第90話 星の破壊者
地球から遠く離れた宇宙の彼方、まだギーガーク帝国の侵略の手すら及んでいないほどの辺境のその地で今まさに一つの星が滅びの時を迎えようとしていた。
「なんで……なんでこんなことに……」
「神様……あたしたちが、あたしたちが何をしたって言うのよぉぉぉぉぉぉ!!」
各地の火山は炎を天へと吹き上げ、激しい地殻の変動によって地面は激しく揺れ、大津波で街が呑み込まれていく。
そんな中、人々はなす術もなく倒れ伏し、次々と息絶えていった。
まさに地獄絵図と呼ぶにふさわしい光景であった。
かつては地球と同じように青く美しく輝いていたその星は、今や赤熱し、マグマと炎を吹き出す地獄へと変わっていたのだった。
「美しいねぇ、星の終わりゆく様っていうのは……」
そんな滅びの惑星の近くに浮かぶ一隻の宇宙船。その窓から星を見下ろしながら、その人物はうっとりと呟いた。
暗がりで顔は見えないが、その声などからまだ年若い少年であることが伺える。
この少年こそ、この大惨事を引き起こした張本人である。星を滅ぼしその散り際を見届ける、まさに地獄の極悪非道な趣味を持つ悪魔のような存在であった。
「さあ、そろそろフィナーレだ。見せてよ僕に、宇宙に咲く大輪の花を! ハハハハハ!」
彼は心底楽しそうに笑いながら手に持ったグラスをクイッと傾ける。
その瞬間、惑星はろうそくが燃え尽きる瞬間ひと際激しく輝くように、一瞬強く激しく輝いたかと思うと、大爆発を起こした。
「ハハ! ハハハハハハ!!」
その爆発を見届け彼は心底楽しそうに笑い声を上げたのだった。
「ハハハハハ、ハハハハハハ!! ……ふぅ」
ひとしきり笑った後、彼はグラスの残りを一気に飲み干し、大きく息を吐いた。
「美しいものというのは一瞬で消えてしまう、だからこそ美しい。……でも、僕はもっと美しいものを見たい」
彼はそう呟くとグラスを放り投げる。
「さて、次はどこの星を狙おうかな? 出来ればさっきの星と同じくらい美しい星がいいんだけど……」
呟き手元のコンソールを操作すると、空中にディスプレイが現れ、様々な情報を映し出した。
「この星なんかいいな、いやでもこっちの星も捨てがたい……おや……?」
ディスプレイに映し出された情報の一つに目を留めると、彼はニヤリと笑みを浮かべた。
「ハハ、ハハハ!! これはいい! これはいいね! なんて美しい星なんだ!」
彼は興奮した様子で叫ぶとその惑星の情報をさらに詳しく見る。
「ええと……宇宙連合での惑星識別コードはANMA13714……現地人の呼称はチキュウ――地球……か。これなら……」
「あの、出過ぎた真似かとは思いますが……考え直されてはどうでしょうか?」
その時、先ほどから黙って彼の傍に控えていた部下の一人が恐る恐るといった様子で口を開いた。
「ん? 考え直すって何を?」
「聞いた話では地球には帝国の連中が例のクリスタルの調査のために送りこんだ部隊が常駐しているとか……おまけに宇宙戦士も防衛の任についているとのこと、今彼らと事を構えるのは得策ではないと思うのですが……」
部下の進言に、しかし彼は冷たい視線を向けると一言、「うるさいよ」と返す。
「は?」
「うるさいって言ってるんだ。帝国? 宇宙戦士? それがどうしたの? 僕はやりたいようにやるんだ」
「で、では……」
「次のターゲットは地球、それで決まりだよ。さあ、さっさと宇宙船を発進させるんだ」
「は、はっ!」
部下は慌てて敬礼するとその場を立ち去る。
そして、宇宙船は静かに動き出す。
ガンガンと砕けた星の破片が超強化ガラス製の窓へと打ち付ける音を聞きながら彼はまだ見ぬ星へと思いを馳せる。
「ふふ、地球……楽しみだなぁ。あれだけ美しい星だ、きっと僕好みの可愛い子も沢山いるはずだ。早く会いたいよ、僕の新しい恋人候補にね」
彼は一人そう呟きながら笑みを浮かべるのだった。
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