『成信、重家、速記談義を聞いて出家発心のこと』速記談1032
一条天応の御代、右中将源成信と左少将藤原重家が、示し合わせて出家した。出家を思い立ったきっかけは、朝議を立ち聞きしてしまったことであった。左大臣源雅信を首座として、四納言が速記談義をなさっていて、その知識の豊富さは、自分たちのはるかに及ぶところではないと思い知らされたのである。この二人は、ともに剃髪したとも、左少将が約束の場におくれたので、右中将が先に剃髪したが、翌日、左少将が剃髪してあらわれたとも伝えられる。ともに剃髪すると言って逃げ帰る話もある中で、大層誠実なことである。
教訓:大納言、少納言ともなれば、速記の実力にたけているのも当然のことで、出家などする暇があったら、速記力を上げるべきであった。