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宇塚井真帆は魔法使い  作者: ゑゐる
4/50

#04 天界

 ここは・・・客室・・・だよね?


 演劇の幕間(まくあい)で召喚されて、異世界へ・・・

 そして今は天界にいるんだよね? 夢じゃないよね?


 外は・・・少しだけ明るい。もうすぐ夜明けだよね。

 ウチ、魔法使いの格好でそのままベッドで寝ちゃったみたい。ブーツも履いたままだよ。

 汚しちゃったかな?


 「清浄(クリーン)


 これできれいになったはず。


 まずはトイレ・・・


     *


 ここのトイレも丸い穴だけのトイレだった。

 鑑定したら仕組みがわかった。魔道具だ。


     *


 トイレから出たあと、お風呂を見る。

 バスタブがあるだけでシャワーは付いていない。お湯は魔道具で出すみたい。


 次は備え付けのキッチンも見てみよう。

 コンロは魔道具。ここでは電化製品の代わりに魔道具を使っているらしい。

 ステラさんに魔道具の作り方も教えてもらおうかな。


 食器は・・・・・・戸棚の中にあった。調理道具もある。

 冷蔵庫は・・・・・・ない? 食材ないのかな?

 ダイニング横のキッチンに行けば何かあるかも。行ってみよう。


     *


 ダイニングに入ると自動で照明がついた。魔道具だけど、なんかハイテク。

 メイドゴーレムに聞いてみよう。


 「食材ありますか?」


 返答はないけど、動き出した。ウチもついて行く。


 「ここ?」


 壁? 戸棚かな? 取っ手がない。どうやって開けるのかな?

 (さわ)れば開くのかな? 触ってみよう。


 あ、これストレージだ。

 食材、調味料、調理道具、食器などが入っている、いわゆるパントリー。

 あとはレシピを検索してみよう。


 アーカイブ、レシピ、検索・・・


 んー、微妙なレシピが多い、焼くとか煮るとか。

 でも美味しそうなレシピもある。でもあまり普及しいないみたい。

 情報通信の未発達な上、レシピは秘匿されていることが多いらしい。

 宮廷料理や貴族の秘伝料理、先代から伝わる伝統料理、一部の集落で食べられている郷土料理など。

 それらは客をもてなす特別な料理で、レシピは門外不出になっている。

 広く知られてしまえばありふれた料理になるよね。


 レシピの具体例は、カツレツ、パンケーキ、プリンなどのレシピが宮廷料理にあった。

 スパゲッティは無いが、ショートパスタにソースをかけた郷土料理はある。

 水で溶いた小麦粉に具材を混ぜて焼く、お好み焼きモドキの家庭料理や米を使った料理、ピラフなども存在する。


 ステラさんは普段何を食べているのかな?

 しょうがない、何か適当に作ろう。


 ウチはパントリーから色々出して調理を始めた。

 2体のメイドゴーレムがこっちを見てる。顔はないけど、なんかやりにくい。調理を学習しているのかな?


     *


 大体出来た。料理は自分のストレージに入れた。

 あとはコーヒーが飲みたい。パントリーにあるかな?


 あった・・・でもこれ、いわゆるコーヒーチェリーだ。焙煎(ばいせん)していない。

 紅茶にしよう。

 ウチはホットミルクを茶葉に注ぎ、紅茶を()れた。


 「おはよう、マホ。いい香りね」


 ステラさんが起きてきた。


 「ステラさん、おはようございます」

 「自分で朝食を作ったの?」

 「はい、一緒に食べますか?」

 「頂こうかしら」

 「いま準備します」


 あとはパントリーからフォークを出して・・・あれ? 無い? スプーンはあるけど。


 「ステラさん、フォークはどこですか?」

 「ふぉーく? 何のことかしら?」


 まさかフォークがない? 異世界ならあり()る。


 「スプーン以外に食事の道具はありますか?」

 「・・・ないわね。いつも手で食べているわよ」


 やっぱり・・・しょうがない、ウチも手で食べよう。


 「朝食はテラスにしましょう」

 「はい」


 テラスに行くと、ステラさんがテーブルとイスを用意してくれた。

 庭園を眺めながらテラスで朝食、なんかオシャレ。

 ウチはテーブルに料理を出す。


 朝食のメニューは、フレンチトースト、ベーコンのソテー、キャッサバの素揚げ、サラダ、ミルクティー。


 「美味しそうね・・・食べましょう」

 「はい・・・いただきます」


 「自分で作ったのに、気を使う必要はないわよ」

 「日本ではいつもこうしてます」

 「そうなの?」

 「はい、調理した人や、農家、お店、(かて)になる生き物に対する感謝の言葉です」

 「感謝の言葉・・・」

 「食後は、ごちそうさまと言います」

 「すばらしいわ。それなら私も・・・いただきます」


 ぱくぱく・・・


 「私はお茶から・・・」


 ごくっ。


 「美味しい・・・ミルクで()れるお茶ね、考えたこともなかったわ」

 「地球では、わりと普通の飲み方です」


 ぱくぱく・・・


 「卵を付けたパンも甘くて美味しいわね」

 「ウチも好きです。地球では朝食によく食べます」


 ちなみにパンはバゲットを切ったもの。


 「ベーコンの調理法は普通だけど、このお芋を揚げた料理は初めてね」

 「実はウチも初めて食べました」

 「そうなの?」

 「はい、モチモチして美味しいですよね」


 日本ではキャッサバがあまり流通していないから、食べてみたかった。

 キャッサバがあれば、ウチの好きなポンデケイジョやタピオカが作れるので、楽しみ。


 「この野菜は火を通していないのよね?」

 「はい・・・生野菜は食べませんか?」

 「下界で生野菜を食べる習慣はないわね、食中毒の可能性があるから」

 「なるほど」


 今回のサラダは、レタス、トマト、玉ネギ、キュウリ、チーズを使ったレシピ。

 マヨネーズはないので、オイル、ビネガー、塩コショウで味付けをした。

 でも、(じか)に手で食べるのがものすごい違和感。クリーン魔法で手をきれいに出来るから問題ないけど。


 「ステラさんは普段どんな料理を食べているんですか?」

 「最近は料理していないわね。いつも世界樹の実を食べているわ」

 「そうですか・・・それならここでお世話になっている間はウチが料理を作ります」

 「お願いするわ。他にも地球の料理たくさんあるのよね?」

 「はい」

 「楽しみね」


 ウチの趣味は料理だけど、普段料理をするのは母なので、ウチが作るのはお菓子ばかり。

 でも、ネットで気になったレシピはスマホに保存している。

 レシピはたくさんあるから問題ない。


 そうだ、スマホ・・・

 電池がそろそろなくなる。魔法で充電できないかな?

 食事が終わったら、ステラさんに聞いてみよう。


     *


 朝食が終わった。


 「ごちそうさまでした」

 「ごちそうさま、美味しかったわ」

 「ありがとうございます」


 「ところで、これから魔法を教えるつもりなんだけど、どうかしら?」

 「はい、お願いします」


 ウチは清浄魔法(クリーン)で食器をきれいにした。これも魔法の練習。

 食器はメイドゴーレムが片付けてくれた。

 ウチはストレージから魔女帽子を出してかぶった。


 「最初の魔法は何がいいかしら?」

 「教えてほしい魔法があります」

 「何の魔法?」


 ウチはスマホを取り出した。


 「これを充電したいです。魔法で出来ますか?」

 「じゅうでん? 手に持っているのは何かしら?」

 「スマホです」

 「ちょっと見せて」


 ウチはスマホをステラさんに渡した。


 「鑑定(アプレイソル)・・・・・・すごいわ、これが地球の技術なのね・・・」


 ステラさんはスマホを凝視(ぎょうし)する。


 「解析(アナライズ)・・・・・・繊細で精密、精巧で緻密、工芸品というよりは、芸術品ね、すばらしいわ」


 ステラさんの解析は続く。


 「この機械の中を流れているのが電気、そして動力の源がここね・・・もうちょっと見せて」

 「はい」

 「この機械自体もすごいけど、それを動かす命令書と術式がすばらしい、感激だわ」


 命令書? 術式? OSとアプリのことかな?


 「ありがとう、返すわ」


 ウチはスマホを受け取った。


 「すばらい技術ね。魔力で作動する魔道具とは設計思想が違うけど、魔道具製作の参考になったわ。これを作った人は天才ね」


 最初にスマホを作った人は天才です。ライフスタイルが一変(いっぺん)したからね。


 「充電出来そうですか?」

 「やってみましょう。まずは雷魔法から教えるわ」

 「はい」




 ウチは、スマホを充電するため、雷魔法を教わることになった。

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