第96話 出現! 恐るべき敵プラネットブレイカーズ!!
暗い宇宙の中を並んで飛ぶ私とルビィ。
私の通った軌跡がキラキラと輝き軌跡を残していく。
それはまるで流れ星のよう……、なんてね。
「ところでシャイニーフェニックス、君に一つ言っておかなければならないことがあるんだけど」
「ん? なぁにルビィ?」
私の横を飛びながらそう少し真剣な様子で話しかけてくるルビィに私はそう問いかける。
「宇宙空間でなら君はフルパワーが出せるけど、あまりやり過ぎないように気を付けてね」
「フルパワーを出すと何か問題があるの?」
「それは地球上で出せるのとは比べ物にならないくらいにとてつもないパワーなんだ、当然それだけ制御も難しい、下手をすれば守るべきコロニーや地球、君自身なんかも壊してしまかねないからね」
「ええぇ? そ、そんな凄いの……?」
私は、流石に大げさでしょ……とルビィに答えようとするが、ルビィの表情を見てそれが冗談や大げさな話ではないと悟る。
「まず宇宙空間なら超光速戦闘が行える」
「ちょ、超光速?」
ルビィのその言葉に私は思わず驚きの声を上げる。
「こ、光速って、あれだよね、光の速さの……」
「そうだよ、その光速」
私の疑問にルビィはあっさりとそう答える。
いやいやいやいや、そんなあっさり言われても……。
「そんな……黄金じゃあるまいし……」
「黄金……?」
「ああ、いやいや、なんでもないの、気にしないで」
思わず出てしまった私の独り言にルビィが反応するも私は両手をパタパタと振って誤魔化した。
蘭ちゃんやワンチャン翔くんになら通じるかもしれないけど、流石にルビィには通じないだろう。
それにしても、超光速かぁ……。私は自分が持つ超絶パワーを想像しゴクリとつばを飲む。
というかさ、私って見習い宇宙戦士なんだよね? ということはだよ、正規の宇宙戦士や、その中でもエリートである上級宇宙戦士はもっとすごいことが出来るってことだよね?
その時点で恐ろしいのだけど、それよりもっと恐ろしい事実に気づき私は戦慄する。
そんな宇宙戦士たちを数千人単位で擁するS.P.Oの力をもってしてもなお、ギーガーク帝国の侵攻を食い止めるのがやっとなのだ。
そのギーガーク帝国が本腰を入れて地球攻撃を開始したら……、一体どうなるの……? 私は思わず身震いする。
(ほ、本当に私だけなんだ……地球では、あいつらに対抗できるのは……)
そう考えると自分の力に怖気づいてる場合じゃない、一日も早く完全に制御できるようにならなきゃ。
私は改めてそう決意するのだった。
ともかく、そんな会話をしながら宇宙空間を飛ぶ私たち。
光速飛行可能とは言っても当然それなりにエネルギーは使うわけで、これから謎の集団と一戦交えようというのに余計なエネルギーを消費するわけにもいかないわけで、スピードを抑えつつも目的地に向かって飛ぶことしばらく、私たちはようやくコロニーが視認できる位置までやってきた。
「宇宙から見た地球も迫力あったけど、あれもすごい迫力。まだ結構距離があるはずなのに、それでもこんなに大きく見えるんだもん」
目的の宇宙コロニーはシリンダーのような形状をした巨大な人工建造物で、その大きさは直径にしておよそ40kmほど。
回転による遠心力でコロニー内の環境を地球と同じに保っているという代物だ。
なんてちょっと偉そうに解説なんてをしてみるけど、あくまでちょっと聞きかじった程度の知識だからこれ以上は勘弁してほしい。
「あそこが目的地のコロニーだよね、ルビィ」
私がそう問いかけると、ルビィは頷く。
「そう。敵集団はあの内部を占拠してるみたいだね。とりあえず外には敵の姿は見えないけど、油断は禁物だよ」
「うん……わかってる。今は見えなくても間違いなく敵はいるんだもんね……! ここからはさらに慎重に行こう」
ルビィに答え私はさらにスピードを落とすと、ゆっくりとコロニーに近づいていく……。
「ん? 今、何か、光ったよう――って、えええええ!?」
私は思わずそんな声を上げてしまった。だって、今私たちの頭上をビームのようなものが通過したんだもん……!
「コロニーからの攻撃だ! おそらく敵が防衛装置の制御システムを乗っ取ってこちらに攻撃を始めたんだ!」
「えええ!? そんなのアリなの!?」
私は思わずそう叫んでしまう。だってさ、それってつまりは敵の手に落ちたってことだよね?
まさか、コロニーそのものが敵になっちゃうなんて……。
「狼狽えないで! あんなの大したことないよ、あくまで地球の技術で作られた兵器だからね。回避は余裕だろうし、仮に直撃を受けたところで大したダメージにはならない」
「そうは言っても……って、また来た!」
ピシュンピシュン! と周辺情報から再生された音が私の耳に届く。音の伝わらない宇宙空間だけど、このSPスーツにはそういう機能も備わってるのだ。
音というのは戦闘においても重要な要素だからね。しかし、そのせいで臨場感も増してしまうわけだけど……。
「よっ! ほっ! はいっ!!」
飛び交うビームの雨あられ、私はそれをひらりひらりとかわしながらコロニーへと接近していく。
「おっと、バリア!」
躱しきれなかった分はバリアで防御、そのままコロニーに最接近した私はビームを乱射する発射装置に向けて指を二本突き出し叫ぶ。
「ファイアショット!」
真空の宇宙で火炎弾を撃ち出すこの技が使えるのかと疑問に思う人がいるかもしれないけど、この技の炎ではなく熱エネルギーを撃ち出す技なのだ。
大気中で使えばそれが空気との摩擦熱で燃え盛る炎となるけど、真空の宇宙空間ではその熱エネルギーがそのまま撃ち出される。
そんなわけで、何の問題もなく撃ち出された熱エネルギーの弾丸が発射装置に直撃し、装置は爆発を起こし破壊される。
「よしっ!」
グッと拳を握る私だったけど、考えてみればこのコロニー自体は地球のもので、それを敵組織が乗っ取ってるだけなんだよね……。
防衛装置破壊しちゃったよ……よかったのかな、これ? いやでも、今は緊急事態だし……。
そんなことを考えつつ思わず腕を組む私だったけど、ルビィの発した「危ない! シャイニーフェニックス!!」という声にハッとして顔を上げる。
その瞬間、バチーン! という骨を通して伝わる音と激しい衝撃!
「ひああああっ!」
何かによって吹き飛ばされ私はぐるぐると回転しながら宇宙空間を吹っ飛んでいく。
大気がないせいで速度の減衰がない、このままだと何かにぶつかるまで際限なく飛ばされちゃう!!
「ちょちょちょちょちょ! 待って待って待ってってば!!」
私は慌ててエネルギーを放出しブレーキをかける。
すると私の体は徐々にスピードを落としていき、やがてピタリと静止したのだった。
「あー、もう、宇宙って大変!」
愚痴を言いつつ私はホッと胸を撫で下ろすと改めて自分を吹き飛ばしてくれやがった何かのいる方向をキッと睨みつけた。
「あ、あれは……!」
そこにいたのは、30メートルほどの大きさを誇る巨大な人型ロボットだったのだ!
地球にはまだこんなロボットを作る技術はない――あ、いやどっかの超天才はロボット作ってたけどそれは例外中の例外ってことで。
とにかく、こんな巨大な人型ロボットなんて地球には存在しないのだ。
つまりこいつは、コロニーを占拠した敵組織の繰り出してきたロボットということ。
「シャイニーフェニックス、大丈夫?」
「ああ、うん。平気。それより……」
こちらまで飛んできたルビィに答えると私は再びロボットへと視線を移す。
「防衛システムが破壊されたので迎撃に出て来てみれば……貴様のような小娘とはな。生身のようにもみえるが、何者だ?」
頭の中に声が響いてくる。どうやら目の前のロボットからの通信みたいだ。
「私の事知らないの? まあいいわ、聞かれた以上は名乗ってあげましょう」
私は不敵に笑うと、その場でくるっと一回転をしポーズを決めつつ名乗りを上げる。
「転生の炎は悪を焼き尽くす正義の業火! シャイニーフェニックス!! 宇宙のステージに華麗に参上!!」
ババーン! そんな効果音がつきそうな勢いで私はポーズを決める。我ながら決まった!
「シャイニーフェニックス……。ほう、貴様が噂に聞く地球の宇宙戦士というわけか。女とは聞いていたがまさかここまで幼い小娘だとはな」
私の名乗りを聞いたロボット(のパイロット)はそう言うとフンと鼻を鳴らす。
「悪かったわね、まだ子供で」
私はそう言って頬を膨らますけど、すぐに首を振って気を取り直す。
「こっちが名乗ってあげたんだから、そっちも名乗りなさい。まあ、どうせギーガーク帝国でしょうけど」
私が指突きつけながら問いかけると、ロボットは、「ギーガーク帝国だと?」とどこか不快そうな声で言う。
「え? 違うの?」
「あんな連中と一緒にしないでもらおうか。我らは『プラネットブレイカーズ』だ!」
「プ、プラネットブレイカーズだってぇ!?」
ロボットが名乗り上げた組織名に、ルビィが驚きの声を上げる。
「知ってるの? ルビィ」
「プラネットブレイカーズ――その名のごとく様々な星を渡り歩き破壊して回るという最悪の犯罪集団だよ……。規模的にはギーガーク帝国よりはるかに小さいけど、支配を目的としてる奴らと違ってこっちは破壊そのものを目的としてる分厄介度はギーガーク帝国以上だよ」
「破壊を……目的?」
「その通り! そして私はプラネットブレイカーズの戦闘隊長<コーワス>だ!!」
「コーワス、ね。どうやらとんでもない奴らが出てきちゃったみたいね……」
「我らのリーダーが次の目的として地球の破壊をご所望でね。その第一歩としてまずこのコロニーを破壊しに来たというわけだ」
「破壊が目的なら何故わざわざ占拠したんだ!?」
コーワスの言葉にルビィが疑問の声を上げる。確かに……破壊だけが目的なら、外からビームでも撃ち込めばいいだけの話だ。
……こっちとしてはやられなくてよかったけど……。
「我らの目的は破壊、だが真の目的はその破壊の際に発生する混乱と恐怖、絶望に歪む人々の顔を見て楽しむことにある。このコロニーにはすでに爆弾が仕掛けてある、拘束した連中の目の前にな。目の前で爆弾のカウンターが進んでいくのを見れば、地球人は恐怖し絶望するだろう? それこそ我らが求めているもの」
「な!? なんて奴らだ!」
コーワスの言葉にルビィが怒りの声を上げる。私も思わず歯ぎしりをしてしまう。
本当にとんでもない奴ら……確かにギーガーク帝国以上だわ……。
「貴様がここに現れたのはある意味僥倖! 助けに来た宇宙戦士が無残に散って行く様を見せられれば地球人共はさらなる絶望に叩き落とされるだろう!!」
そう言って高笑いするコーワス。……こいつ、完全に狂ってる……!!
今までとは違う狂気をその身に宿した敵の出現に、私は戦慄を覚えるのだった――
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