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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第20章 魔法学校夏至祭編
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水の精霊と悪魔の娘ガディの魔力量と減っていく予算

魔法学校夏至祭。召喚物競争でクタニ、ガディ、スコリィが協力して進んでいくことに。第三エリアの麻痺水プールをクリアし、詭弁で失格も免れたが……。

「巨大ヘルメット、売ってくれ!」

また来た。他の競技者たちだ。


「オレはスイカを売ってくれ!」

運営の許可も下りてるらしいし、ツケ払いで売りつけてやることにした。


***

俺がせっせと作っている間、ガディとスコリィが三つ目のプールを攻略する流れになった。

二つ目の麻痺プール、魔法のスイカを食べればプールサイドを歩いて渡ってOKとのこと。


三つ目のプールに関しても、誰か一人でも攻略できれば、全員プールサイドを歩いて通過できるらしい。ともかく、ここは「とにかく水トラップやりたかった」って運営の意図を感じる。


『さあ、第三エリアの最後のプールは、伝説の水の怪物ケルピーです! 馬型モンスターですが、動きは素早く、幻術なども使います! 一匹でも倒せばクリアです!』


プールの向こうでガディとスコリィが伝説のモンスター集団と向かい合う。

ちょっとまて、なんかめちゃくちゃ強そうなんだけど。


遠目にもヤバさが伝わってくる。その高さ、スコリィの二倍はある化け物が、何十匹も水面に並び立ち、二人をにらんでる。


(そういえば「後半にならないと命の危険はないっす」とスコリィが言っていたな……)

「おい! 二人とも! やばいなら引き返せ!」

俺が叫ぶが二人はぴくりとも動かない。


やがて、水をまき上げ、ガディが叫ぶ。

「水のある場所で俺に勝てると思うな! 水よ、空を思い出せ!――水神の竜巻(ウォーターサイクロン)!」 

〈ドドドドォォォーーーー!!〉

発生したのは巨大な水の竜巻。天まで届く水の渦。


ナレーションの声が響く。

『これはー! 一介の召喚獣にあるまじき魔力量だ! 何が起こっている!? たった一人で全滅させる気か!? ……ちょっとそれ予算的にやめてほしい! 一匹につき出演料けっこうかかってるぞ!』


あれって出演料とってるんだ……。


現実的な心配に同情しつつ、現実離れしたガディの魔法を見つめる。


水の精霊と悪魔の子。その魔力量は計り知れない。


『プール全体が、海の上の竜巻になったかのように荒れ狂い巻き上げられる! 巨体のケルピーたちがなすすべもなく翻弄されている! しかしあと一歩足りない! ……足りないでいいの! 一人で全滅はやめて! 出演料が!』

ナレーションが余計な茶々を入れつつ、実況を続ける。

……大変なんだな、運営も。


そのとき、スコリィも何かひらめいたように前に出る。

「おお! アタシの得意技と似てるっす! 重ねがけいくっす!」


彼女はパチンと指を鳴らす。

するとプールサイドの敷石がふわりと浮かび上がる。


「巻き穿て!――石灰華の竜巻トラバーチン・トルネード!」

水の竜巻を包み込むように、プールサイドの敷石がぐるぐると巻き上がる。


『ああ、なんということでしょう! OBのスコリィ選手による岩石風魔法! プールサイドの石、トラバーチンを使って魔法を繰り出した! 予算がまた減っていくー!』

あの石ってトラバーチンって言うんだ。そして予算はもうあきらめろ。

手で土をこねつつ、二人の合成魔法を見つめる。


『それにしても何というセンス! 一瞬で他者の魔法と自分の魔法を合成! そうだ! 彼女はこの合成センスで最優秀生徒に選ばれたんだー!』 


水と風と岩石が入り混じった竜巻で、ケルピーは翻弄される。

〈ブオォォォーーー!〉

やがて竜巻が収まったとき、すべてのケルピーたちは傷だらけで水面に倒れこんでいた。

ガディとスコリィが無言でハイタッチする。


『あ、圧勝! 圧勝です! スコリィ選手の魔法センスも素晴らしいが、元の莫大な魔力を放ったガディ選手、彼女は一体何なんだーー!?』


ガディがついにキレたように叫ぶ。

「いちいちうるせーな! 俺はな! れっきとした水の精霊なんだよ! ちょっと悪魔の血もまざってるがな!」

親父さんの血、ちょっとなんだ。


『な、なんと! 正真正銘の水の精霊だそうです! この南の地には非常に珍しい! しかし、それならばこの魔力量も納得です! 四大元素の一つ、水をつかさどる精霊! しかも美しい! あとでサインください!』

水の精霊とわかったとたん、急にすりよってくるナレータ―。

……水の精霊ってサイン求められる対象なの?


ただ仲間が褒められてうれしくないわけでもない。俺は少しだけ鼻が高くなる。


『ていうか、予算をどうしてくれるんだー! 残りの選手は素通りだ! ……え? 盛り上がったからいい? 運営、意外と適当です! さあ、スコリィチーム、先へ進んでください! お気をつけて!』


第三エリアのナレーションが二人を見送る。


会場が静まり、強い風が吹く。


まるで西部劇のガンマンみたいに、二人は無言で第三エリアを後にした。


(あれ……俺、完全に忘れられている?)


急いで大型ヘルメットを生徒たちに渡し、ナレーターに気が付かれないようにこっそりと二人のあとを追った。


半分出た尻にあたる風は、やけになまぬるかった。

――残り、2時間40分。

魔法もちょっと格好良くしていきたいと思います。


2025.8.15 主人公の一人称を俺にして、それに合わせて各所書き直しました! タイトルもちょっと変えました!

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