新しい生活の始まり
突然だが今の日本の現状を語らせてもらおう。
政治家は汚職を繰り返して私腹を肥やし、人々は自由と平等なんていう
名ばかりの生活をしている。
今を生きる人々は自由でもないし、平等でもないのだ。
そんな日本の現状を変えるべく、国は政府が主導でより優れた人材の
確保を最優先事項とし、学生の能力向上に方針を固めた。
義務教育を離れた高校に目をつけて、離島に埋立地を含めて広大な
土地を作った。
そこには4つの学園が設立されて、そこに試験や面接で選抜された
者たちが送られことになる。
4つの学園は、一高、二高、三高、四高と分けられて存在する。
俺こと、寺本元亜村は四高行きのバスに乗っている。
バスは四高行きの生徒で溢れかえっており、席に座ることのできた俺は
優雅に揺られながら外の景色を眺める。
外には広大な海が見え、水は透き通っていて太陽の光を反射して
キラキラと輝いている。
なんとも美しい景色なんだ。
俺がそう浸っていると、前の方から怒鳴り声が聞こえてきた。
「あぁ!?俺が先に座っていただろうがよ!」
流石に何が起こっているのか気になり、俺は少し席から腰を浮かせて
見ることにした。
怒鳴っているのは金髪であからさまにヤバそうなやつだった。
まぁ俺達が向かっているのは学園でも最底辺の四高、
そういう輩がいてもおかしくはないのだろう。
怒鳴られているのは女子だった。
しかし、女子の方も怯むことなく負けじと言い返す。
「でもこの子は体調が悪いって言ってるんだよ!」
そう聞き、俺は隣の女子を見てみる。
顔色が悪く、汗までかいている。
過度な緊張かはたまた別の理由なのか、なんにせよ体調になんらかの
問題があるのは確かなことなのだろう。
「だからってなんで俺が譲らなきゃなんねぇんだよ!」
「人なら他にも座ってる奴等がいっぱいいるじゃねぇか!」
「でもそこは優先席でしょ!譲るのは当然のことだと思うんだけど!!」
「私は大丈夫だから.....」
体調の悪い女子が仲裁に入るも虚しく、聞く耳を持たない。
言い争いはヒートアップしており、両者とものすごい剣幕だ。
もし俺がそこにいたら、ちびるなり泣くなりしていただろう。
「あ、あの!よかったら譲りますよ」
一人の男子生徒が声を上げた。
「あ、ありがとうございます!」
言い争っていた女子が深々と頭を下げてお礼を言う。
「ちっ!さっさとでてこいってんだ」
そう悪態をついてそいつは寝てしまった。
このバスに乗ってるやつらはあいつと一緒のクラスになんてなりたくねぇな、
なんてことを思っていることだろう。
無論、俺もできればああいうタイプの人間とは関わりたくないわけだが。
そんな一悶着を終え、学園に到着した。
「おぉ.....」
いくら学園の中でも底辺とはいえ、さすが日本政府。
外装はとても綺麗だし、とてもでかい。
学園の外の風景を眺めつつ歩いていくと、気がつくと校舎の入口前まで
ついていた。
入口前には多数の生徒が群がっており、ホワイトボードになにか紙が貼られているところを見るとあそこにクラス分けの紙が貼られているのだろう。
多少強引ながら俺は前に進み、クラス分け表を見る。
えーっと、俺は二組か。
一年生は一番上の5階に教室があるらしい。
校舎内の風景もなかなかのものだ。
クラスに着くと、すでに何人かの生徒が座っていた。
「げ.....」
思わず声が出てしまった。
なぜならバスに乗っていたあの金髪の男が座っていたからだ。
1年は4クラスなので確率は四分の一、まさかあたってしまうとは。
まぁこればっかりは運なので仕方がない。
黒板の端には席名簿が貼ってあり、俺は一番うしろの席だった。
隣にはすでに女の子が座っている。
肩までかかっている銀髪がとても特徴的で、目鼻立ちも整っており
とても可愛らしい少女だ。
当然陰キャの代表であり、コミュ障の権化である俺が喋りかけれるはずもなく、
静かに席につく。
い、いいもん....
これからめっちゃ仲良くなるんだから平気だもん....
地元が近いのか話が合うのか、すでに何人かで固まってグループなどが
できている。
当然、俺に話し相手はいない。
だが、隣の美少女も一人で座っていた。
これはチャンスなのではと思い話しかけてみる。
相手に変な印象を抱かせないように優しい感じで行くか。
「えっと、今暇かな?」
「あ....はい、暇ですね」
彼女はいきなり話しかけられたことに驚いたのか、少し困惑した顔で
こちらを見る。
「別に取って喰おうってわけじゃないから安心して」
「ただ話し相手がいないのも寂しいと思って声をかけたんだ」
「そうなんですね」
「うん、俺の名前は寺本元亜村だ、そっちは?」
「私は神山夢子といいます」
「じゃあ神山さんって呼ばせてもらうね、これからよろしく」
「はい、よろしくおねがいします」
「突然で悪いんだけど、神山さんは勉強は苦手な方?」
「いえ....可なく不可もないという感じですかね」
「どちらかといえば得意な方だとは思いますが」
「そうなんだ」
勉強はできる方だと言っているとは試験の結果はなかなかよいほうなのだろう。
俺は少しこの学園の分け方に不信感を抱いている。
この学園は何を基準にして分けられているのか、学力に自身がある生徒でも
四高に配属されたりする。
ただ単に偏るのを防ぐためなのか、はたまた別のなにかがあるのか。
真相はまだわからない。
そんなことを考えているとチャイムが鳴り、一人の大人の人が入ってきた。