入学式
「皆さん、お座りください」
そう促され、すべての生徒がおしゃべりを中断し席につく。
「はじめまして、この度一年二組の担任に着任しました。
滝沢美奈といいます」
「これから、皆さんには始業式として、合同体育館に移動していただきます」
「出席番号順に2列に並んでお待ち下さい」
「この後に放送が入りますので、その指示に従ってください」
そう言い残して、滝沢先生去っていった。
「なぁ、担任けっこー可愛くね?」
なんていう会話が後ろの男子から聞こえてくる。
確かに容姿だけ見れば、美人という類に入るのだろう。
しばらくして、放送がなった。
「四高の一年生は、クラス順に合同体育館に移動してください」
話を聞くに、全学園の一年生が合同で行われるのだろう。
いい機会だ、他の学園生徒がどのようなものなのか、とても興味がある。
期待に胸を膨らませ、合同体育館へと向かった。
合同体育館というだけあって、とても大きい建物だ。
一体これを建設するのにいくらかかったのやら。
俺達四高は右端で、そこから順に三高、二高、一高と並ばされた。
そこで俺は隣の三高の生徒をじっくりと観察してみることにする。
「ふむ、なるほどな」
見た目からして、俺達四高より雰囲気がある。
個々の能力で秀でている生徒も多数いるのだろう。
そう考えていると、マイクから透き通った声が流れる。
「みなさん、はじめまして」
「まずはご入学おめでとうございます」
「私、この学園で生徒統括総帥を努めております、
一高の高瀬川菜花と申します」
おぉ....と多方面から男子の声が上がる。
この学園は女子のレベルが高いな....
そう感嘆せずにはいられない。
こういう事を言うのはあまり良くなのかもしれないが、
まぁなんというか大きい。
あれが俗に言う、高嶺の花というやつなのかもしれない。
まぁ俺には関係もなく、縁もないことか。
ただ、あの人の彼氏になる人物がとてつもなく羨ましい.....
高瀬川先輩の挨拶が終わり、次は新入生代表の挨拶だ。
「続きまして、新入生代表の挨拶に移ります」
「新入生代表、一高、一年一組の佐伯陽斗さん、お願いします」
「はい!」
そう言って元気よく返事をして、壇上に上がったのはこれまたかっこよい
男子生徒だった。
とりあえず今の一件で男子のレベルも高いことがわかった。
「暖かく、柔らかい風に包まれ、春に咲く花に命が芽吹き始めました....」
通例なら、新入生代表の挨拶は首席が行うことがほとんどだ。
しかし、この学園は、一高の中で最も優秀な成績を収めたものが、
挨拶を行うというしきたりとなっている。
俺はこの制度に助けられた。
もしここで、俺が挨拶でも行おうもんなら、学園中から注目を浴び、
クラスメイトからも変な目で見られることになるだろう。
そんなことになってしまっては、俺がこの学園に入った意味がない。
そんなこんなで挨拶が終わり、俺達は教室に戻った。
教室に戻ると、すでに滝沢先生がおり、俺達に着席を促す。
「みなさん、入学式お疲れ様でした」
「これからみなさんにはこの学園で過ごすにあたって、最も重要なもの
をお配りいたします」
そう言った滝沢先生の手には、カードのようなものが握られていた。
「こちらは、ペリアスカードといい、中に組み込まれている電子チップにより、
生徒証、キャッシュカード、寮の鍵などの効力があります」
「とても大事なカードですので、絶対になくさないように管理をしてください」
「なお、なくしてしまった場合には罰則が設けられています」
「次に、一人一つずつ、スマートフォンを配ります」
「これは学習に使ったり、連絡を取るなど、自由に使うことができます」
「無論、限度を守って使うようにしてください」
そう言われ、カードとスマホが配られた。
このスマホ、かなりいいやつじゃないか?
流石政府、資金面では問題がないというのか。
「続いて、お金の話になります」
「この島では、一貫してお金はキャッシュカード限定で、ペリアスという単位を 用いて表されます」
「1ペリアスは1円に変換されます」
「毎月のはじめに、スマホにバーコードが送られますので、
そちらをカードにかざしていただけば、入金される仕組みになっています」
「先生、質問があります」
「なんですか」
「これって、他人に取られる可能性があるのではないでしょうか?」
「いい質問ですね、ですがそれらは問題ありません」
「生徒にはあらかじめに、4桁以上の好きなパスワードを設定してもらいます」
「会計のとき、入金のとき、譲渡のとき、それらの場合に必ず入力が必要になります」
なるほど、確かにそれならば盗難の確率は殆ど無いだろう。
脅して取ろうもんなら学園側が動くはずだしな。
「みなさんには現時点で、五万ペリアスが振り込まれています」
教室の各地で、どよめきが起こる。
まぁいきなりご万円もくれるってなったら、驚くはずだ。
実際、俺もかなり驚いた。
「他に質問はないようですので、最後の話に移らせてもらいます」
「最後は、この学園の制度についてです」
みんなが息を呑む音が聞こえる。
そりゃ、みんなその制度のためにこの学園に入ったようなものだからな。
教室の空気が一気に変わり、滝沢先生が話し始める。