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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第16章 魔女帰省編
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コスプレ魔女は薬のために月をも落とす

魔女のコスプレ魔法を食らって初恋改ざんをされかけたケイロンが怒りくるっているようです。

「うがぁぁぁーーーっ!」

 〈ガリガリガリィーー!〉

 ケイロンが叫びながら背中に仕込んでいた丸薬を噛み砕く。血走った目がギラついていた。


「もうそんなものには騙されない! だいたい、私は男子高出身だ! 女学生に教室で告白されるわけがない!」

 ケイロンの言葉に魔女は目を見開く。

「おや、そうだったか。てっきりその整った顔で女子学生とたくさんの甘酸っぱい思い出を作っていたのかと妄想してしまったよ。……詰めが甘かったね」


「許さん! 絶対に許さん!!」

 もう正気を失ったかのように暴れまわるケイロン。

 初恋を踏みにじられた怒りは凄まじい。顔じゅうの血管が浮き出し、今にも破裂しそうだった。


 筋肉から立ち上る煙を自ら吸い込み、ケイロンの全身が不気味な赤紫色へと染まっていく。


「おや、自分にバーサク魔法をかけてるね。これはいけない。いったん下がろう」

(※バーサク:ここでは、正気を失って攻撃ばかりする状態。魔法攻撃もする。)


 **

 魔女は俺たちを屋敷の中へ入れ、建物全体に結界魔法を施す。

 次の瞬間、無数の弓矢が店を攻撃する。

 〈ズドドドドドドドッ!〉

「な、何事です?」

 台所のイゴラくんが出てくる。ずっとパン作りに集中していたようだ。


 スラコロウは二階で読書中らしい。……この非常時に、あいつ何してんだ。


 魔女が余裕たっぷりに答える。

「いや、何でもない。ともかく食事にしよう。この籠城戦は長くなる。彼も一応、神話級の一族だからね。大丈夫、私の結界はあの程度の攻撃で破られることはない」

 神話級の攻撃をあの程度と断言してしまう魔女はいったい何者だろうか。


 魔女はいつのまにか、メイド姿のコスプレをして、お茶を淹れていた。


「さあ、召し上がれ」

 メイド長コスプレの彼女はお茶を飲み、パンをつまむ。俺たちもメイド姿の魔女につられて同じ動作を繰り返す。


「それより、ルルドナくんの様子は?」


「ずいぶん良いっす」スコリィがお椀の中のルルドナを見ながら言う。

 見ると、顔色もよくなったルルドナが穏やかにお椀のなかに浸かっていた。


「いやはや、かわいらしいね。起きたら必ずコスプレさせよう。しかし……」

「め、目覚めないんですか?」俺が尋ねる。


「目が覚めるかどうかは、……わからない。ただわかることが一つある。きみ、この裏山の土で作ったといったね」

「は、はあ」


「この山……実は、月なんだ」

 俺は、スプーンを止めた。

「……は?」

「いや、あほとか言ったりしないでよ」


 月って。

  あの空に浮かんでる月が、裏山にある? そんなバカな。


「いや、漢方薬作りにはまっていた時期があってね。月の石がほしくなって、一部いただいたんだよ」

「……月の一部を物理的にもらう魔法なんて、……冗談ですよね?」

 月の石を漢方に? そういえば漢方は特別な石を削って薬にするとか聞いたことがあるようなないような。それでも月の石はあまりに規格外。


「魔法が当たり前に満ちていた時代話さ。月を落とすほどの魔法使いは限られていたがね。ともかく、ちょっと月を取りすぎて裏においていたんだ。いつの間にか森になっていたが」


 月を取りすぎたって。山菜じゃないんだぞ。


「ともかくね、クタニくん、キミは月の石という強力な魔力の塊に命を吹き込んでしまったようなものだ。あまりの力に、体が耐え切れず、意識も保てない、と私はふんでいる」

「どう、すれば?」


「この世界では、月は魔力の源。それを発散させるのがいいだろう」

「発散? 強力な魔法を使うとかですか?」


「……それもいいが、私のおすすめは――」

 〈ゴクリ〉

「――コスプレだ」

 結局、コスプレさせたいだけじゃねえか。

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