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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第20章 魔法学校夏至祭編
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秘書ミントンは陶器魔法でタケノコモンスターと戦ってボーナスを請求する

【あらすじ】魔法学校に来て理事長室で真面目な話してたら中庭にモンスターが出現。主人公、ルルドナ(寝てる)、スコリィ、イゴラくんのざきゃメンバーと、理事長アダムン・スミス、秘書のミントンが窓からモンスターを見るが……。

「あれは、新種ですね。理事長、どうします?」ミントンさんが落ち着いた様子でいう。


 その間にぐにょぐにょとうねりながらタケノコと蛇が合体したようなモンスターが成長していく。


 上級生とみられる生徒が手をかざし、広場を覆うように結界が張られていく。


「魔法学校の結界を超えてくるほどの存在だが……、陽動の可能性もある」


「では、広場は上級生に任せ、我々は見回りにいきます?」


「いや、ミントンくん、一瞬であれを掃討してくれるかね。植物系のモンスターの相手は得意じゃろう? そのあとに急いで見回りを全員でしよう」


「え、私ですか……?」

 理事長にも、遠慮なく露骨にいやそうな顔をするミントンさん。


 ツンデレ系の秘書か!?


 俺が内心ワクワクしていると、スコリィが腕を伸ばして先輩をあおる。

「久々にミントン先輩の魔法見たいっす!」


「スコリィ、ひと暴れしてはどうです? 優秀なんですよね?」とミントンさん。


「いやあ、あのタイプのモンスターは苦手っす。ていうかミントン先輩と比べたら全然っす」


 イゴラくんが解説をする。

「たしかに石や風の魔法のスコリィさんは相性が悪いですね。植物系のモンスターは、生命力が強いです。しかもタケノコ系なので回復や成長も半端ないです。植物系なので火に弱いかもしれませんが、竹なので火も効きにくい、と考えられます」

 イゴラくん、モンスターの分析はかなりすごいな。これが魔法学校の学科優等生……!


「それって最強レベルじゃ……ってめちゃくちゃでかくなってる!」

 イゴラくんに感心しつつ改めて窓の外を見ると、モンスターが成長し小型のビルのように巨大になっていた。


「おお、これはピンチじゃ、もう一般の生徒では手に負えん!」

 大げさに理事長が叫ぶと、ミントンさんが眼鏡をくいっと上げて言う。


「はいはい、私がいきますよっ!」


 やけ気味に声を上げたミントンさんは、黒いジャケットを脱いでソファへ投げると、勢いよく窓から飛び出した。


 意外とアクティブな動きするんだ。

 ……ここ、4階ですよ。


 **

 一瞬だった。


 魔法学校の上級生が手をこまねいている中、秘書のミントンさんが窓から飛び出した。若草色のショートヘアが綿毛のように広がる。


 周囲の植物がミントンさんの足場を作り、そこに降り立った彼女は手を広げる。同時に巨大な黄緑色の魔法陣が広場全体に展開される。

 直径100メートルはある魔法陣だ。


「ライムグリーン・ハードウィック!」


 彼女が呪文を唱えると、魔法陣に沿うように地面からツタ植物が発生し、タケノコモンスターをすべて絡めとる。


 複数の目を使って必死に逃れようとするタケノコも、下からその体にぐるぐるとまとわりつく植物に締め付けられ、動けなくなっていく。


 しかし力づくで動いたひときわ大きな首が、大きな口を開け、ミントンさんに襲い掛かる。

「エッジダイヤモンド・ハドンホール!」

 〈スパッ〉


 敵の首が円盤状の何かに切り落とされる。円盤状の何かは、その縁にきらめくダイヤモンドのような刃をもち、二重振り子のような複雑な軌道を描き、ヒュンヒュンと他の首も切り落としていく。


 あれは、……巨大なソーサー?(※ソーサー:ティーカップの下にある皿のこと)

 ……確かに投げやすそうだけど、絶対に怒られるやつじゃん。


 しかし、その切り口から新しい首が再生し、彼女に襲い掛かる!


「……すごい再生力」


 冷静に言葉を発したミントンさんは敵の攻撃をひらりとよけ、別の足場へ飛び移る。


「でも、その再生能力が仇となる」


 次々と襲い掛かるタケノコの蛇首。右も左も

 竹林の先がすべて蛇になって襲い掛かってきたようなものだ。その数、百を超える。

 あれは、よけきれない!?


 しかし、彼女は動じない。


 すでに数百もの数に増えていた首が、ぽろぽろと落ちていき……、切り口から細いツタ植物がいくつも生え、覆ってしまった。


 あれは、寄生植物……? 


 戦いは終わったとばかりに、植物のツタの階段を歩いて理事長室に戻ってくるミントンさん。


「切り落としたときに、生命力を吸い取って成長する種を蒔きました。すべての首を絡めとりました。もう、動けません」


 圧倒的な勝利だった。まるで首が百本近くあるドラゴンと戦ったようなものだ。


「相手の成長力を利用したっすね! さすがっす!」

 スコリィが元気よく先輩をほめたたえる。

「植物系の魔物にしか使えないけどね」とソファのジャケットを拾い上げてミントンさんが返事をする。


「あんな倒し方があるんですね。すごいです!」

 イゴラくんは素直に感心して敵の残骸を見つめる。もはや花が咲いて、巨大な生け花のようになっている。


 皆がミントンさんの活躍をほめたたえる。

 ……だけど、成長、という言葉に俺はなんだか不安を覚える。


 〈成長ゆえに、ほろびる〉

 あの概念の怪物が残した言葉。あの言葉の真意は、何なのだろう。


 〈パチパチパチ!〉


「よくやってくれた! 見込み通りじゃ!」

 理事長は、大げさに手をたたいてミントンさんを賞賛する。


 思わず俺たちも拍手をする。


「……臨時ボーナス、お願いしますね」

 表情を変えず銀縁眼鏡をくいっと上げて頼むミントンさん。


 ……あ、やっぱりスコリィの先輩だ。


 **

『えー、放送部です。理事長からです。緊急の見回りを開始してください。各寮のチューターは下級生をいったん寮に避難させ保護してください。フェローは2人以上で見回りを開始し、少しでも異常があれば報告をお願いします』

 意外と慣れている感じで放送が流れる。避難訓練的なことを普段からやっているのだろうか。


 窓から広場を見てみると規律の取れた動きで、生徒たちが移動をしている。

 軍隊も顔負けの動きだ。上級生と思われるリーダーたちは百戦錬磨の戦士のような顔をしている。


 一糸乱れぬ動きに感心していると、続けて放送が流れた。


『えー、見回り場所ですが、ネコさん寮は北エリア、イヌさん寮は西エリア、トリさん寮は東エリア、カエルさん寮は南エリアをお願いします』

 思わず吹き出す。

「寮の名前、可愛すぎない!?」ツッコミをいれてしまう。


「え、ふつうじゃないっすか?」とスコリィ。

「ふつうですよ」イゴラくんも。


「普通じゃねえよ! あんなごつい顔してネコさん寮とか言ってるの!? もっとかっこよくグリフィ〇ドールとかス〇ザリンとかないのかよ!?」

 思わずいつものノリでツッコミをする。


「伝統です。察してください」ミントンさんは真顔である。


「わしの生まれる前からこの名前らしいからのう」理事長も疑問に思ったことはないらしい。


 そうだよ、名前とか外見で判断しちゃいけないって、よく言い聞かされていたじゃないか。


 ……でも、さすがに完全には不安を拭い去ることはできず、心のどこかでくすぶっていた。


 その予感は子どもがうなされて見る悪夢のようで……、こういう時に限って的中するのだった。

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