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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第5章 団子屋と看板破壊編
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看板を掲げるときって意外と緊張する

【あらすじ】雑貨屋を開店したのはいいものの、許可証がないことを指摘され、取りに行くクタニ。しかし店では初めてのアルバイトのスコリィがいきなりルルドナに推し宣言? どうなる異世界経営。


【登場キャラ】

・クタニ(主人公):転生者。若返り転生おっさん。中身はスローライフを目指すハニワオタク。空き家と山を買って借金生活。雑貨屋店長。

・ルルドナ:クタニの作ったハニワから生まれた少女。紅赤の髪に和風メイド服。強気だがやや抜けている。昼に強制的に寝てしまう夜勤担当。

・イゴラ:ミニゴーレム少年。最初の客。130センチくらい。

・スコリィ:ストーンピクシー。高身長スレンダー女子。180センチくらい。


「初日に推しの話はしないんじゃなかったの?」

「本人にはいいんです!」

「基準がわからないわ……」


 俺が上機嫌で店に戻ったとき。

 ルルドナとスコリィが仲良く談笑していた。

 近くまで来たがこちらには全く気がついていない。


(紅赤の髪の土器質の少女に、背の高いモデル体型のピクシー。これぞ異世界! ……ああ、ずっと眺めていたい)


「ただいま」やむを得ず声をかける。ずっと近くで見ていたら、また何か怪しまれかねない。

「あ、店長、おかえりっす」

「おかえり。許可証はもらえたの? 罰金はいくらだったの?」

「罰金は異世界人ってことで免除してもらえたよ。許可証はこの通りばっちり」


 厚紙に書かれた許可証を見せ、壁に鋲で貼り付ける。

「ともかく、食品はしっかりと火を通したり塩につけたり、腐りにくくして売れってこと。ま、基本は俺が作るよ」

「了解っす」

「わかったわ」


「あれスコリィ。君はそんな肌だったっけ?」見ると顔の表面が石のようになっている。

「ああ、ははは。ちょっと恥ずいっすね。ストーンピクシーってのは、夜になっていくにつれ肌が石のように固くなるんすよ」


「へえ。ちょっと失礼」

 俺が腕を触ると、確かにザラザラとしてた。面白い質感だ。砂岩より少し滑らかで、上質な陶器と砂岩の間とでも言うような心地よいザラつきがあり、温かい。


「セクハラっす!」さっと手を引くスコリィ。恥じらっているふりをしているようだ。


「そんな大げさな……。その肌は深夜になるにつれ固くなっていくの? 寝るときは石のようになるとか? 逆に正午に最も柔らかくなるの?」


「えええ、分析してる……。ルルドナさん、この人変態っす。しかも当たってるっす」

「そうよ、変態よ。覚えておきなさい」


「少しは否定してほしかったけど……、創作家にとって変態は褒め言葉だよ! ともかく、この世界の魔力を利用すれば、きっと面白い創作物が作れるぞ! 異世界創作最高じゃないか!」


「創作の前に借金返済でしょ!」暴走しそうになる俺をルルドナが止めてくれる。


「……そうだった。それで、明日看板を作ってもらうのをマリーさんにお願いしたんだけど、こんな物をもらってきた」月魔力時計。動力源は月の魔力みたいだけど、月の光に当てれば回復していくらしい。太陽電池みたいなものだろう。「かなり高級っすね。マリーさんがそんなものを渡すなんて、よほど気に入らえたんすね」


「そうなの? いつも気前のいい人だと思ってたけど」


「いやいや、普段は厳しいっすよ。店長気に入られたんすね。まあ、店長って、真面目ですし、それなりに顔もいいですし。足とかも鍛えててよく動くし、主婦とかにモテますよ」


「俺ってそうなんだ……。でも既婚者にモテてもうれしくないなあ」「サービスしてくれるんだからいいじゃない」


「うーん、タダより高いものはないって真実だよ。駆け出しのときは嬉しいけどね……」「稼いでからお礼すればいいのよ」


「それより、レンガパン売れて、棚が空になりそうっすよ」「あ」


「棚を空にしちゃいけないわ! 急いで小皿とかすぐに作れるものを! 粘土は取ってきておいたから!」俺はルルドナの心地よいケリを食らって、工房へ向かった。


 **次の日

「よっこしゃー」

「どっこいしょ」

 トンテンカンテン。


 業者たちがきて、通りから見やすいように看板をあっという間に作り上げてしまった。

「ありがとうございます」

「いいってことよ! たっぷり稼いで店舗拡大するときはまた注文してくれよな!」


 業者たちは気前よく、豪勢な看板を作ってくれた。

 ――『ルナクラフィ商会』

 看板に書かれた文字はなかなか様になっていた。(文字は自動翻訳されていく)


 俺はまた、自慢の焼き物にいれた漬物を出す。「気が利くのう! ついでに買っていこうかいな」業者たちが俺の総菜を次々と買っていって去っていった。ついでにスコリィが仕入れたばかりのレンガパンもたくさん買っていってくれた。「わしら今から山仕事じゃけえの。カミさんの弁当じゃ少のうて」


「ありがとうございます!」


 彼らが立ち去ったすぐあと、ルルドナが俺をほめに来てくれた。

「うまいわね。試食させて、味を知ってもらい、たくさん買ってもらう。なかなか良い販売戦略よ」


 朝一にきて朝のうち仕事を終わらせ去っていく職人たちの背中を見ながら、自分の創作物にお褒めの言葉をもらう。


「本当にルルドナは賢くなっているね」

「そりゃそうよ。毎晩、記憶を学習しているの。ディープラーニングよ、ディープラーニング。乗ってるのが巨人の肩じゃなくて、頼りなさげな男の肩っていうのが不安だけど。クタニが忘れてしまったことも私は覚えているわ」


 ディープラーニング、明らかに意味を勘違いしている。

「難しいことはわからないから、代わりに考えてもらおうかな。俺より頭がすっきりしているみたいだし」

「いっしょに、考えるのよ!」俺はまた尻をけられた。


「にしても、異世界って本当にいい人ばかりだね」

 少し離れた位置から、店の看板を見上げ、しみじみという。

「悪いのは転生者ばかりね」ルルドナも同意する。


 今思うと、本当に転生前の世界は殺伐としていた。

 道を歩けばあおられて、駅でちょっと遅れれば怒鳴られて、書類で一文字間違えば賠償金を取られかねない勢いだった。


「て、テンチョー!」

 ――だけど、またしても感傷に浸っている暇もなく、店内から困っている声が響いたのだった。

また助けを求める呼び声できれます。次は何が起こるのでしょう?


一応、看板ができたようです。

看板を掲げるとき、マジで緊張します。3日くらい眠れません。


2025.8.13 主人公の一人称を俺にして、それに合わせて各所書き直しました! タイトル微修正しました!

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