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宇塚井真帆は魔法使い  作者: ゑゐる
9/50

#09 冒険者ギルド

 ここはバーチェ王国の王都、冒険者ギルド。

 ホールでラキーバ王女とギルドミストレスが話をしている。


 「はい。十日ほど前、この街に巨大なブルードラゴンが現れました。そしてドラゴンは、こう言いました」


 ギルミスは取り出したメモを読み上げる。


 「我は龍神、女神ステラ様の眷属である。お前たちは異世界人召喚の禁忌(きんき)(おか)した。(ゆえ)に我は女神の代行者として天罰を下す。覚悟せよ」


 え? ウチ、初耳なんだけど・・・


 「天罰・・・」

 「ドラゴンは青白い火の玉を(はな)ち、王城と周辺の貴族街が消滅しました」


 え、マジで? 城が消滅?


 「リューガ、紙とペンを」

 「はっ」


 「ミストレス、しばし待て」

 「はい」


 「リューガ、伝書鳩(ハト)を使え、早馬も出せ。今の話、寸分違わず女王陛下にお伝えせよ」

 「御意」


 「今この街を治めている者はいるか?」

 「おりません。役人や警備兵は職務を放棄、一部は街から逃げ出しました」

 「了解した・・・現在バーチェ王国の各街を掌握するために進軍させている」

 「承知しました」


 「今からこの街タウゼンブレッタは、軍の占領下に置く。抵抗する者は厳しく処罰する。よいな」

 「(おお)せのままに」


 なんかすごいことになってきた。


 「まずは、この街に総督府を設立する。敷地の広い適当な建物はあるか?」

 「不動産は商業ギルドの管轄ですので、わたくしがお答えします・・・中央広場近くにいくつかの物件がございます」

 「この目で見たい。ギルドマスター、案内を頼む」

 「かしこまりました」

 「ギルドミストレスも同行せよ」

 「仰せのままに」


 ラキーバ王国の4人とギルドマスター、ギルドミストレスはホールから出て行った。


 「俺は仲間に知らせてくる」

 「オレも」


 話を聞いていた冒険者たちもホールから出て行く。

 ホールにいるのはウチだけになった。


 ウチは巨大な穴が気になる。見に・・・あれ? 登録はどうなった?


 「ウチの登録は、どうなっていますか?」

 「ごめんなさい。これから手続きをします」


 王女様の姿を見たら、呆然(ぼうぜん)とするよね。


 しばらく待っていると扉が開く音がした。

 振り返って見ると、三人の女性が入ってきた。魔法使いかな? カウンターに近づいてくる。


 「私はラキーバの国家魔法士カイア。姫様が来られたはずだけど、ご存知かしら?」

 「はい、王女様は中央広場近くの物件を見に行かれました」


 ナタリーが答えた。


 「わかったわ」


 「カイアさん、バーチェの魔法使いですよ・・・あれが杖? 木の棒にしか見えない」

 「杖も服装もダサい」


 別にダサくないし。小さな声で話しているけどウチには聞こえているよ。


 「私たちはラキーバの白い三連星よ。覚えておきなさい」


 三人は、いずれも銀髪で白い服装、胸に白銀の星をつけている。


 「オルガ、マーサ、姫様のところに行くわよ」

 「「はい」」


 白い三人組は出て行った。

 カイアと言う人はまともそうだけど、他の二人はむかつく。


 「ギルドカードが出来ました。それと、地金を換金したおカネを渡しますが、金額が大きいので応接室まで来てください」


 ウチは応接室に案内された。

 テーブルの上には、大量の金貨と銀貨がある。

 銀の地金は大銀貨8枚と銀貨4枚、(きん)の地金は大金貨30枚、金貨125枚になった。

 大金貨は、ギルドに30枚しかなく、残りはすべて金貨。そのため枚数が多いそうだ。

 すごい大金だと思うけど、日本円でいくらなのか全然わからない。あとで確認しよう。


 「登録料の銀貨1枚を差し引いてあります」

 「わかりました」


 ウチは木製のギルドカードを首から下げて、おカネは収納(ストレージ)に入れた。


 「収納魔法・・・初めて見ました。地金を出したとき、変だと思ったんですよ」

 「この魔法、珍しいですか?」

 「珍しいです。気をつけてくださいね」

 「わかりました」


 ナタリーさんは、冒険者ギルドの基本的なことを説明してくれた。


     *


 「掲示板は頻繁(ひんぱん)に見てください。依頼以外に連絡事項も掲示してあります」

 「はい」

 「以上で登録は完了です。頑張ってください」

 「はい、よろしくお願いします」


     *


 ウチは掲示板を見てからギルドを出た。


 まずは巨大な穴を見に行こう。

 街の中心って言っていたから、外壁とは反対の方向だよね。

 ウチは石造りの街並みを(なが)めたり、お店を素見(ひやか)しながら歩いた。


 おカネの相場がなんとなくわかった。銀貨は1枚1000円くらいで、金貨は1枚10万円くらいだと思う。と言うことは・・・・・・

 ウチが持っているおカネって、4000万円以上・・・

 女子高生が持ち歩くおカネじゃないよね。収納(ストレージ)に入っているから盗まれることはないけど。なんか怖い。


 大きな建物が見えてきた。屋根の上には丸い輪がある。

 建物を鑑定すると教会の礼拝堂だとわかった。

 礼拝堂の入口にも丸い輪のシンボルがある。なんかドーナツみたい。

 信仰の対象はステラさんのはずだよね。ちょっと行ってみよう。


 礼拝堂の前にやってきた。壁がかなり傷んでいる。修理しないのかな?

 中に入っても大丈夫だよね?

 ウチはゆっくりと扉を開けた。中には数人いる。お祈りをしているんのは二人。他の人は掃除をしているかな?

 とりあえず中に入って扉を閉めた。ウチが戸惑っていると・・・

 「お祈りでしたら、ご自由にどうぞ」

 「はい」


 礼拝堂の上から光が差し込んでいる。屋根に穴があいているよ。

 床は歩くとギシギシと音がする。この床、抜けそうだよ。

 天窓のガラスは半数が割れている。


 ウチは中央の通路を奥に向かって歩いた。

 途中で、床を補修したところがあるけど、職人ではなく、素人が修理したみたいだ。


 ウチは女神像の前で立ち止まる。そして見上げる。

 台座の上に、3mくらいでドレス姿の女神像が立っている。やっぱりステラさんだ。

 女神像の後ろにある壁面には金色の大きな光輪が描かれている。


 どうしよう。お祈りした方がいいのかな。でも作法なんて知らないよ。

 適当にやってみよう。

 ウチは女神像の前で(ひざまず)き手を組んで、お祈りをした。

 実際にステラさんの前で、したこと無いけどね。


 ウチはお祈りを終えて立ち上がった。


 「カトリーヌさん、おそうじおわったよ」

 「ご苦労様」


 あんな小さな子が仕事をしているの?

 教会の関係者かな?

 4歳か5歳くらいの女の子が二人、それとカトリーヌという名の16歳くらいの女性が話をしている。


 「礼拝堂の掃除はこれで終わり。休憩にしましょう」

 「うん」


 ウチは三人に近づいた。


 「教会に寄付をしたいのですが・・・」

 「寄付・・・はい、お願いします」


 ウチはカトリーヌさんに大金貨2枚を渡した。


 「大金貨・・・・・・初めて見ました。しかも2枚・・・・・・」

 「受け取ってください」 

 「ありがとうございます」


 「おかね?」

 「そうよ」


 ぐう・・・


 女の子のお腹が鳴った。

 ウチはドーナツが入ったバスケットを取り出した。


 「収納魔法ですか?」

 「はい、そうです」

 「初めて見ました」


 「ドーナツです。食べてください」

 「ありがとうございます」

 「それから、教会をことをウチに教えてください」

 「わかりました、食堂にご案内します」


 ウチらは礼拝堂を出て、孤児院の食堂に向かった。

 孤児院の建物は礼拝堂よりもボロだね。ウチらは、中に入った


 「ここが食堂です」


 部屋の中には三つのテーブルがあります。

 一つだけ小さなテーブルですが、小さな子が使うのかな?


 カトリーヌさんが棚から陶器のお皿を出してくれた。

 

 「カップも四つ出してください」

 「はい」


 手を洗ってほしい。水道ないのかな。


 「皆さん、手を出してください」


 皆さん手を出しました。


 「洗浄魔法(クリーン)


 「まほう?」

 「うん、手がきれいになったよ」

 「すごいね」


 ウチはバスケットからドーナツを取り、お皿にのせた。

 ドーナツは、オールドファッションで黒糖のアイシングを(ほどこ)したもの。

 三人もドーナツを取る。


 ウチは飲み物を出した。

 小さな子供がいるのでお茶ではなく、ホットミルクにする。

 ミルクパンに入ったホットミルクを四つのカップに注ぐ。


 女の子二人は大人用のテーブルだはなく、子供用の小さなテーブルにお皿を運んでいる。

 やっぱりそっちで食べるのね。


 食べる用意が出来た。

 ウチは魔女帽子を脱いだ。


 「女神様に感謝を」

 「めがみさまにかんしゃを」


 三人は手を組んで祈りを捧げます。ウチも真似をした。

 日本の『いただきます』みたいな感じかな?




 ウチらはドーナツを食べ始めた。

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