第85話 讃えよ! 驚異のスーパーロボット!!
その姿はまさに空にそびえる鉄の……ってこれじゃ正義のスーパーロボットみたいじゃない!
えーとえーと、空にそびえる悪の要塞! そうだ、それでいこう!
とにかくレディーRが持ち出してきた『それ』はとてつもない迫力だった。
思わず立ちすくんでしまう私、会場にいる全員が巨大ロボットを見上げ呆然としている。
しかし、流石蘭ちゃんというかなんというか、デザインは異様にカッコいい、本当にアニメから飛び出してきたロボットのようだ。
「にょーっほっほっほっほっほっほっ!! どうよ! 超天才のアタシが作り上げた究極のスーパーロボット、キシンガーZの雄姿!! さあ、シャイニーフェニックス! このキシンガーZに勝てるかしら? まあ無理でしょうけどね!」
レディーRが高笑いと共に叫ぶ。
言葉を失い呆然とするしかない私の目の前で彼女はロボットが差し出してきた掌に飛び乗った。
そして、頭部の後ろ側へと姿を隠していく。多分そこにコックピットがあるのだろう。
「さあ、行くわよ! キシンガーゴー!!」
ロボットからレディーRの声が響き渡り、同時に音楽が鳴り響く。
な、なんて用意のいい……テーマソングまで用意してるなんて……。
「覚悟なさい! シャイニーフェニックス!!」
キシンガーZがゆっくりと拳を振り上げる。
ちょ、ちょっと待ってよ!? なんでいきなりこんな展開になってるのおおっ!?
とはいえ、こうなってしまった以上は戦うしかない。
わああああああああっ! 私が決意すると同時にショックから抜け出したらしい観客が大歓声を上げる。
「すげええええええ、マジもんのロボットだぜ!!」
「魔法少女とスーパーロボットの対決か! 燃える!」
もー! みんな勝手なことばっかり言っちゃってぇ! 第一私は魔法少女じゃなくて宇宙戦士! 宇宙の超科学が生み出したSPスーツを纏って戦う正義のヒロイン――スーパーヒーローよ!
って、そんなことはどうでもいいか。
キシンガーZは振り上げた腕をピンと伸ばしこちらに向けて突き出す。
まだ届く距離じゃないはずなんだけど……ハッ、いや、このポーズは!?
「ま、まさか!?」
私は慌てて空へと飛びあがる!
「流石の反応ね! だけどおそーーーい!! クラッシュゥゥゥゥ・ナッコオォォォォ!!」
一瞬空中にレディーRの顔が映し出され叫び声が響くと、キシンガーZの右腕が発射される。
やっぱりぃぃ! そんな気がしたんだよねぇぇぇぇ!!
「ひ、ひらめきぃっ!」
私は必死に空中で体を捻り、凄い勢いで飛んできたパンチを避ける。
うう、風圧だけで吹き飛ばされそう……あんなのに殴られたらいくら私でもダメージは免れないだろう。
パンチはしばらく直進した後反転すると、キシンガーZの右腕へと戻っていく。
あ、ちゃんと戻るんだ……流石蘭ちゃん、その辺抜かりはないね。飛ばしたらそれっきりってタイプもあったりするけど、それじゃないみたい。
『みうちゃん、ヤバいよ! 今ボクの計測器でそのロボットの出力を調べたんだけど、とんでもない数値が弾き出された! このままじゃやられるよ!』
サイキック・コミュニケーション能力で私の脳に声を響かせそう警告してくるルビィに私は驚きつつ尋ね返す。
『そんなに凄いの?』
『うん、ギーガーク帝国の奴らが使う超科学兵器並みだよ、あんなのを地球人が作れるなんて……あの子には驚かされっぱなしだ』
『言ったでしょ、蘭ちゃんは超天才なんだって!』
『ん……? みうちゃん、ピンチだっていうのになんだか嬉しそうだね?』
『え、そうかな……』
誤魔化すように笑って見せる私だったけど、ルビィの言葉通りだった。
だって……、蘭ちゃんが、あの蘭ちゃんが私と戦うために……私のために用意してくれたスーパーロボット……。
それが嬉しくないわけがなかった!
「よしっ! 今度はこっちから行くよ、レディーR!!」
ビシッと指を突きつけ宣言すると、私はキシンガーZへと向けて突撃を掛ける!
「バーニングブロウ!!」
拳に炎を宿らせる必殺の一撃だ! これを食らえば流石にひとたまりもないはず!
しかし……。
ガチーン!!
「い、い、い、いったーーい!!」
私の拳は見事にキシンガーZの胸部に突き刺さった……そこまでは良かったんだけど、装甲が硬すぎた。
拳から激痛が走る。私は涙目になりながら慌てて拳を引っ込める。
うう、いつかもこんなことがあったような……。
確かデバッガーメとか言う亀怪人の甲羅に拳が跳ね返された時だっけ。
このロボットはあいつに匹敵する防御力があるらしい……しかも、あいつとは違って全身が装甲で覆われている。
「ほっほっほっ、無駄よシャイニーフェニックス! 超金属ミスティリウム製の装甲と、幾重にも張られたバリアがアンタのあらゆる攻撃を弾き返すわ!」
あらゆる攻撃とはずいぶん大きく出たね! だけど、レディーRだって私の全能力を把握しているわけじゃないでしょ! 実際さっきの戦いでは計算外とか言ってたし!
「ファイアショット!」
ロボット、しかもこれほど頑丈な相手なら遠慮することはない、普通の人間だったら一撃で消し炭になるほどの威力で攻撃する。
だけど、私の放った炎はキシンガーZの装甲に当たると弾けて消えてしまった。
ま、まだまだ! こんなのは序の口だよ!
「シャイニーリング! ウイングカッター! フェニックスボム!!」
高い追尾性能を誇るリング状の光線が! 背中の羽状のパーツを組み合わせて作る全てを切り裂く刃が! そして初披露の高い爆発力を持つ赤い光弾が! キシンガーZに向けて次々と放たれる。
しかし、その攻撃は全て装甲に弾かれてしまった。
「ぐぬぬぬ……!!」
私は歯ぎしりをする。
「ほーっほっほっ! 無駄よシャイニーフェニックス! そんな攻撃じゃ、キシンガーZは傷一つつかないわ!」
あー! もうあったまきたぁ!! 中の蘭ちゃんに怪我させちゃう可能性もあるけどもうそんなこと知らない!
私は両手を掲げエネルギーを集中する。
「必殺! シャイニーファイナルエクスプロージョン!!」
私の両手から巨大な光弾が発射される。それはキシンガーZの装甲に直撃すると、大爆発を起こした。
「や……やった?」
私は爆風を浴びながら恐る恐る顔を上げて呟く。
瞬間私は自分の失言に気が付いた。だって、ほら、このパターンてさぁ!
それに、これと同じこと経験済みだもん、ヤーバンの時に!
いや、でも、相手は蘭ちゃんだし……パターンだって破ってくれるかも……。
もうもうと立ち込める煙を見ながら、私は祈るような気持ちで煙が晴れるのを待つ。
そして、煙の中から現れたのは……。
「ああああああ、やっぱりぃぃぃ!!」
そこには、仁王立ちするロボットの姿が! しかも装甲には傷一つついてない!!
「シャイニーフェニックス、ダメじゃあないの、攻撃当てて“やったか!?”なんて! それはねぇ、ノーダメージフラグってヤツよ! ほーっほっほっほ!」
勝ち誇ったような蘭ちゃんの声が響き渡る。うう、やっぱりダメだったかぁ……。もうっ、こういう時だけお約束には忠実なんだから!
「な、なんて頑丈なロボットなんだよ……」
「まさに鬼神のごとく……冗談で付けた名前じゃなかったわけね……」
観客席から翔くんと智子の呟きが聞こえてくるけど、私も全くの同意見だった。
「そうよ! もっと驚きなさい! そして褒め讃えるのよ! この超天才とキシンガーZの素晴らしさを!! だけど、所詮こんなものはプロトタイプ、この戦いに勝利した暁にはアタシは更なる改良型を作り上げるのよ!」
「どーせグレートキシンガーでしょ?」
「いいえ、キシンガーGTよ」
「そっち!?」
「その次はシン・キシンガーよ」
何なのよ、そのごちゃ混ぜっぷりは!
なんておバカなやり取りしてる場合じゃないのよ! 私の攻撃はあのロボットには全く効かない、このままじゃどうしようもないのだから……。
一応技はまだまだあるけど、こと威力に関してはシャイニーファイナルエクスプロージョンが最高なわけで、あれが効かなかった以上、他の技を使っても……。
となると複数の技を組み合わせてみるとか、とにかく色々試して有効打を与える方法を模索するしか――。
「さて、頑丈さはわかって貰えたようだけど、攻撃性能はまだ十分にお見せしてなかったわね、このキシンガーZの武器はクラッシュナックルだけじゃあないのよ!」
悩む私は浴びせかけられる声にハッと顔を上げる。
「デスブラスター!!」
キシンガーZの両目がカッと輝きそこから真っ黒いビームが発射される。
「バ、バリア全開!!」
両手を突き出し叫ぶ。すると常に私を覆っている不可視の防御膜がはっきりとした形となって現れビームを受け止める。
しかし、キシンガーZのビームは強力で徐々にバリアにヒビが入っていく!
「くっ……うううう!!」
必死に耐えようとするけど、このままじゃ……。
いや、馬鹿だ私! そもそも真正面から受ける必要はなかったんだ! 咄嗟のことでつい……。
「バリア解除!」
バリアが消える瞬間のタイムラグを利用し私は全力で飛び上がる! ビームはさっきまで私がいた場所の地面に大穴をあける!
「た、助かったぁ……」
私はホッと胸をなでおろす。しかし、安心するのはまだ早かった。
なんと、キシンガーZは私を追って空に飛び上がってきたのだ。
「と、飛べるのぉ!?」
歩いて現れたし、キシンガーZなんて名前でかつ翼っぽいパーツは見当たらなかったからてっきり陸戦用かと思っていたけど、どうやら違うらしい。
むぅぅ! もし飛べなかったら、「キシンガーZは空からの攻撃に弱い!」とか言ってやるところだったのに!
などと考えている間にキシンガーZは恐るべき素早さで私の目の前までやってくると腕を振り上げる! そして、ハエでも叩き潰すかのように私の頭に向けて拳を振り下ろす!
バチーン!
「きゃああああああああ!!」
はたき落された私はものすごい勢いで落下していく!
ドゴッ!
そのまま校舎の壁を突き抜け、教室の中へと突っ込んでしまう。
「ああああ、わ、わ、私の学校があああああ!!」
校長先生が悲痛の叫びを上げるが、そんなことを気にしていられる余裕はなかった。
蘭ちゃん、後でちゃんと弁償してあげなさいよ?
「う、うう、痛たたた……私は羽虫じゃないっての……」
頭を擦りながら体を起こす私だったけど、蘭ちゃんは攻撃の手を緩めるつもりは全くないようだ。
教室に空いた大穴から外へ飛び出そうとする私の耳にこんな声が聞こえてきた。
「K2ミサイル!!」
は? ミサイル?
な、な、な、な、何考えてんのよぉぉぉぉぉ!!
穴から見上げた私の目に飛び込んできたのは、空に浮かぶ蘭ちゃんのロボットから今まさに発射されようとするミサイルの姿だった。
あんなのが校舎に直撃したら、校舎どころか学校そのものが木っ端みじんに吹き飛んでしまう。
な、なんとかしないと!!
幸いSPスーツには対誘導兵器用のジャミング機能もある。
私は慌てて飛び出すと、なんとかミサイルに取りつき方向を転換させる!
このままでは純粋な推進力で校舎に直撃してしまうと思ったからだ、同時にジャミングを用いて誘導機能も停止させる。
「ファイアショット!」
そのまま上空へと飛んでいくミサイルに向けて火炎弾を放つ! それは見事ミサイルに命中し空中で大爆発を引き起こした。
って、なんか威力が高すぎない?
念のために被害が及ばないほどの上空で爆発させたからよかったものの思っていた以上の爆発力に私は呆然とする。
「な、なんなの……ま、まさか、核ミサイルじゃあ、ないよね……?」
もしそうなら放射能で大変なことになる……。
あのまま飛び続けて人工衛星でも壊されたら困るから爆破したのだけど、これはミスをしてしまったかもしれない。
S.P.Oに放射能除去装置とかあるかなぁ、あると信じたい!
しかし、蘭ちゃんはそんな私の心配をあざ笑うかのように高らかに笑い声を上げるとこう言った。
「この超天才がそんなモノを使うわけないでしょ! K2ミサイルとは『きれいな核ミサイル』の略称! つまりあれは核兵器並みの破壊力を持ちながら放射能の心配のないクリーンな兵器なのよ!」
ああ、それなら安心……ってなるかぁぁぁぁ!!
そんなもんを私に――というか校舎に向けてぶっ放すなんて正気なの!?
この人本当に無茶苦茶すぎるよ! ちっちゃい頃もそうだったけど、火星から帰って来てからは更に酷くなってない?
私は改めて王尾蘭という子の恐ろしさを実感するのだった――。
お読みいただきありがとうございました。
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