表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第21章 雑貨屋増設編
164/198

能力のある新しい店員が向こうからやってくるなんて、普通はあり得ない

【あらすじ】ようやく日常の落ち着きが来たと思っていたら、思わぬ来客のよう。売り場には偶然誰もおらず、対応に向かうが……。

【登場キャラ】

・クタニ(主人公):転生者。若返り転生おっさん。中身はハニワオタク。陶器とハニワ制作でスローライフ経営を目指している。屋敷と山を10億で購入し、借金生活。


・謎の少女:腹を空かせてやってきた、謎の半アフロ少女。たまに俳句のリズムでしゃべる。乾燥魔法が使える。調理(乾物)担当。魔王モールの占いを信じてやってきたらしい。


「ごめんくださーい!」


 必要以上に大きな声。店の方から声がする。

 ……こういうときは、だいたい良くないフラグだ。

 おおかた、クレームだろう。


(さあ、今日はどうやって頭を下げようか)

 とぼんやりと思いつつ、対応に向かう。


 偶然にも店番は、誰もいなかったようだ。この時間帯なら仕方ない。

「はい、いらっしゃいませー」


 ――やってきたのは、みすぼらしい格好の、まるで家無き子のような少女だった。

 焦げ茶色のローブに、ぼさぼさの茶色の半アフロ髪の女の子だ。


 顔は不自然なほどすすだらけで、手足は細い。


 明らかに栄養が足りていない感じだ。

「ここに来れば、働けるって、きいた……!」


「え、誰に?」

「占い師の、丹波さんに」


 ……丹波さん? 

 一瞬、誰だか思い出せない。だけどすぐに魔王モールでの占いを思い出す。

「ああ、魔王モール3号店の……」


 懐かしくつぶやいた、そのとき。

 ――ぐぅぅぅぅ。


 勢いよく、名所の少女の腹の虫が鳴った。

「あ、このパターンね。……ちょっとまってて」

 奥に戻ってレンガパンの売れ残りをもってきた。


「ほら、ゆっくり食えよ」


 謎の少女はレンガパンをむさぼるように食べ出した。


「ありがとう! おじちゃん!」

「不合格」

「え」

「パンを食ったら下の村にいって仕事をさがしな。世の中は厳しい。特に俺は、……おじちゃんだからなぁ!」

 冷たく下の村を指さす。


 少女はうつむいて、上目遣いに言い直す。

「ごめんなさい、イケメンのお兄ちゃん」


「……話だけは聞きましょう」

 口の端を上げ、そっとミルク入ったコップを渡す。ついでにレンガパンをもう一つ渡す。


「あ、ありがとう」

 こちらの豹変ぶりに戸惑いながらもお礼を言う少女。


「丹波さんに占ってもらったのか?」


「うん、わたし、料理だけは、できるから」

 パンとミルクを交互に口に入れながらしゃべる少女。


「料理? うち、雑貨屋なんだけど……」


「ここ、丘の上の軽食屋にしたがいいって、丹波さんが占ってた」


 なめとるんかい、あの占い師。


「人の経営方針に口を出さないでほしいなぁ」


「でも、あの占い、当たるって評判。5万ゲル出して、占ってもらった」

「その5万ゲルで身なりを整えて大きな町で働いたほうがいいと思うけど……」


「でも、ここがベストだって、言ってた」

「うーん」

 ……丹波さんのいたずらのような気がする。


 でも確かに、朝の総菜は俺が早起きして作っていたし、料理ができる子がやってくれたらうれしいと言えばうれしい。


 2億ほど臨時収入があったわけだし、試しに雇ってみてもいいかもしれない。


 謎の少女が食事を終える。

「で、使える魔法は? 趣味は?」

「……ナンパか?」

 腹が膨れたのか、余裕ができた少女が、身を半歩退いて言う。


「いや、面接だろ」

「ということは、雇って、くれる……んですか!?」


 ……頭は、あまりよくないらしい。急に敬語になるし。


「面接次第……だね」

 と、店長らしく格好良く言った、――そのとき。


〈ドォン! ドォン!〉

 地の底から突き上げるような、地響きが起こったのだった。


(またやっかいごとか……)

 アクシデントに慣れきっていた俺は、どこか悠長にその音を聞いていた。


 それこそ、――この世界を崩壊させる、始まりの合図だとも知らずに。


地響きの正体は?


感想・コメントお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ