

 彼女をフォローするように信楽さんが一歩前に出る。

 ……土鍋魔法って魔王倒すときに使ったのか?


 深いため息をついて、三人を見渡す。

「こっちだって雇ってあげたいですよ。でも、この子と合わせて一度に三人も雇うなんて……、今の俺の経営力じゃ無理ですって」

 弱音を言うと、信楽さんが腹を叩いてこちらに躍り出た。


「……それならば! 拙者、これでも六古窯のリーダーでござる。ヒトをまとめるのは得意でござる! 経営のアドバイスもできるでござる。いわゆる戦略コンサルタントでござる!」

 情けない中年太りの腹を叩きながら、頼りがいのある宣言をする信楽さん。


「ぐ……。30年以上も前に転生したくせにコンサルタントという言葉を知っているとは……、これはホンモノのコンサルタント……!」(※個人の意見です)

 大げさに驚きの言葉を並べる。


 ていうか意外にもこの人が先代勇者パーティーのリーダーだったのか。


 驚いていると、備前さんがなぜか着物をたすき掛けして、こちらに近寄ってくる。

「どうなの? 私があの子に料理と接客を教えるわ。彼はコンサルタント。いいんじゃないの?」

 同じくらいの高さの目線が突き刺さる。


 まるでマグマを秘めているような赤い瞳。

――熱が、こちらの瞳の奥まで伝わってくるようだ。


 思わず目をそらし、逃げるように数歩下がる。

「わかりました、雇います! ちょうど魔法学校の売上金の使い道を、設備投資に回そうか迷っていたんです! 設備投資と人件費、それでいきます!」

 ついに言ってしまう。


「おお!」

「でかしたでござる!」

「やったー!」

 備前さんと信楽さん、少女が手を取りあって喜ぶ。

〈ピカピカピカ~〉


 喜びの演出なのか、魔法の光が周囲に振りまかれる。信楽さんと備前さんの仕業だ。

 30年前に魔王を倒した後、どうせ趣味と称してこんな魔法研究ばかりやっていたのだろう。スローライフすると、こんなことばかりやってしまうからな。


――かくして、この店の設備投資、つまり店の増設が始まったのだ。もちろん、人件費もいっしょに。


さて、メンバーも一気に増えてしまったが、お店はどうなってしまうのか!?


2025/10/11 タイトルを変更しました。


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