第86話 見つけた! 完全無欠のロボの死角!!
(一体どうしたらいいの……)
繰り出される攻撃をなんとかかわしながら私は考える。
自慢するだけあって蘭ちゃんのロボットは強い!
今はこうして何とか攻撃をかわすことが出来ているけど、このままじゃジリ貧だ。
何とかして反撃をしないと……でもどうやって? 私の攻撃は何一つ通用しなかったのに……。
「ほーっほっほっほ! それでおしまいかしら? 今のうちに降参すれば命までは奪わないわよぉ?」
余裕たっぷりの蘭ちゃんの声が聞こえてくる。
うう、悔しい! なんで蘭ちゃんなんかにこんなに苦戦してんのよ、私!
一応これでもヤーバンを倒してるのに、自信失くしちゃいそう……って、ハッ! そうだ! あれだ、あの力……ヤーバンを倒したときのエクシードモード、その力が発揮できれば!
グググっと私は両の拳を握りしめてキシンガーZを見据えながら自分の心に呼びかける。
私の中に眠る力……今こそ目覚めて……!
だけど……。
だ、だめ……エクシードモードが発動できない……!
でも考えてみたら当たり前だ、シュナイダーさんですら使いこなせないというエクシードモードを私なんかがそう易々と使いこなせるわけがなかったんだ。
それに、おそらくもう一つ……エクシードモードの発動には何よりも強い『想い』の力がいる。だけど、私はこの戦いに勝つという強い『想い』を持っていない。
だってやっぱり蘭ちゃんは友達だし、これも真剣勝負に見えて結局はただのお遊びだ、負けたら世界が終わるレベルの切羽詰まった状況じゃない、そんな状態では強い『想い』なんて持てるわけがない。
「ふふん、何よその目は、何かするつもりならさっさとしてみなさい、睨んでるだけじゃ何も出来ないわよ! ほーっほっほっほ!」
ああっ、ムカツクなぁもうっ、怒りなら死ぬほど感じてるのにぃ!
「ファイアショット!」
バチッ!
やけくそ気味に放った一撃はやはりバリアによって弾かれてしまう。
「シャイニーフェニックス、アンタ諦めが悪いわよ、効かないって言ってんでしょーが!!」
苛立ちを隠せない様子で蘭ちゃんが叫ぶ。
ああっ、もうっ! わかっていながらも、ついつい攻撃しちゃう自分に腹が立つ!
ファイアショットぐらいだったら自然回復で賄えるけど、私のエネルギーだって決して無限……ん?
空中でじだんだを踏む私だったけど、ふとある疑問が頭をよぎった。
「フェニックスサーチャー!」
私の言葉に応え、頭部に分析用のゴーグルが出現し、キシンガーZをサーチする。
すると、ディスプレイには思った通りの情報が表示された。
(やっぱり……! なるほどね……私ってバカだなぁ……こんな単純なことに気づかないなんて)
フェニックスサーチャーを解除した私はフッと自嘲気味に笑うと、キシンガーZを見据えて大きく息を吸い込む。
「見えたわ、この勝負私の勝ちよ! 蘭ちゃん!!」
「なっ……!?」
オオオオオオオオオッ!!
私の突然の宣言に蘭ちゃんが惑いの声を上げると共に観客席からどよめきが起こる。
「おーっと、これはどういうことだー! スーパーロボットに手も足も出ずに防戦一方だったシャイニーフェニックスが、ここに来てまさかの強気な発言! この自信は一体どこから来ているのかー!」
実況の人がテンション高めにマイクを通して叫んでいる。
「くだらない負け惜しみを……! 勝ちというのなら、その根拠を見せてみなさい!! ちなみに言っとくけどアタシはレディーRよ!!」
「もちろん! 見せてあげる!!」
口調に怒りをにじませ叫ぶ蘭ちゃん――おっとレディーRね、ついついこの設定忘れそうになるわ――に私はそう答えると、腕を掲げ叫ぶ。
「フラッシュレイン!」
撃ち出された光弾が空中で弾けると、名前の通りに光の雨となって敵へと降り注ぐ!
これはシュナイダーさんが使っていた技だ、同じ宇宙戦士である私は基本的には彼と同じ技が使えるのである――もちろん威力は彼のそれには遠く及ばないけど。
ともかく、降り注ぐ光の雨はキシンガーZのバリアへと激しく打ち付ける。
「アーッハッハッハ、何をするのかと思えば……、そんな攻撃が効くわけないでしょ!!」
勝ち誇るレディーRの言葉通りフラッシュレインもバリアを打ち破るには至らなかった。
だけど、これでいい……。
「ダブルクラッシュナックル!!」
私の攻撃の合間を縫い、キシンガーZが両腕を飛ばしてくる。
「甘いっ!」
来るのは分かってた! 私は難なく攻撃を回避するとシャインブリットで再度キシンガーZを攻撃する。
「無駄よ! そんな攻撃!」
しかし、私の放った光弾はまたしてもキシンガーZのバリアに阻まれる。
「シャインブリット連射!!」
速射、連射、両性能に優れるのがシャインブリットの強みだ。
私はキシンガーZに次々と光弾を叩き込む。
「失望したわよシャイニーフェニックス! アンタがここまで愚かだとはね! アタシのバリアは無敵よ、それがわからないアンタじゃないでしょ!?」
レディーRがあざ笑うかのように叫ぶが私はそれを無視し撃ち込む、撃ち込む、撃ち込みまくる!
「バリアの隙間でも狙おうっての? 残念だけど、このバリアはひとかけらの隙間もなく全身に張り巡らされてるのよ! アンタがいくら攻撃したって無駄無駄ぁ!!」
ふふ、レディーRはまだ気づいてないみたいね、私の狙いに……! 彼女は超天才だけど、一つの事に固執するあまり別のことに気が回らない、そこが彼女の欠点だ。
さて、とりあえずはこれくらいでいいかな?
私は攻撃の手を止めると、ふっと笑う。
「そっちこそ、さっきから私に対して決定打を与えられてないんじゃあないの? いくら防御が硬くても、それじゃあいつまでたっても私には勝てないわよ?」
「な、何を……!!」
私の挑発にレディーRが怒りを露わにする。
「言ったわね! なら、今一度受けてみなさい! デスブラスター!!」
キシンガーZの両目から放たれた光線が私に迫る!
「フェニックスリフレクション!!」
しかし、私は慌てず騒がず相手の放ったエネルギーをそのまま反射させる防御奥義を発動させる!
キィンッ!
かざした手の平の前に出現した光の障壁は見事にキシンガーZの放った光線を跳ね返す!
「やった!」
誰かの声と……
「だから甘いって言ってんのよ、アンタは!」
レディーRの叫び声が重なる。
跳ね返された光線は、しかし今まで私が放った技と同じようにバリアに阻まれる。
「おーっほっほっほ、なかなかいい作戦だったけどお生憎様、自分の武器でやられるほどアタシはお間抜けじゃないのよ!」
またしても勝ち誇るレディーR。
私はそれを無視してキシンガーZの目の前まで移動する、そして……。
「だけど、私にご自慢の必殺ビームを跳ね返されたことには変わりないでしょ? 勝ち誇るなら私にダメージ与えてからにすればぁ?」
思いっきり馬鹿にした口調で言うと、べろべろばーと舌を出す。
「こ、この……言わせておけば! 許さない! 捻り潰す!!」
コクピットの中で顔を真っ赤にしているのが容易に想像できるような怒りの声を上げるレディーR。
そして、キシンガーZは私に向かって突進してくる!
私は高度を上げ上空へと逃れるが、キシンガーZもそれを追って再び空中へと舞い上がる。
そのまま空中での追いかけっこが始まった!
キシンガーZもなかなかの運動性を持っているが、いかんせ巨体過ぎて小回りは効かない。
回避に全力を注いでいる私に攻撃を当てることは出来ず、私はキシンガーZの攻撃を回避しながら上空を飛び回る。
「くっ、この、大人しくしなさい!!」
私を捕まえられないことに業を煮やしたのか、レディーRが叫ぶ。
しかし、私は彼女の言葉を無視しキシンガーZの攻撃を避け続ける。
そして……。
(そろそろね……)
頃合いを見計らい私は地面へと降り立つ、するとすぐさまキシンガーZも大地を揺るがしながら降り立った。
そして、またグラウンドの中央で睨み合う形になった。
もちろん、私とキシンガーZでは大きさが全然違うので、キシンガーZが私を見下ろす形になる。
「どうやらついに観念したようね! シャイニーフェニックス、そろそろ勝負を終わらせましょう、出来れば使いたくなかったけど、アタシは最後のカードを切らせてもらうわ!」
「最後のカード……?」
オウム返しに問いかける私にレディーRは再び余裕を取り戻したような声音で言う。
「最強最大の必殺兵器『ブラック・ジ・エンド』を使わせてもらうわ! ふふふ、これは凄いわよ、一度発動したら最後、キンシガーZの周囲半径500メートルは焦土と化す! アンタがどんなに早く動いたところで、これから逃れることは絶対に不可能よ!」
ざわざわざわざわざわざわ!!
レディーRの言葉に反応したのは私ではなく、会場の観客たちだった。
「お、おいマジかよ、それってつまり俺たちも巻き込まれるってことじゃないのかよ!」
「そ、そんな……私、死にたくないわ……」
「に、逃げろ! 巻き込まれたらお終いだ!!」
観客たちは口々に叫び声を上げながら我先にと会場から逃げ出そうとする。
「さぁ、とんでもないことになってまいりました! これはまさに絶体絶命の大ピンチ! 果たしてシャイニーフェニックスは、そして会場の観客たちはどうなってしまうのでしょうか!!」
しかし、実況担当の男の子だけは、この状況でもテンション高くマイクに向かって叫び続ける。
う~ん、こういうの(この人別にプロじゃないけど)プロ根性って言うのかな……単に危機感が欠如してるだけかもしれないけど……。
それはともかくとして、蘭ちゃんってば完全にキレちゃったみたい……。
今の彼女なら躊躇うことなくあれを発動させて私ごと会場を消し飛ばすだろう。
昔チェスで彼女と対戦した時、ルールもろくに把握してなかったのに何故か私が勝っちゃったんだけど、負けが決まった瞬間テーブルごと盤面を叩き壊して大暴れした挙句幼稚園が半壊する大惨事になったことがある。
あの時も、今みたいに怒り狂っていたっけ……。
『みうちゃん、何やってんだよ!? あんなに挑発して……あの子の危険性を散々訴えてたのは君自身だったのに……』
その時、私の脳内にルビィの声が響いた。焦りと共に非難するような響きを持ったその言葉に、しかし私は慌てることなく返す。
『大丈夫だよ、ルビィ』
『何が大丈夫なんだよ! 君の攻撃はあいつには通じないんだよ? 発動前に破壊して止めるなんて不可能でしょ!?』
『そうだね、だけど、私が止める必要なんてないでしょ?』
『は? 何言って……』
『あれ? ルビィは気づいてなかったの? あのロボットは……』
「馬鹿ね、ぼーっとしたりして、アンタは最後のチャンスを失ったわ! 発動! 必殺究極ブラック・ジ・エーーーーーンドォォォ!!」
私とルビィのサイキック・コミュニケーションを遮り、レディーRが叫ぶ。
同時にキシンガーZの全身から眩いばかりの光が放たれる!
「いやあああああああああああああ!!!!」
「死にたくないーーー!!!」
白光に包まれる校庭に、観客たちの悲鳴が響き渡った――。
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