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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第20章 魔法学校夏至祭編
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幻の天才の青春の夢ノート

【あらすじ】魔法学校夏至祭。ゲストとして呼ばれたクタニ、ルルドナ(小型サイズになって胸ポケットで寝ている)、スコリィ、イゴラくん(ライムチャートちゃんと交代、祭りを見ている)。クタニは一人で学校をさまよって、ヒュームンという怪しい老人からノートを受け取ったが……。

あまりに強い日差し。

ヒュームンさんから受け取ったノートで日差しを遮りつつ、校舎の中に避難する。


――休憩所と書かれた空き教室。


俺はそこでしばらく涼をとることにした。

暇だからもらったノートでも読もうとする。


「ていうか、異世界の魔法ノートなんて俺に読めるのか……?」

この異世界は自動翻訳してくれるから読めるのは読めるけど、魔法の授業のノートなんて読めても理解できないだろう。


しかしそれは、……ノートではなかった。


「こ、これは……!」

妙に角張った文字、一ページ一ページにまとまった文章。

『○月×日 晴……今日も食堂のコロッケが美味……』

思わず、俺はノートをたたきつける。

「日記じゃねえか!」


人の日記を読んで楽しむ趣味はないので、そのまま椅子を引いて座る。


その教室で俺は、遠くに学生の楽しそうな喧騒を聞く。

誰もいない教室。


誰もいない教室は、よく知っているが、俺は……。


「何か懐かしいような……」

この教室を知ってるわけがない。

わけがないのに、一番後ろの窓際の席。

とても懐かしい――。

「んなわけないか。ネット小説の読み過ぎだ」


自分に言い聞かせつつ、その席に移動して休憩をする。


遠くに喧噪。歓声。

楽しいはずの祭り。全く心は躍らない。


あまりに暇で、日記を読んでみる。天才の日記はもしかしたら商売のヒントになるかもしれない。

『○月×日、晴、――ただしオレの心は曇り』

(ずいぶんひねくれた奴の日記のようだな)

『オレの魔法制度理論は完璧だ。オレの意見に従えば、この世界はすぐに平和になる。だけど、まあ知っている。誰もオレの意見なんてきいてはくれない』

(天才って一緒なんだな。文字も俺と同じで角張っているし)

まるで自分が天才になった気分で読んでしまう。


『○月△日 雨 ――オレの心と同じ。今日は面白い魔法を使った。校長すら使えない大魔法だ。ただ、反動でしばらくは動けない。三日間ずっと雨になる魔法。そう、これでマラソン大会は中止だ』


(くだらないところが共感持てる天才だな……)

そういいつつ、俺は大きなあくびをする。

やはり昨日の疲れが……。

なぜか眠気と戦いながら日記を読み進める。


『◇月○日 曇り――同じ。禁断の魔法の封印を解いてしまった。なんてことをしてしまったんだ。ああ、だめだ。もうおしまいだ。この世界から、月が消える』


(何言ってるんだ、こいつ。月は今だってあるのに)


『◇月△日 曇りのち雨――同じ。学校中に知られた。封印を解いたことを。世界が変わってしまったことに気がつく。オレは悪くない。世界が悪いんだ。オレの意見を聞かないから』


『◇月□日 闇――同じ。禁断の魔法のせいで、夜が明けなかった。月が消え、この星は太陽からも離れる。

闇がずっと続くだろう。幸い、魔法灯があるから明るい生活をできているが』


そこで日記は途切れていた。

休憩用の教室の片隅。夏至祭はまだ始まったばかりで、休む者は誰もいない。


というか特別ゲストなのに、一人でいったい何をやっているのだろう。

同じく特別ゲストのルルドナを見るが、小指サイズになって胸ポケットでスヤスヤと寝ていた。


「どんな夢をみているのやら」


思わず口元がほころぶ。

しかし、自分の言葉に大きく動揺する。


――夢?


そうだ、夢だ。

見たことあるんだ。夢で。

この教室で、夢を。

この教室で、夢を――。


***

俺はよく連続した夢を見る。

それはアニメやドラマみたいにだんだん更新されていく。

毎晩毎晩更新されるから、毎日夢を見るのが楽しみだった。


――その夢の一つは、この教室での夢だった。

確証はない。だけど、何となくそうだという気がする。


(懐かしい……この感覚は……)

気がつけば夢は広がって、――俺はその続きに放り込まれた。


窓の外に大きな二つの月。その後ろに真っ黒な宇宙。

二つの月が、にらむようにこちらを見ている。


「――え?」


魔法学校の制服を着た俺は、教室で、授業を受けていた。

制服の袖をつまむ。ちゃんとした手触り――リアルな感触だった。

まさかの、ノートの中に入り込む展開です。

いや、夢の中か。どちらにしろ、別次元の体験をするようです。


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