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シャイニーフェニックス~落ちこぼれ少女のヒーロー奮闘記~  作者: 影野龍太郎
第11章【ライバル!? 超天才王尾蘭の挑戦状!!】

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第82話 お祭り騒ぎ! とても戦い前とは思えない……

 なんでこんなことになってるんだろう……。


 決戦の日曜日、私は秋桜(コスモス)学園の校門から学校敷地内を眺めつつそんなことを考えていた。


「いらっしゃい、いらっしゃい、我が化学部特製ケミカルたこ焼き1パック300円、お買い得だよ~。」


「焼きいもいかがですかー! 今なら2本で300円ですよー!」


 校門から校舎へと続く道にはたくさんの屋台が建ち並び、生徒たちが声を張り上げながら呼び込みをしている。


「文化祭じゃないんだよ……なんでこんなに盛り上がってるの?」


 私は思わず頭を抱えてそう呟いた。今日は蘭ちゃんが約束の場所に指定した学園の校庭、その中央にある特設リングでシャイニーフェニックスと蘭ちゃん(謎の天才科学者レディーR)の対決が行われることになっているのだけど、そのことがもう学園中の生徒に知れ渡っているらしく、学校全体がまるでお祭りのような様相を呈しているのだ。


「文乃の記事が出てからというものみんな浮き足立っちゃって、季節でもないのに学祭のノリなんだよね」


 隣でそんなことを言いながら肩をすくめる智子、私は片手を頭にやると首を振った。


「この戦いの行方に世界の命運がかかってるかもしれないって言うのにみんなのんきな……」


「世界の命運って……何を大げさな。あんたの幼馴染の作った悪の組織が勝とうが負けようが、別に世界が終わるわけじゃないんだからさ」


「わかってないなぁ智子、蘭ちゃんは本気で世界征服をするって言ってるんだよ? 彼女が勝つってことはつまり世界征服が実現するってことなんだよ」


 まだ王尾蘭という子のことを良く知らない智子はのんきにそんなことを言うけど、私は真剣な口調でそう言った。


「でも、蘭って子がどれだけ真剣だったとしても、律義に挑戦状を学校に送り付けて来るような相手でしょ? ギーガーク帝国みたいなガチのやばい連中に比べればぜーんぜん危険ってわけじゃないと思うけど?」


 そう私の言葉に答えるように言ったのは智子ではなかった。背後からかけられた声に智子と共に振り向くと、そこにはある意味この騒ぎの立役者であるところの文乃ちゃんがいた。


「大体シャイニーフェニックスがそんな子の作った組織に負けるなんて私には思えないんだけど」


 文乃ちゃんの言葉に私は苦笑する。まあ、それはそうなんだけど、万が一ってことはある。それに蘭ちゃんは天才だ、どんな手を使ってくるかわからないし……。


「文乃の言う通り、みうは心配性なのよ、そもそも戦うのはシャイニーフェニックスであってあんたじゃないだからあんたがそこまで気に病む必要はないって」


 智子は文乃ちゃんの言葉に頷きつつ、そう言って私の肩を叩く。


 私がそのシャイニーフェニックスなのよぉ! と思わず叫びたくなるのをぐっと堪え、「そ、そだねー私に出来ることはシャイニーフェニックスを信じることだけだもんね」となんとか言葉を絞り出した。


「そんなことよりさあ、せっかくだしあたしたちもこの『お祭り』を目一杯楽しみましょうよ、決闘開始時間まではまだまだあるわけだし。文乃も今んところは暇なんでしょ?」


「そうね、それじゃ行きましょうか」


 そんな会話を交わし二人は歩き出す。しかし私が頭に手をやりつつも動こうとしないのを見て振り返り声をかけてくる。


「何やってんのみう、置いてくわよ」


 そう言われても私はとてもじゃないけど『お祭り』を楽しむ気分じゃないのだ。


 だって数時間後には親友――蘭ちゃんは否定してるけど私はそう思っている――と一戦交えなくちゃならないんだよ? とてもとても……。


 だけど、その瞬間だ私の鼻腔をくすぐる芳しい香りが漂ってきた。


 その香りに思わず私は反応し、顔を上げた。


 風向きが変わったからだろうか、立ち並ぶ屋台から漂う実に美味しそうな香りに私は思わずごくりと喉を鳴らした。


 焼きそば、フランクフルト、唐揚げ、たこ焼き、りんご飴、ベビーカステラ――etc。


 ……色々と考えるのは、戦いが始まってからでいいか。


 私はそう結論付け、智子たちの後を追うのだった――。




「あー、楽しい! 美味しいものいっぱい食べられて幸せ―!」


 我ながら何という切り替えの早さだろう。つくづく私って緊張感が続かない性格だなと思わざるを得ない。


 私はすっかりとこの雰囲気に飲み込まれていた。


「みう、あんただらしないわよ、ほら、口の周り汚れてる」


 智子はそう言ってハンカチを取り出すとソースでベタベタになっていた私の口元を拭ってくれる。


「あ、ありがと……」


 親友だから今更恥ずかしがることもないだろうけど、恥ずかしいところを見せてしまったと赤くなりつつ私はお礼の言葉を口にする。


「でも、仕方ないよ。だって色んなお店があるんだもん」


 一言付け加えるのも忘れない。


「ま、確かにね」


 智子はそんな私の言葉を聞くとそう言って笑った。


「しかし、みう。あなたって体に似合わずによく食べるのね……」


「育ち盛りですから! さあ、次のお店が待ってるよ、行こ行こ!」


 呆れたように言ってくる文乃ちゃんに言葉を返しつつ歩き出す私に二人は肩をすくめつつ付いてくるのだった。


 それから屋台巡りをして食べ歩くこと数十分、ふと足を止めた智子がこんな提案をしてきた。


「ねえ、特設リングの方に行ってみない? シャイニーフェニックスがどんなところで戦うのか、開始前に見ておきたいわ」


「そうね、そろそろ食べ歩きには飽きてきたところだし、行ってみましょ」


 文乃ちゃんが同意し二人はリングの方へと足を向ける。


 私としてはまだまだお腹には余裕もあり食べ歩きを続行したかったのだけど、文乃ちゃんはそうじゃなかったらしい。


「みうもそれでいい?」


 私を振り返る文乃ちゃんに私は頷きを返すと二人の後を追って特設リングへと向かったのだった。




 特設リングは中等部の校舎の前の校庭の中央にデーンと設置されていた。


「凄い! 本格的なリングね!!」


 智子が興奮したように言った。


「うちのOBが所属してる大学のレスリング同好会の伝手で借りてきたんだってさ」


 文乃ちゃんがそう説明する。


 確かに、リングは本格的なものだった。ロープの張り方からマットの質感まで本格的だ。


「でもこれかなりお金かかってそうよね、大丈夫なのかしら?」


「この様子をネットで配信するんだって、それの収益で賄うつもりみたいよ」


 え、えぇ? そんな話聞いてないんですけどぉ!


 なんかどんどん大ごとになっていくなぁ。


「なるほど、つまりそれだけの価値を見出してるわけね、なんというか商魂逞しいことで」


 腕を組んで唸る智子に文乃ちゃんは、「商魂逞しいと言えば、見てよあそこを」とある一角を指差した。


 そこには手製のシャイニーフェニックスグッズを販売している一団が……。


 ペンダント、キーホルダー、ストラップ、Tシャツ、タオル、マグカップ、フィギュア、ぬいぐるみ、その他様々なグッズが並べられておりさながら即売会のようだ。


「いつの間にあんなものを……」


 思わず絶句する私だけどそれは智子も文乃ちゃんも同じようで、


「あちゃー……こりゃまた凄いことになってるわね」


 と智子が頭に手をやりつつそう呟く。


 そんな時だ、ふと並べられているグッズの一つビッグサイズのシャイニーフェニックスのフィギュアに手を伸ばす見覚えのある後ろ姿が私の目に留まる。


「あっ、あれ氷川くんじゃないかしら?」


 智子もそれに気が付いたのか声を上げる。


「えっ、氷川くん!?」


 その名前に文乃ちゃんがすごい勢いで食いつく。


 そう言えば、文乃ちゃんって、翔くんのこと好きっぽかったんだっけ……。


 そして、間違いなくそれが彼であることを確認すると、一目散に駆けて行き、


「ひ、氷川くん!!」


 そう声を上げた。


 ビクッとその声に反応すると、恐る恐る振り返る。


「に、新部……か。驚かすな……って、森野に……み、みう!?」


 文乃ちゃんに続いて現れた私たちの姿を彼女の肩越しに確認した彼は、驚きの声を上げる。


「よ、よう。三人で回ってたのか……仲が良いのはいいことだな、うん」


 などと言いつつ、翔くんは先ほど手に取ったフィギュアをさっと自分の背後に隠してしまう。


 あー、なるほど、翔くんってばこっそりフィギュアを買おうとしたところに突然声を掛けられたもんだから咄嗟に隠したのか……。


 そんな翔くんの態度に智子は、ニヤニヤっとした笑みを浮かべながらクイッと眼鏡のブリッジを指先で押し上げ、翔くんへと一歩詰め寄る。


「ふーん、フィギュアねぇ……。で、それ買うつもりなんだ」


「な!? ち、ちげーよ! 良く出来てるなって思わず感心して手に取っちまっただけだ!」


 顔を真っ赤にして反論する翔くんだったけど、その言葉は智子のニヤニヤ顔をさらに深めるだけだった。


「別に隠すことはないわよ? 氷川くんもシャイニーフェニックスのファンなんでしょ?」


「た、確かにオレはシャイニーフェニックスのファンではある! だけどあくまでスーパーヒーローとしての彼女の強さとかそういうのに憧れがあるだけで、お、女の子として見てるわけじゃないし、フィギュアとかには興味はないからな!」


「ふーん、でもその割には手に取ってたわよね?」


 智子がそう突っ込むも翔くんは怯まずにさらなる反論をしてくる。


「だ、だから、思わずだって言ってんだろ? よく見てみろよ、これ!」


 とフィギュアを智子の目の前に突きつける。


「ま、まあ確かにね、とてもハンドメイドとは思えない造りね……」


 思わず唸る智子に、翔くんは「そうだろうそうだろう」とどこか勝ち誇ったように言う。


「それにしても……改めて見ると、やっぱシャイニーフェニックスってみうそっくりね」


 私はやれやれと肩をすくめていたのだけど、しげしげとフィギュアを眺めていた智子が急にそんなことを言い出すもんだから、思わず私は「えっ?」と声を上げてしまう。


「そ、そうかな……? 全然似てないと思うけど……ほら、私こんな可愛くないし……」


「確かに」


 正体がバレては困ると慌てて反論する私だったけど、翔くんがそんな私の言葉を遮るようにそう言ってきて、私は思わずムッとしてしまう。


「またまたそんなこと言っちゃって。氷川くん、あんた相変わらず素直じゃないのね」


「そうよ氷川くん、みうは可愛いじゃない。それこそシャイニーフェニックスに匹敵するほどにね」


 智子と文乃ちゃん、二人に言われ翔くんは、「それは友達としての欲目って奴だ、幼馴染のオレにはこいつの可愛さなんてわからないね」とそっぽを向きつつそう反論する。


「まっ、それって要するに『オレはお前らと違ってみうのことを知り尽くしてるんだ』ってこと? ふーん、言うじゃない」


 智子はニヤニヤしながらそう言ってくる。


「ちげーよ! なんでそうなるんだよ!」


 翔くんは慌ててそう反論するけど、智子のニヤニヤ笑いは止まらない。


「あー! もういい!! お前らなんかと一緒にいられるか、オレはもう行くぞ!」


 業を煮やしたのか、翔くんはまるで殺人現場で自ら孤立して死亡フラグを立てる人のような台詞を吐くと、身を翻し走って行ってしまった。


「あ! ちょ、ちょっと……」


 私は慌てて呼び止めようとしたのだけど……。


「あーらら、からかい過ぎたか。ごめんね、文乃」


「……なんで私に謝るわけ?」


「ん……なんでも」


 謎の会話を繰り広げる二人に私は頭から大きなはてなマークを飛ばす。


 いや、文乃ちゃんは翔くんのことが好きだから一緒にいられる時間を奪っちゃってごめんね的な意味があると思うのだけど、なんかそれだけじゃなさそうな気がする。


 現に文乃ちゃんはどこか寂しそうな表情を浮かべているし……。


「さーてと、せっかくだしなんかグッズ買いましょうか!」


 しかし、それは一瞬のことで、すぐに文乃ちゃんはいつもの調子に戻ってそう声を上げた。


「え? あ、うん」


 私は慌てて頷きを返したのだった。



 そんなこんなで時間を潰していた私たちだったけど、にわかに周囲が騒がしくなってきたことに気づき時計へと視線を向ける。


「あっ、そろそろ時間ね! う~、別にあたしが戦うわけでもないのになんか緊張してきちゃったわ!」


 智子がそう言うと、文乃ちゃんが同意するように頷く。


「うん、私もなんか緊張してきたかも……。まあ、ともかく行きましょ早くしないといい席取られちゃうわ」


 そして、歩き出そうとする二人だったけど、私は、「ちょっと待って!」と声をかける。


 振り返る二人に苦笑いしつつ、私は、「トイレ行きたくなってきちゃった、二人は先に会場に行ってて」と告げた。


「さっき行かなかったっけ? まあいいか、じゃああんたの分の席も確保しといてあげるわ」


 一瞬だけ首を傾げた智子だったけど、すぐにそう言ってヒラヒラと手を振った。


「ありがとう! じゃ、行ってくるね」


 私も手を振り返すとその場から離れていくのだった。




「ルビィ、ルビィ、聞こえる? 近くにいるでしょ、校舎の裏に来て!」


 校舎裏までやって来た私はSPチェンジャーの通信機能を使いルビィに呼び掛ける。


 ほどなくして、目の前に舞い降りてきたルビィは私が言葉を発するより先に言った。


「お待たせ、ボクを呼んだ理由はわかってるよ、みうちゃんの姿に変身してみうちゃんがシャイニーフェニックスとして戦ってる間身代わりを務めるんでしょう?」


 流石相棒、察しが良いね!


 私は頷くと左手を掲げて小声で変身ワードを口にする。


「Start Up! シャイニーフェニックス!」


 光に包まれる……変身が始まる……。


 引き延ばされる一瞬の中で、私は戦いへの高揚感と僅かな不安に胸を高鳴らせるのだった……。

お読みいただきありがとうございました。

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