#05 魔法
ここは天界、女神邸のテラス。
ウチは、これからスマホを充電するために雷魔法を覚えるけど、大丈夫かな?
スマホが壊れないか心配だよ。
ステラさんは立ち上がり、ウチに向かって手を伸ばす。すると・・・
ウチの体に雷魔法の魔力が入ってきた。そしてその感覚を覚える。
「雷魔法の見本を見せるわ」
ステラさんは、金属のインゴットをテーブルに置いた。そして指を近づける。
「火花」
チチチチチチ・・・・・・
指先から青白い火花が見える。静電気みたいな感じかな?
「こんな感じよ、やってみて」
「はい」
ウチは、金属に指を近づけた。
「火花」
チチチチチチ・・・・・・
「うまいわ。そのまま出力を下げて」
「はい」
「もっと下げて」
火花の音が段々小さくなる。
「もう少し・・・それくらいね」
火花は見えず。音も聞こえない。
「その加減が充電に適した出力よ。覚えて」
「はい」
ウチはスパークを止めた。
「次はスマホを鑑定して」
「はい」
ウチはスマホに意識を集中する。
「鑑定」
うわー、めちゃめちゃ複雑・・・
「充電に必要な箇所だけを見て」
「はい」
充電端子の先にあるのが電池だよね。
「それでは充電してみて」
「はい」
充電するのにスパークは変だから・・・
「充電」
うまくいってる気がする。充電していると思う。
「いいわよ、続けて」
「はい」
*
3分後。
「あああ・・・」
無理。
「繊細な魔力操作を続けるのは難しいでしょう?」
「はい、集中力が欠けると出力が安定しません」
「魔法による手動の充電は厳しいわね」
「えー」
「大丈夫よ・・・魔道具を作りましょう」
「魔道具・・・いいですね」
「魔道具を作る前に、二つの魔法を教えるわ」
「はい」
「練金魔法と創造魔法よ」
すごい魔法かもしれない。
ステラさんがウチに手をかざした。すると・・・
ウチの中に魔力が入ってきた。
「説明をするわ。練金は、無機化合物を錬成する魔法なの。砂鉄から鉄を作ったり、砂からガラスを製作出来るわ」
便利な魔法。
「創造は、有機化合物を変形させて、物作りをする魔法よ。布や木の加工が出来るわ」
その魔法も便利そう。
「この銀で練金の見本を見せるわ」
ステラさんは銀のインゴットに手をかざす。
「練金」
銀の一部が液体のように変化してスプーンの形になった。
「すごい」
「やってみて」
「はい」
ウチは銀のインゴットに手をかざす。3Dプリンターの要領で・・・
「練金」
少し時間はかかったけど、イメージ通りに出来た。ウチが作ったのはフォーク。
「うまく出来たけど、それは何かしら?」
「フォークです。食事の道具です」
「料理を刺して食べるのね」
「はい、熱いものでも平気です。それに手が汚れません」
「便利そうね」
ウチはフォークをもう1本作ってステラさんに渡した。
ステラさんはフォークを受け取り、今度は木片を出した。
「今度はこの木で何か作ってみて」
「はい」
ウチは木に意識を集中する。
「創造」
ん? 難しい。変形させるより、削った方が早いかな。
ウチは一組の箸を作った。断面は五角形。
五角形箸は日本で買うとめちゃめちゃ値段が高いんだよね。
箸は出来たけど、テーブルの上が大鋸屑だらけになったので、ストレージに入れてきれいにした。
「それは何かしら?」
「箸です。これも食事の道具です」
「使いにくそうね」
「慣れたら便利ですよ」
「そうなの?」
高級な箸を自分で作った。なんかうれしい。
「練金と創造を覚えたので、今度は魔道具を作りましょう」
「はい」
魔道具を作るのは楽しそう。
「魔道具はゼロから作るよりも、似たような物を改良した方が早いわ。まずはアーカイブで魔道具を検索してみて。雷魔法は数が少ないはずよ」
「はい・・・アーカイブ、検索」
雷魔法の魔道具・・・・・・あった。
電撃を放つ魔道具、スタンガンみたいなものかな。出力を下げれば使えるかも。
「魔道具を作る前に、これを渡しておくわね」
ステラさんが色々と出した。
「これはミスリルで出来た金属板、魔導回路よ」
ミスリルって、ラノベに出てくる異世界金属だよね。
「魔導回路が足りないときは、自作してね。アーカイブの情報と創造魔法で作れるわ」
「はい」
「この袋に入っているのが魔石よ」
「これが魔石・・・きれいですね」
透き通ったルビーのような色。赤いビー玉みたい。たくさんある。
「まずこの魔導回路に魔法陣を転写する。そしてこの台座に魔石をはめ込む。あとは必要に応じて付属品を取り付ける。それで完成よ。出来れば箱に入れた方が見栄えがいいわね」
「わかりました」
ウチは魔導回路を一つ受け取った。
魔導回路は、青みがかった金属板で、大きさは5cmの正方形。
「私が魔道具作りの見本を見せるから同じようにやってみて」
「はい」
「最初にアーカイブから使いたい魔法陣を光魔法で回路に転写するの」
「はい」
「アーカイブ・・・・・・転写」
魔導回路に光る魔法陣が転写された。
「光転写は光魔法の応用だから、出来ると思うわ。やってみて」
「はい・・・アーカイブ・・・・・・転写」
出来た。魔法陣が光ってる。かっこいい。
「あとは魔法陣を鑑定すれば、改良する箇所がわかるはずよ」
「はい・・・鑑定」
ウチにも理解できる。すごい。
ここはラインを2本追加して・・・ここはラインを削除・・・ここを繋いで・・・
これで出来たはず。
「魔法陣が出来たみたいね。この魔石の台座にはめて作動確認してみて」
「はい」
ウチは魔石をはめ込んだ。すると・・・
魔法陣が明滅して、魔石がぼんやりと虹色に光った。
きれい。