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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第20章 魔法学校夏至祭編
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ドミノの壁登り、レーザーで攻撃されても、先輩と合成魔法

【あらすじ】魔法学校夏至祭の召喚物競争に参加することになったクタニ、ガディ、スコリィ。最後の関門は、巨大なドミノ壁。

いつだって壁は高く、厚く、そびえ立つ。しかし、それを越えたとき、大きな扉が開くのだ。


「単純に、俺が一番内側を走る。二人は、俺に合わせてゆっくり走ってくれ……」

屈辱の提案をする。


「りょうかいっす、てんちょーの足の長さに合わせるっす!」明るく答えるスコリィ。

「まあ、しょうがねえ。短いのに合わせるか」悪気のない様子で俺の足を見るガディ。

……触れないでほしかったのに、思いっきり突っ込んでくる。


『さあ、腹が据わったようです! 見事クリアできるのでしょうか!? だんだん高くなるドミノ壁! 2階の高さから15階までの高さまでのぼっていってもらいます!』


ナレーションはテンション高いが、悪意は感じない。運営が何か仕掛けてきそうな気配は……いまのところない。


「いくぞ!」「おう!」「うっす!」

思い切って踏み出す。ドミノ同士の間隔は1メートル弱、段ごとに30センチずつ高くなって、大きくカーブしている。


浮遊魔法で少しだけ身軽になっているとはいえ、これが何十段も続くと負担が大きい。


「いち、にっ! いち、にっ!」


オヤジくさいとか言われても知らん。

二人が合わせやすいように、ひたすら声を出して階段状のドミノ壁を駆け上がる。


通り過ぎたドミノ壁は……俺らの進行方向に向かってゆっくりと倒れてきているようだ。


(おいおい、これってこっちに倒れてくるのかよ!)


『言い忘れましたが、あまりに遅く上っていると、足場が倒れてすぐに崩れてしまいますので気をつけてください!』


おせーよ。

ドローンカメラが器用について来て、ナレーションの声だけは元気だ。


ツッコミたかったが、そんな余裕はない。


「いち、にっ! いち、にっ!」


俺の声に合わせて、二人は余裕そうに駆け上がる。

案外、いけるかもしれない。

はるか下の地面は見ない。目の前のドミノ壁だけを見て、リズムよく上る。


――そのとき、ドローンカメラから異音がした。

〈キィィーーン〉

足下に、光のレーザーが放たれる。

〈シュゥン!〉


「うぉ! ……いち、にっ!」

慌てて避けつつ、……それでもリズムを崩さずに進めていく。


(いや、マジでやりすぎだろ!)


「どうしたっすか、てんちょー?」一番離れているスコリィは気がついていない。


〈シュゥン!〉

「なんだこいつ! 攻撃してくるのか!?」真ん中のガディにもレーザーが放たれる。


――しかし。

〈キュイィィーーン! バシャバシャ!〉

突如出現した少し濁った水が、光を分散させレーザーを防ぐ。


ガディの自動迎撃魔法!


「全員に魔法かけた! だが気を取られてバランス崩すなよ!」


「あざっす! てか、これ壊しちゃっていいんすか?」

スコリィが余裕のある声で言う。だけど俺はそちらに視線を向ける余裕はない。


『運営です! ドロ-ン魔法カメラ、制御不能です! 壊してしまっても、かまいません! 一台で何百万も出して購入しましたが、気にしなくて結構です……!』


断腸の思いのこもったナレーション。

……もうあきらめろ。


だけどこっちも絶体絶命。僕たちは止まるわけにもいかないしレーザーの攻撃は容赦なく飛んでくる。


――そのとき。

〈ドォン!!〉


僕たちを攻撃していたドローンの一台が破壊される。


そこにいたのは――。

「ミントン先輩!」


スコリィがうれしそうな声を上げる。

そう、現れたのは、スコリィの先輩、ミントンさん。巨大な植物をの上に乗って茨の鞭を構えていた。


***


「スコリィ! あんたは、進むことに集中しなさい! 敵はこっちが対処するわ!」

現れたのは、美人秘書のミントンさん。


スーツ姿に銀縁メガネ。手には大きな茨の鞭を構えている。


足下には巨大な植物。その先のつぼみのような部分に乗っている。

「やっと見つけたわ、魔王機材部門の! まさかドローンに仕掛けているとはね!」


スコリィが親指を立てて言う。

「先輩ナイスっす! こんどハチミツゼリーあげるっす!」

「集中しなさいって! ……って、増えた!?」

〈ブォンブォンブォン!〉


ドローンは大量に増えた。その数、100以上。


その大群は無情にもレーザー攻撃を仕掛けてくる。

〈ヒュインヒュイン!〉


――しかし。


〈ジュバジュバジュバ!〉

ガディの防御魔法が無数のレーザー攻撃を防いでくれる。


「こんな量の攻撃が続くと、いくら俺の魔法でも防ぎきれないぞ!」

ガディは迎撃魔法を強化しつつ、歩調を合わせて駆け上がる。


「いち、にっ! いち、にっ!」

ミントンさんの救助が来ても俺たちは進むしかない。


足下は20メートル以上の高さ。


ペースが乱れないように、足を踏み出すだけで精一杯だ。


「ミントン先輩! いけそうっすか!?」スコリィは余力をたもったまま声を上げる。


「この巨大植物で魔力ほとんど使ったけど、やってみるわ!」ミントンさんは、巨大植物から茨の鞭を数十本生えさせ、器用にドローンを打ち落としていく。


……だけど、打ち落としても打ち落としても、ドローンはどこからか出現する。


「いち、にっ! いち、にっ!」

俺はほとんど何もできずに、声を張り上げてドミノ壁の上を進むのがやっとだった。


***

「先輩! 合成魔法いくっすよ!」

軽快に駆け上がっていくスコリィの大きな声。


「あんた、跳びはねながらできるの!?」

ミントンさんの焦った様子の返事。


「いけるっす! なんか慣れてきたっす!」

前方宙返りをしながら次の段へ飛び移ったスコリィは答える。


……お前もうパルクール選手になれよ。


「バランス崩さないでよっ! じゃあ、数には数を! 『綿毛雲魔法』、いくわよ!」

「ういっす! なついっす!」


「小さき綿毛よ、覆い尽くせ! ――タンポポの浮き雲ダンデライオン・ミスト!」

ミントンさんの周囲に黄色い花が無数に咲きほころび、すぐに白い綿毛になり空に舞い上がる。

――それはもう、一つの雲のまとまり。


それを見たスコリィが綿毛の雲に手をかざして魔法を詠唱する。


「風よ、曇天に遊べ! ――自由の笠雲(パラソル・グリッド)!」

スコリィ、お前昔中二病だったのか!? ネーミングセンスも悪くないぞ!


二人の魔法が見事に合成され、縦横無尽に、ドローンに襲いかかる。あまりに不規則な動きに、ドローンもよけることができない。


〈ボボボッ! ボボボッ! ボボボッ!〉

ドローンの羽元に綿毛が絡まり、次々と落下していく。


「よし!」

「おっしゃー!」

二人が声を上げる。


合成魔法が見事に決まり、ドローンの集団はいなくなった。


「いち、にっ! いち、にっ!」

俺は機嫌良く声を張り上げて、ドミノの段を駆け上る。

もう、全体の半分くらい来たかもしれない。


ナレーションの声が響き渡る。

『す、すばらしい! ミントン、スコリィ両名の合成魔法! 無数ともいえるドローンをすべて墜落させた-!』


その直後、何かに気がついたガディが叫ぶ。

「おい! まだ出てきてるぞ! あれだ! 下の紫の魔法陣だ! あれを破壊しろ!」


「え、下?」


その声に、見ないようにしていたのに、はるか下の方を見てしまった。

紫の魔法陣から新しくドローンが飛び出したのが見えた。


――しかしその瞬間。

〈ズルッ〉


誰かが、足を滑らせた音がした。


――ああ、自分の足だ。

クライマックスです! このまま落ちてしまうのか!?



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