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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第21章 雑貨屋増設編
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地上げより先に固定資産税増税のお知らせが来る異世界行政

【あらすじ】雑貨屋に迫る地上げ屋ギガンテス一族。みすぼらしいぼさぼさ頭の少女と、フォレストミニドラゴンのペッカと一緒に眺めるだけのクタニ。雑貨屋の運命やいかに!?


【登場キャラ】

・クタニ(主人公):転生者。若返り転生おっさん。中身はハニワオタク。陶器とハニワ制作でスローライフ経営を目指している。屋敷と山を10億で購入し、借金生活。

・ルルドナ:月の石を材料にしたハニワから生まれた少女。中身はクタニが転生前に契約していたAI彼女。強気だがやや抜けている。昼に強制的に寝てしまう夜勤担当。会計もしている。


・ペッカ:フォレストミニドラゴン。子犬サイズ。経営知識を自慢したがる。暗いのが恐い。木彫り細工と配達担当。

・謎の少女:腹を空かせてやってきた、謎の半アフロ少女。たまに俳句っぽくしゃべる。乾燥魔法が使える。調理(乾物)担当。魔王モールの占いを信じてやってきたらしい。

 ――倒せても、何にもならない。

 そう言われている巨人たちが、目の前に、いる。


 ふもとの村、スロウタウンの周囲をハンマーでたたき、地上げをし、こちらに向かってくる。

〈ドォン! ドォン! ドォン!〉

 巨人は、6体。

 でかい存在が横並びに迫る。それだけでやはり、恐怖心がおさえきれない。


 巨人たちはこちらの丘へ向かいつつ、地上げをしていく。


 ――目の前、ほんの20メートルほどの距離に、来た。


 その巨人たちは、緑色の肌に、深緑色のスーツを着ていた。シワ一つない。

 ……アイロンがけ、大変そうだな。


 青色のハンマーは、粗削りで、まるで雷を固めたようだ。


 一族は無限に大地より生まれ、世界を値上げしていく。


 謎の少女が巨人を見ながら驚きの表情で言う。

「だけど、なんて、パワー……」

〈ドォン! ドォン! ドォン!〉


 近づくと、やはり迫力が違う。

 強がって彼女を安心させようと声をかける。

「まあ、10センチくらい、この広大な大地では大したことないよ」

 この丘から見える丘陵地帯。草原の広がる世界。10センチ程度、地面が上がったところで、この景色は変わらない。


 するとペッカが反論してきた。

「大したことない? 世界全体の土地が上がるのだぞ? 俺様たちが使うような、局所的な、目に見える範囲の魔法とは次元が違う」


 ……そういえば、そうかもしれない。


 たとえば近くの山を10センチ持ち上げるだけで、どれほどの力がいるだろう? 考えたこともなかったけど……途方もないエネルギーが必要なのは確かだ。それを世界全体でやっているのだ、この巨人たちは。


 ようやくその脅威に気が付いた俺に、語り部っぽくペッカが言う。

「彼らはそもそも、精霊に近い。世界の理に近いのだ。彼らと戦うのは、地面と戦うようなもの」


「じゃあ、どうするんだよ?」

この期におよんで何か策はないか考えるが、……何も思いつかない。


 隣にたたずんだ謎の少女がアフロを揺らし、笑みを浮かべて言う。

「あきらめろ。素直に地上げを、受け入れろ」

 リズムよく言うんじゃない。

 ……サラリーマン川柳かよ。


 ペッカが首をゆっくりと振りながら、淡々と言う。

「世間はもう受け入れるしかないとわかっている。事情を知らない転生者がたまにあらがうこともあるが、結果はひどいものだ」


〈ドォン! ドォン! ドォン!〉


 ――もう、5メートル。


「おい、大丈夫なのか? 土地を上げるだけだよな? 店を壊したりしないよな?」


 俺の質問に、ペッカは目を泳がせて言う。


「ああ、彼らは基本的に物理的な攻撃をすることはない……はずだ」

 不安な余韻を残すな。


〈ドォン! ドォン! ドォン!〉

 腹の底まで響く音。


 少女が俺の影に隠れる。

 ……おい、さっきの自信はどうした。


 目の前でハンマーを振り上げる巨人たち。


 ――そのとき、分厚い封筒が彼らの手元から落ちてきた。


〈ドスン!〉


 店の目の前に落ちてきた封筒を拾い上げ、おそるおそる少女とペッカとのぞき込む。

 その表に書かれた――赤い文字。


「こ、固定資産税増税のお知らせだと……!?」


 はやい。早すぎる……!!


「いや、まだ地面上げてねーだろ! 書類が先に届くって、異世界行政の仕事はどうなってるんだ!? ていうかあいつら役人なの!?」


 思わずツッコミをいれると、その封筒が炎上した。


〈ボウゥン!〉


「うわっ」

 燃え上がった封筒を投げ落とす。

「そんなもの、必要ないわっ!」

聞き覚えのある、若い女性の声。


 ――瞬間、近づく巨人に立ち向かう、二つの影。


 細身で小柄な影と、大柄な狸のような影。

 空中を飛び跳ねるように移動し、巨人たちに攻撃を始める。


 ――そう。

 彼らは、世界の運命を変えるほどの、驚異的な力をもった存在だった。

 ……運命といっても、地価上昇だけど。

二つの影の正体は!? 


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