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シャイニーフェニックス~落ちこぼれ少女のヒーロー奮闘記~  作者: 影野龍太郎
第12章【飛べ宇宙へ! コロニー爆破5秒前!!】

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第93話 みんなの願い、星に届くかな?

 うーん……と、目の前の机の上に置かれた短冊を前に私は頭を悩ませる。


 どんな願いを書くべきか迷っているのだ。


 飾れる短冊は一人一枚のみ、一枚に複数の願いを書くことは出来るけどそんなことをして願いが叶うはずもない。


 となると、願いは一つだけに絞りたいところだけど……。


「む~ん」


 私は短冊を前に腕を組み唸る。


 こうなってくるとますます何を願うべきか悩んでしまうのだ。


 何しろ私には叶えたい願いがそれこそ星の数ほどあるのだから。


 今度のテストでいい点が取れますようみたいな小さなものから宇宙平和という途方もなく大きなものまで。


「平和とかそういうのは却下かな。ああいうのは願うんじゃなくて一人一人の努力で勝ち取るものだと思うし」


 呟き私はさらに考える。そういう考え方で行くなら努力で叶いそうなもの、叶えるべきものに関しては願い事候補から外していかなきゃいけない。


 努力なんかでは叶えられない、そして今一番私が叶えたい願い……。


 ――今日は七夕、愛し合う二人のための日……。


 【会いたい】ただ一言だけ書いてみる。しかしハッと我に返ると、私はキョロキョロと周囲を見渡した。


 流石の翔くんたちも人の願いを盗み見るようなデリカシーのないことはするわけもなく、そもそも自分たちの願いで精一杯なのだろう、私の書いた短冊なんて見向きもしていない。


 なんとなく安堵のため息を吐きつつ私は【会いたい】の文字を見ながら苦笑する。そして、文字の前に【仮面ファイターに】という一文を書き加えてからそれを手に取り笹飾りに向かって歩き出した。


「こんなこと書いてるの知られたら笑われちゃうって……」


 大丈夫だって、そう約束しましたもんね……?


 暮れかけた空に向けて問いかけながら、私はそっと笹飾りに短冊を括り付けた。




「で、みんなはどんな願いを書いたわけ?」


 最後の一人であった私がみんなのところに戻ったタイミングを見計らい、文乃(あやの)ちゃんがそう切り出した。


 その瞳は好奇心にキラキラと輝いている。流石は新聞部のすっぽん娘、他人の願いが気になるらしい。


新部(にいべ)~、お前なぁ……」


 翔くんが呆れた声で言う。まあ、確かにいきなりみんなの願いを聞こうとするのはマナー違反だよね……。でも文乃ちゃんは全然気にしてない様子でえへへと笑う。


「いいでしょう、気になるのよ! それとも何? 言えないような願いを書いたの?」


「そう来るかよ、だけど残念ながらオレのはそんな大した願いじゃないぜ? あれだよ、あれ」


 翔くんが指差す先では彼が書いたと思しき短冊が揺れていた、そこには【今度の大会で優勝できますように】と書かれていた。


「そう言えば野球大会が近かったんだっけ。まあ、氷川くんらしいと言えばらしいけど、つまんないなぁ」


「あのなぁ」


 文乃ちゃんのあんまりと言えばあんまりな物言いに、翔くんは呆れたようにため息を吐く。


「智子のもなんというか、想像がつくのよね~」


「へぇ? じゃああたしがなんて書いたのか当ててみなさいよ。当てられたらなんかおご――」


「ゲームの大会で勝ちたいでしょ?」「ゲーム大会に優勝したいでしょ?」「どうせゲームのことだろ?」「ゲームのこと!」


 智子が言い終えるより早く、私、文乃ちゃん、翔くん、そして(よう)くんまでもがそう声を合わせていた。


 ゲームクイーン森野智子がそれ以外の願いを書くなんて考えられない! 奢りは貰った!!


 そう会心の笑みを浮かべる私だったが、智子はクイッとメガネの位置を直しながら、


「残念でした。あたしの願いはゲーム大会で勝つことじゃないわ」


 そう言ってフフンと鼻を鳴らす。


「そんなものはわざわざ願わずとも叶うわ。このあたしにかかればね」


 うっ、なんという自信!


「くぅっ、まさか外れるなんて……! でも、それならどんな願いを書いたの?」


 唇を噛みしめながら訊ねる文乃ちゃんに智子はあっさりと答える。


「もちろん、素敵な男性との出会いに決まってるじゃない!!」


 あっ、しまったああああ!! ここ最近智子が男の人との出会いに情熱を傾けているのは私は知っていたのに、つい失念していた!


 くっそ~、智子からの奢りをゲットするチャンスが……!


「ドヤ顔で言うようなことなの、それ……?」


 自分のミスに頭を抱える私を他所に、文乃ちゃんが呆れた声で言う。


「ま、まあ、そうかもしんないけど、こればっかりは努力じゃどうしようもないし……。それよりあんたの願いはどうなのよ、人にばっかり聞いてないであんたがなんて書いたのかを教えなさいよ」


「いいわよ。だけど私が書いたのはそれこそ意外でも何でもない願いよ。スクープをゲットして世界一のジャーナリストになれますようにってね」


「へぇ~、なるほど、そう」


「な、何よその反応は……!?」


「いえね、あたしはてっきりあんたは別のこと書いたんじゃないかな~って、思ったもんだから」


「は?」


 首を傾げる文乃ちゃん、智子はそんな彼女の肩に腕を回すと、小声で囁く。


「氷川くんとのことを書けばよかったじゃない? 実は今あんたにとってチャンスなのよ? 何しろみうは……」


「こらっ、そこ! 何をこそこそ話してんの!?」


 聞こえてきた会話に私は思わず声を荒げる。


 智子ってば、文乃ちゃんに何を話すつもりなのよ!


 どうも智子は私に関するあることに関して妙な誤解をしているようだから、あまり変なことを言わないで欲しいんだけど……。


 幸いというべきかなんというか、文乃ちゃんは翔くんの話を出された時点で顔を真っ赤に染めていたから、智子の話の内容までは聞いていなかったようだ。


「なんだよみう、急に大きな声出して……」


「いいから、翔くんは気にしないで。それより陽くんにも聞いてあげましょ!」


 話を逸らすべく私が言うと全員の視線がニコニコと私たちのやり取りを聞いていた陽くんへと向けられる。


「ボク? ボクはねぇ、あれ!」


 そう言って彼の指差す先に掛けられた短冊にはこう書かれていた【毎日お祭りやりたい!】。


「あっはっはっ、毎日か! どうやら陽は相当な祭り好きらしいな!」


「ふふ、陽くんらしいわ」


「ううっ、可愛い。ヤバイって、あたしそっちに目覚めちゃいそう……」


 翔くんと文乃ちゃん、智子が三者三様の反応を見せる。


「えへへ、毎日お祭りやったら楽しいでしょ?」


 そんな陽くんの無邪気な発言にみんながもう一度笑ってこの話題はおしまい……とはならないよね、やっぱり……。


「で、あんたは?」


 案の定、私の願いを聞く流れになってしまった。


 一応カムフラージュの一文を付け加えたわけだし、教えてもいいんだけど、変に突っ込まれたらボロが出ちゃいそうな気がする……。


 しかし、私が口を開くよりも早く翔くんが「待てよ」と片手を上げて制した。


「オレがこの無数の短冊の中からお前が書いたものを見事当てて見せるぜ」


 そう言うと翔くんはこっちのことはお構いなしで巨大笹飾りを上から下まで舐めるように見渡し始める。


 巨大笹飾りを彩る無数の短冊には様々な願いが書かれている。


【家内安全】【健康祈願】【世界平和】といった定番のもの、 【彼女ができますように】とか【宝くじが当たりますように】といったちょっと俗っぽいもの、【俺の歌を世間に認めさせたい】【アイドルになれますように】みたいな夢系などなど。


【この世から男という生物が消え去りワタシ好みの美少女だけが残りますように】なんて危ないことが書かれてるものや【あの子が早くて目を覚ましてくれますように】という深刻そうなものまであったりして、本当に様々だ。


 ……ん? その中の一つが目に留まった。


【超天才であるアタシの才能が埋もれることなく世に認められる日が来ますように】


 あ、あれって……。そっか、そうだよね……科学的な割にこの手のイベントも好きだったね。


 隣町から来てたんだ、蘭ちゃん……。


 誰が書いたのか丸わかりのその短冊に私が思わずため息を吐いた丁度その時、「これだ!」と翔くんが短冊の一つを指差した。


 そこにはこう書かれていた、【魔法少女になりたい】。


「どうだ、当たりだろ!?」


 得意満面の顔で問いかけてくる翔くんに私は首を振る。


「違うけど?」


「な、何っ!? 幼児が書いたにしちゃやけに字が綺麗だし、こんな願いを書くのはてっきりお前だけだと思ったのに……」


 ショックを受けたような様子の翔くんを尻目に私はその短冊に視線を向ける。


 確かに、しっかりと漢字が使われてるし、字も綺麗でとても子供が書いたものとは思えない。


「違うよ、そもそも私、魔法少女になりたいなんて思ってないもん」


 私の発言に智子以外の二人が心底驚いたように目を見開く。


「え? だってお前……。いつも言ってるじゃねーか、ヒーローになりたいって」


「ヒーローと魔法少女は違うでしょ……」


 呆れた口調でそう言った私に、翔くんは納得いかないといった顔で首を傾げる。


「違う? でも、ほらプチピュアとか……」


 ピクッ……。翔くんの発した言葉に私の眉が僅かに動いた。


 智子は「あちゃー」みたいな顔で額に手を当てている。


「よく間違える人がいるけどねぇ! プチピュアは変身ヒロイン! 魔法少女とは似て非なる存在なの! わかった!?」


 私は翔くんをビシッと指差しながらそう叫んだ。すると、彼は「お、おう……」と気圧されたように頷く。


「そもそもね、魔法少女っていうのは――」


「……」


「――シリーズっていうのがあってそれが――」


 懇々と語る私とげんなりとした表情でそれを聞いている翔くん、その時横から智子が口を挟んできた。


「氷川くん、幼馴染のあなたでも知らなかったのね。みうって、この件に関しては凄まじく面倒くさい子なのよ」


「智子! あなただってロールプレイングゲームのことをRPGゲームって言われると怒るでしょ!? それと同じことなのよ!」


「うっ、それは、ねぇ……。だってRPGゲームってどう考えてもおかしいじゃない、ロールプレイングゲームゲームって何よ」


 あまり人前では見せないけれど、私も智子も自分の大好きなものに関しては譲れない、オタクの面倒くさい部分を持っている。


 それは決して悪いことじゃないと私は思う、むしろ誇るべきことなんじゃないかとも……。


「ともかく話を続けるわよ、えーと、どこまで話したっけ? 確かセーラー――」


「ああもうっ、わかったわかった! オレが悪ぅございました!」


 翔くんが降参とばかりに両手を挙げた。


 むぅ、仕方ない、ここまで言われちゃったらやめるしないなぁ、こっからさらに色んな方面と話を絡めていよいよプチピュアの歴史に迫ろうかと思ったのに……。


「ねぇ、もういいでしょ? 短冊は飾り付けたんだしさぁ、屋台の方に戻ろうよ?」


 私がそんなことを考えていると、陽くんがそう提案する。


 もう、この子ってば、私も大概だと思ってたけど、完全に花より団子ね。


「よーし! いいぞ! オレが奢ってやるぞ!! 今すぐ行こう!!」


 とりあえずこの場から離れたいらしい翔くんがそう言って陽くんの手を引っ張る。


「わーい! 翔平くん、ボク、君の事大好きになっちゃいそ~」


 去って行く二人の背中を横目で見つつ私は智子や文乃ちゃんに顔を向けた。


 智子はひょいと肩をすくめ、文乃ちゃんは苦笑する。


「あたしたちも行こっか」


「うん」


 そう言い合い私たちは翔くんたちを追うのだった。


 あ、そう言えばおかげでみんなに願いを教えずにすんだ……。


 よかったぁ……。

お読みいただきありがとうございました。

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