考え込んで立ち上がると、だいたい
【あらすじ】魔法学校の夏至祭が終わり、帰って雑貨屋にいます。ただ、売りつけたモノはどうなったのか。
【登場キャラ】
・クタニ(主人公):転生者。若返り転生おっさん。中身はハニワオタク。陶器とハニワ制作でスローライフ経営を目指している。屋敷と山を10億で購入し、借金生活。
・ルルドナ:月の石を材料にしたハニワから生まれた少女。中身はクタニが転生前に契約していたAI彼女。強気だがやや抜けている。昼に強制的に寝てしまう夜勤担当。会計もしている。
・イゴラ:ミニゴーレム。魔法学校学科首席卒業。魔法やモンスターの知識が深い。力はあるが体力は無い。パン作り担当。
・スコリィ:ストーンピクシー。魔法学校実技首席卒業。高身長の推し活女子。目がいい。仕入と店番担当。
・ペッカ:フォレストミニドラゴン。子犬サイズ。経営知識を自慢したがる。暗いのが恐い。木彫り細工と配達担当。
・ガディ:デビルウンディーネ。黒い角がある水の精霊。神秘的な美しさだが、戦いになると口調が荒れる。社会勉強のため雑貨屋で働いている。掃除と店番担当。
・スラコロウ:四角いスライム。柔らかくなりたい。魔法知識が豊富で、特別な解呪魔法が使える。陶器の型担当。
・アダムン:魔法学校理事長。神の見えざる手、という魔法を使う。
・ヒュームン:夏至祭の屋台で、古本市をしていた謎の爺さん。100留しているらしい。
・狐面の少女:不思議な本の中から出てきて空き教室から連れ出した少女。
――雑貨屋。奥の休憩室。
俺は震えていた。
昼前に、手紙が来た。――魔法学校から。
「おい、とんでもないことになったぞ……!」
驚愕の出来事が起こったのだ。
魔法学校で売った物の数々。
小型ハニワに、ヘルメット。
その支払いはすべてツケにしていた。
それで、今日、小切手が送られてきたのだが。
震える手で手元の小切手を握る。
「あ、それ、ツケ払いのやつっすか?」
スコリィが寄ってくる。
「そうなんだが、見てくれ……」
――その額、2億2500万ゲル。(※1ゲル=1円くらい……。お金の単位だけ異世界ですみません……)
追加で、あと数百体を売ってくれと手紙に書かれているけど、それでも、高額だ。
「給与アップしてほしいっす!」スコリィがすかさず言う。
「お前はもう正社員だから、すでにかなり上がってるんだよ。月末に腰を抜かせ」
社会保険完備とか言っちゃったし。
「マジっすか。じゃあ研究、頑張るっす!」
そう言って、奥の研究コーナーへ消えていった。先日、彼女には火山の花の研究を許可した。
「にしても、どうしよう……」
また借金返済に使うか、それとも設備投資に使うか。
――俺は、それぞれのメンバーの商品と経費を思い出す。
俺の土器や陶器、土湿布、ハニワ造りは実質経費ゼロ。
イゴラくんのパンは原価率3割で回しているし、ガディの水『七甲のおいしい水』もめちゃくちゃ安くで仕入れているし。
ペッカの木彫りも経費ゼロ。
火山噴火後の花の研究したいと言っていたスコリィには、土とか種とかを買い与えたけど、1万ゲルもいかなかった。
瀬戸さんのお団子は定期的に配達の鳥モンスターが届けてくれるけど、これもそんなに負担ではない。
……設備投資、いらないじゃん。
やっぱり余計なこと考えずに返済に充てたほうがいいのか?
考え込みつつ。
――数日前の、魔法学校のことを思い出す。
******
――魔法学校医務室。
白ヒゲの爺さん、もとい魔法学校理事長と狐面の少女が親友のように会話する。
「腕が鈍ったんじゃないのか。アダムン」
「お前こそ、何だその格好は。ヒュームン」
「バカめ。この脚線美がわからんのか」
「わかりたくもないわい」
思わず尋ねる。
「あの、お二人はいったい、どんな関係ですか……?」
アダムン理事長が応える。
「古くからの友人での。こいつは何か最近、仮装魔法ばかりしておる」
「おいおい。そのおかげで助かったんだぞ」
狐面の少女が得意げに言う。
「合成魔法なんてひさびさで緊張したわい」
「理事長、失格だな」
「百留しているやつに言われたくないわい」
またしても尋ねる。
「ヒュームンさん、なぜ少女の姿に? 狐の面も」
「お面は必要なのだ」
「なぜです?」
「キャラ作りだ。コスプレ魔法の基礎だ」
「は?」
久々に出てきた意外な魔法の響きに、頭が真っ白になる。
「魔女ヒルデからきいていないのか?」
「え?」
いきなり、何だ? ヒルデのことをなぜ知っているんだ?
「魔女ヒルデの弟子だったんだろう?」
「ま、まあ、流れで」
「実は……私もだ」
「ええ!? ……あ! だから兄弟子?」
「そうだ。もっとも、……この姿で会ったことはないが。二度と会うことはないか」
声が、少し悲しいトーンになる。
そうだ、もう、魔女ヒルデは。
俺は明るく声を出す。
「だから俺にあんないたずらをしたんですね! 幻の優等生っていうのはジョークですよね?」
ノートの最後を見せる。
「ふん。まあ、……そうだな。……完全に嘘ではないが」
「完全に嘘ではない?」
「もったいぶったことを言うようで悪いが、お前の魂の真実については、自分でたどり着け。そういう制約があるのだ」
「制約、ですか?」
「詳しいことはいえない。ちなみに私はセントラルライフシティで古本屋をしている。困ったらいつでもこい」
「その前に卒業した方が……」
「何を言っている。100留したのだ。200留を目指すに決まっているではないか」
天才だけどバカなタイプだ。
尊重しつつ、流す。
「夢は人それぞれですね」
「してクタニくん。これからどうするつもりじゃ。ワシらは、危険ペットショップ部門とかいうのを調べてみるつもりじゃが」
「俺はしがない雑貨屋です。まだ借金も残ってますし、雑貨屋を続けますよ」
***
と、出てきたけど、なんかいろいろと気になってしかたない。
――特に概念の怪物の欠片。その残留物キメラ。
偶然にしても不自然なほど、僕たちを襲ってきた。
待てよ。
まずは、店が壊されないよう、頑丈にする必要があるのでは?
結界魔法が使える人物を雇うか?
そのとき、ふと概念の怪物の欠片との戦いを思い出す。
そういえば、食堂の若女将アツミさんは、鍋で強力な結界を作っていたような……。
(よし、さりげなく学食へ行こう。彼女に会えるし、コロッケ定食の食券あるし)
そう決めて立ち上がったとき、――店の方から大きな声がした。
「ごめんくださいーい!」
雑ですが、ひとまずまとめました! 長くなりすぎたので……。後の話でジワジワと回収していきます……。
2025.8.21 ちょっとだけ書き直しました。




