男は拳で語り合う、ってのが許されるのは異世界だけ
助っ人たちとは何だったのでしょう?
助けに来たのは、――ゴミ、である。
〈ドゴゴゴォォォーー!!〉
ウッドドラゴンにゴミの集まりがヘビのようにうねりながら襲いかかる。
トグロを巻くように相手の四肢を絡め取る。
ウッドドラゴンの動きが――止まる。
「おう、苦労しているようだな、兄ちゃん」
声の主は、知らない木の人形と家具だった。
人形は、まさに典型的な操り人形といったふうであるが、自律的に動いていた。きっと魔力で動いているんだろう。
「どちらさま?」
俺は息を切らしながら、質問する。
見ると、不格好な家具たちがずらりと並んでいた。
ツギハギだらけだが、その体の至る所には――ルルドナに頼まれて作った土の湿布が貼られていた。
「ルルドナの姐さんから二度目の命をもらった兄弟よ」
ウッドドラゴンがなんとか暴れて飛び出すが、ゴミの山がうねりながら、何本もの足がある化け物のように絡め取る。
苦しげにもがくウッドドラゴン、しかしその動きが予想の範囲内であるようゴミの触手が絡め取っていく。
ニヤリと余裕の笑みを浮かべながら人形がしみじみという。
「いや、正確には、姐さんと兄ちゃんに命をもらったのか」
やはり皆の体にはめ込まれているのはルルドナが持っていっていた俺の焼き物だ。やたらと変な形を作らせると思っていたら、こういうことだったのか。
「こんな上等なパーツをもらったんだ! ウッドドラゴンなんて一捻りでやるぜ!」
大量のゴミ魔法(?)は、デバフ効果があるらしく、飛び出したドラゴンの関節に灯っていた防御魔法の光はいなくなっていた。
本当に元家具なのかというほどに、動きが良く、あっという間にウッドドラゴンの全身を絡め取っていた。
腕には椅子が、足にはテーブルが、尻尾にはベッドが。
2メートルもあるウッドドラゴン。その頭には小さな人形が取り付いているが、なかなかもがくのをやめない。
「ち、関節技じゃあ決まらねえか!」
そう言って人形は、ウッドドラゴンの目を覆い隠した。その瞬間、ウッドドラゴンの動きは、不自然なくらいぎこちなくなり、やがて止まった。
「おう、未だ! 兄ちゃん、やっちまいな!」
その声に反応し、俺は思わず声を上げて突っ込んだ。
「うおおお!」
最も弱い関節はどこだ。
――きっと、ここだ。
「おおおーーー!」
迷うことなく、俺は全身の力を込めて、その喉元に肩から体当たりをした。
〈ドスンッ!〉
ウッドドラゴンは力を失い、……ガラガラと崩れ落ちた。
***
「うおーーー!」
俺は似合わない雄叫びを上げる。男とは戦いに勝つと雄叫びを上げるプログラムがされているようだ。
戦いで勝ったのは初めての経験かもしれない。
だけど勝負事で自己肯定感を上げるなんて野蛮だ。
転生前の競争社会を思い出す。
――勝負なんて、最終的に勝者が一人しかいなくなってしまう。
反省はともかく、俺は咳払いをして、勝利感に酔わないように注意した。これぞ年の功。
「てんちょー! やったー!」「すごいです!」
だけど、スコリィをはじめ、イゴラやみんなが喜んでくれている。
自戒をしながら喜ぶことにする。
「まさかこんな頼もしい仲間が潜んでいたとはな……やるじゃないか」
ドラゴンが慣れない様子で拍手をしている。ウッドドラゴンの残骸に目をやりながら、なぜか解説を始める。
「どんな生命も大抵は喉元が弱点だ。俺様のウッドドラゴンも同様なのだ」
「弱点と言っても、踏み込むだけの身体能力が無いと攻撃できない。今回は皆が動きを止めてくれたけど」
「そうだ。それこそが肝要なのだ! 魔王のショッピングモールも同様だ! 動きを止め、弱点を攻撃するのだ」
「……弱点補強していたくせに」
「あの強化魔法は、弱点先埋補強。補強したところで、そこが弱点であることは変わりがない。その補強を突破するのだ」
めちゃくちゃ語りたそうなミニドラゴン。大学一年生みたいだな。
「まあ肝に銘じておくよ」
「ともかくこれからしばらくは仲間だ。俺様の名前は、サーペンテイン・ドラカーン。よろしくな」
「俺はクタニ。よろしく」
ドラゴンの手を握る。硬めの爬虫類の手触りで、意外と温かい。
「そっちのは仲間か?」ミニドラゴンがスコリィとイゴラくんに視線を向ける。
視線を向けられたスコリィが手を上げて挨拶する。
「私はストーンピクシーのスコリィ。アルバイトっす」
イゴラくんは丁寧にお辞儀。
「ミニゴーレムのイゴラです。仕入先のパン屋です」
こうやって俺たち仲良くなり大団円となった、――かと思いきや、遠巻きに木の人形と家具たちが……疑うような視線を俺達に向けていた。




