魔法学校の夜、残留物キメラ
【あらすじ】魔法学校夏至祭の後夜祭に突如現れた概念の怪物の欠片。理事長と狐面の少女の力で追い払ったが、そのあとに発生した残留物のキメラが襲いかかる。
【登場キャラ】
・クタニ(主人公):転生者。若返り転生おっさん。中身はハニワオタク。陶器とハニワ制作でスローライフ経営を目指している。屋敷と山を10億で購入し、借金生活。
・ルルドナ:月の石を材料にしたハニワから生まれた少女。中身はクタニが転生前に契約していたAI彼女。強気だがやや抜けている。昼に強制的に寝てしまう夜勤担当。会計もしている。
・イゴラ:ミニゴーレム。魔法学校学科首席卒業。魔法やモンスターの知識が深い。力はあるが体力は無い。パン作り担当。
・スコリィ:ストーンピクシー。魔法学校実技首席卒業。高身長の推し活女子。目がいい。仕入と店番担当。
・ペッカ:フォレストミニドラゴン。子犬サイズ。経営知識を自慢したがる。暗いのが恐い。木彫り細工と配達担当。
・ガディ:デビルウンディーネ。黒い角がある水の精霊。神秘的な美しさだが、戦いになると口調が荒れる。社会勉強のため雑貨屋で働いている。掃除と店番担当。
空中に浮いた巨大な化け物。キメラというにはあまりに巨大な。まるでコンテナトラックのような大きさだ。
〈グオォォォーー!!〉
目の間に迫る化け物の足。
――だめだ、大きすぎてよけることができない。
「クタニッ!」
俺の前に真っ先に駆けつけたのは、紅赤の髪の少女。
〈ドゥンッ!〉
彼女の重力魔法が、キメラを吹き飛ばす。
「ルルドナ!」
〈オォォォー!〉
次は竜巻が発生する。キメラの巨体は回転しながら空中に吹き飛ばされる。
「てんちょー、やっぱり、最初に狙われるんすよね」
そう言いつつ、スコリィの口元はわずかに笑っていた。
「スコリィ!」
〈ザンザンザンッ!〉
空中に浮いた巨体に、水の針が何百と突き刺さる。
〈ぐぉぉぉーー!〉
「クタニ、今度清めの水をプレゼントするぜ!」
「ガディ!」
〈フィオンフィオンフィオン!〉
「暴れ足りんかったけんね!」
空を覆い尽くさんばかりの巨大な白い魔法陣。不思議な音を出し、敵を囲う魔法の螺旋。
これは、神々の――力。
キメラのつぎはぎだらけの表皮が分解、消失し、小さくなる。
「ライムチャートちゃん!」
彼女の魔法でずいぶんと小さくなった残留物キメラ。
そのまま消滅してくれ。
――誰もがそう祈った瞬間。
〈バチバチバチッ!!〉
雷のようなものを発生させ、渾身の力で、魔法から逃れる残留物キメラ。
――しかし。
〈ドォン!!〉
巨大な木製のドラゴンの足が空中に発生し、キメラを勢いよく地面に押さえつける。
「全員、動けるようになったらお前の元に走って行ったぞ」
「ペッカ!」
「そのまま押さえつけてなさい!」
ルルドナが力を溜め、体を勢いよくひねり、渾身の回し蹴り。
――だがその寸前。
〈フッ……!〉
残留物キメラが消える。
〈ブンッ!〉
ルルドナの蹴りが空を切る。
「なっ……!」
「倒してしまわれると、困るんですよねぇ」
――突如。
しわがれた、地響きのような声。
渦巻く雲をまるで操っているかのような。
巨大な鎖を持った黄色のタキシードの男が、空中に悠々と浮かんでいた。
「このキメラは、魔王モール4号店の危険ペットショップ部門がお引き取りいたします」
残留物キメラは、黒紫の魔法陣の描かれた極太の鎖に巻かれている。苦しそうにもがいているが、その太い鎖をどうすることもできないようだった。
「弱らせていただきありがとう。あなたがたは象牙の塔で祭りでもしていてください」
そう言うとあっさりと、その男は姿を消した。
――残留物キメラをつれて。
俺たちは全員、動くことすらできなかった。
見上げた夜空には、不気味なほどきれいな星空が広がっていた。
(※主人公の一人称、僕→俺に変更中)
短いですがこんな感じで、脅威は完全に去りました。
戦闘シーン修正しました!
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