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シャイニーフェニックス~落ちこぼれ少女のヒーロー奮闘記~  作者: 影野龍太郎
第11章【ライバル!? 超天才王尾蘭の挑戦状!!】

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第81話 舞台整う、あとはその日を待つばかり

「ええっ!? それはまずいよ、みうちゃん……」


 帰宅後、自分の部屋で一息ついた後、私はさっきのことをルビィに話したのだけど、それを聞いた彼が開口一番に放ったのはそんな言葉だった。


「あ、や、やっぱり……?」


 私はいたずらがバレてしまった子供のように身をすくめながら、目の前で半眼になっている小さな鳥に恐る恐る尋ねる。


「悪の超天才科学者だかなんだか知らないけどさぁ、地球人の女の子相手に変身して戦うなんて、S.P.Oの人たちが知ったら大問題だよ。みうちゃん、そのことわかってる?」


「そ、それは……」


 ルビィの言葉に私はますます身を縮こまらせるしかない。だけどチラチラッと上目遣いでルビィを見ながら、


「でもさぁ、あんなこと言われたら挑戦受けないわけにはいかないんだもん……ねぇ、ルビィなんとかならないの?」


 と、ルビィに助けを求める。


「ならないよ……宇宙戦士の力を私闘に使おうだなんて……規則違反だよ……」


 ルビィは私の問いに呆れ顔で首を振る。


「あ、あはは……やっぱり?」


 そんなルビィの反応に私は乾いた笑みを浮かべるしかないのだった。


「だけどね、ルビィ、これは決して個人的な戦いってだけじゃないんだよ? 蘭ちゃんは本気で世界征服狙ってるんだからさあ、ほっとけないでしょ?」


「世界征服……ねぇ。だけど、みうちゃんと同い年の女の子で、しかも親友なんでしょ?」


「だからこそだよ! 私にはわかるの、蘭ちゃんはやると言ったらやるよ、特に私が――というかシャイニーフェニックスが出ていなかったら癇癪(かんしゃく)起こして暴れ出すと思う」


 私は拳を握り締めると力説する。そんな私にルビィは呆れた様子でため息をついた。


「みうちゃんがそう言うならそうなんだろうけど……聞けば聞くほどとんでもないね、その子……」


「あはは、まあでも、悪い子じゃないんだよ? ただちょっと自分の才能に自信持ちすぎて暴走気味なだけでさ」


 苦笑しながら言いつつ言葉を切ると、「ともかく!」と私は語気を強めて言う。


「なんか方法考えてよぉ! 規則の抜け穴とかないの!?」


「抜け穴って言ってもねぇ……」


「動き出した悪の天才科学者を止めることも出来ないなんて、あまりにも融通が利かなすぎるでしょ!?」


「いや、僕に言われても……」


 私の懇願にルビィは困り顔で頭をかく。そんなルビィの態度に私は思わずイラッとしてしまう、しかし、ルビィはクチバシの下に翼をやりちょうど人間が顎に指をかけて何かを考えているような仕草をする。


「融通利かせろ、か……。そう言えば、宇宙戦士の規則には確かこんな文言もあったような……」


「え? 何々?」


 ルビィの言葉に私は思わず身を乗り出す。そんな私にルビィはクチバシをクイッとやりながら言った。


「『宇宙戦士は管轄外のいかなる事象に対してもその力を行使して干渉してはならない、ただし大多数の生命並びに宇宙の平和に危機を及ぼす可能性がある場合においてのみ、その力を行使することを許可する』ってのがあるんだけど……」


「えっ!? それってつまりどうしてもの場合はシャイニーフェニックスに変身していいってこと!?」


「まあ、そういうことになるね」


 ルビィの言葉に私は思わずガッツポーズをする。やった! これでシャイニーフェニックスになれる!


「って、ちょっと待ってよ。あくまで大多数の生命並びに宇宙の平和に危機を及ぼす可能性がある場合限定だよ? その蘭ちゃんを止めないとほんとにそんなことになるわけ?」


「なるなる! ルビィは知らないからのんきにしてられるんだよ。みんな蘭ちゃんのことを自分を天才だと思い込んでるだけの痛い子だと思ってるけど、違うの。あの子は……本当に超天才なんだよ」


「ふーん。そんなにすごいの?」


「うん、生まれてすぐに14歩歩いて天上天下唯我独尊、寿限無寿限無五却のすりきれ~以下略と喋った上に円周率を1億桁まで暗唱したとか」


「それ絶対嘘だよ!」


 私はルビィに力説する。しかし、ルビィは呆れた様子で首を横に振るだけだ。


 そんな彼の様子にイライラしつつ私はさらに蘭ちゃんが如何に凄いかを滾々(こんこん)と語り聞かせる。


「嘘じゃないよ! 本人が言ってたもん! 他にも1歳でミレニアム懸賞問題全部を解いたとか、2歳で裏ノーベル財団から『ノーベル天才で賞』を贈られたとか、3歳で特殊相対性理論を完全に理解したうえでそれを超える理論を構築したとか、4歳で宇宙の真理にたどり着いて神と対話したとか、他にも色々あるよ!」


「だから絶対嘘だってば! というか最後のはどう考えてもありえないでしょ!?」


「あり得ないことを起こす、それが王尾蘭って子なのよ! だけど、何よりも凄いのは……蘭ちゃんはね……蘭ちゃんはね……」


 そことで言葉を切り、私は思いっきりためを作る。


 ゴクリとルビィが唾を飲み込むのが聞こえた。


 私は息を吸い、一気にまくし立てる。


「蘭ちゃんはね! 5歳の時には、夜中に一人でおトイレに行けたんだよーーー!!」


 ズコーっとルビィがずっこける。


「な、なんだよ、それは……」


「あり得ないでしょ!? 私なんてこの年になってすら夜中はちょっとびくびくしながらトイレに行くのに、蘭ちゃんったらもう5歳の時に一人でおトイレに行ったんだよ!? しかも夜中だよ? 私なんて怖くて、パパやママを起こしてついてきてもらってたのに!」


 私はルビィの言葉に思わず大声を上げる。


「それはただみうちゃんが怖がりなだけでしょ!?」


「う……ま、まあそれはちょっと否めないけど……。と、とにかく! 蘭ちゃんはそれだけ凄い子なのよ、そんな子が野心を燃やして世界征服なんか始めちゃったら、それはもう宇宙の存亡に関わる事態なの! だから、その野望を挫くためにシャイニーフェニックスが必要なのよ!」


「そ、そうですか……。はぁ、もういいや、好きにしなよ」


 私の熱弁にルビィは呆れ顔でため息をつくと、やれやれと首を振った。


 よしっ! とりあえずこれでシャイニーフェニックスとして蘭ちゃんと戦うことができるようにはなった。


 あとは決戦の日が来るのを待つばかりだ。


 ん? ってそう言えば一週間後に学校のグラウンドでって言ってたけど、正確な日時とかは聞いてなかったな……具体的にはいつなんだろう……。


 今からちょうど一週間後ってことは平日になるわけだけど、放課後学校が終わってからってことになるのかな?


 うーん、まあいっか、そのうち向こうから正確な日時の通達があるでしょ……。


 そんなことを思いながら、その日はそのまま普通に過ごす私なのであった。



「何っ、蘭が帰って来たぁ!?」


 翌朝、学校へ向かう道すがら、いつものようにスカート捲りなんぞを仕掛けてきやがった翔くんだったのだけど、撃退しつつ私が昨日放課後蘭ちゃんと再会したことを話すと、素っ頓狂な声を上げた。


 改めて説明することもないだろうけど、私と翔くんは生まれた時からの付き合いで幼稚園も同じだった。

 だから彼は蘭ちゃん自身の事も彼女と私との関係なんかもよーく知っているのだ。


「蘭って、王尾蘭だよな、お前のライバルとか言っていつも張り合ってたあの自称超天才の変な奴。あいつ火星に引っ越したんじゃ……」


「事情はよく分からないけど帰って来たみたいだよ、それで……」


 信じられないと言った様子で尋ねてくる翔くんに私は昨日の事を話して聞かせた、懐かしそうに聞いていた彼だったけど、次第にその表情は呆れ顔になって行った。


「あいつ……なんも変わってねーな……おまけにシャイニーフェニックスに挑戦するだぁ? 何を考えてんだよ、まったく……」


 翔くんは呆れ顔でやれやれと首を振った。そして私をチラリと見ると続けて言った。


「しかしお前も相変わらずだな、蘭に挑発されてシャイニーフェニックスでもないのに勝手に挑戦受けちまって、お前らのアホな争いに巻き込まれる彼女が気の毒だぜ……」


「あ、あはは、そこはまあ、シャイニーフェニックスには後で迷惑かけてごめんねって謝るよ」


 私はそう言って苦笑する。翔くんはそんな私を見て、やれやれと再び肩をすくめた。


「ところで、お前、シャイニーフェニックスにそんな個人的な頼みごとを出来るほど彼女と親しいのか?」


 うっと私は思わず言葉に詰まる。確かに単なるヒーロー好きの女の子でしかないはずの私が宇宙人疑惑すらあるシャイニーフェニックスと親しいというのはちょっと不自然かもしれない。


 だけどここはそれで押し通すしかない、翔くんに私=シャイニーフェニックスだと知られるわけにはいかないのだ。


「ま、まぁね~、ヒーロー好きの私とヒーローの彼女、気が合うんだよ」


 私はそう言って誤魔化した。翔くんはそんな私の様子を訝しげに見ていたけど、それ以上は突っ込んで来なかった。


「そんなもんかね、まあいいか、とにかく彼女にあんま迷惑かけんなよ? 彼女はお前みたいなただのヒーローごっこ好きとは違う本物のヒーローなんだからな」


「わかってるって、ただ翔くんに一つだけ言っとくけど、私は確かにシャイニーフェニックスみたいな力はないけどそれでも本気でヒーローになりたいと思ってるしそのために頑張ってる。だから『ごっこ』なんて言わないでほしいな」


「お、おう……悪かったよ……」


 翔くんは私の真剣な眼差しに気圧されたようにたじろぐと素直に謝罪の言葉を口にしてくれた。


「あら珍しい、いつもなら茶化してくるのに。でも、ありがと、とと……変に話し込んじゃったね、そろそろ急がないと学校遅れちゃう。翔くん、行こっ!」


 私はそう言って翔くんの手を引いて駆け出した。そんな私に手を引かれながら翔くんはやれやれと頭をかきつつも一緒に走り出してくれたのだった。



「なんだなんだ、妙に騒がしいぞ」


 校門を抜けて少ししたところで前方に何やら人だかりができているのを見つけた翔くんがそう呟いた。


「本当だ、何かあったのかな?」


 私も人だかりに気付き首を傾げる。確かあそこには学校のお知らせなんかを掲示するための掲示板があったはず……。


「行ってみようぜ、みう」


 翔くんはそう言うと私の手を引き人だかりの方に歩き出した。私もそれに倣いついていくことにした。


 掲示板の前では私の友達でもある新聞部の新部文乃ちゃんが張り出された校内新聞を背に腕組みなぞしながら満足げな表情を浮かべていた。


 どうも彼女が書いた記事がみんなの関心を集めているようだけど、いったいどんな内容なんだろう?


 私はつつっと新聞の方に目を向け……。


(んげっ!?)


 思わず絶句してしまう、張り出されていた校内新聞にはこんな見出しが躍っていたのだ。


【謎の天才科学者『レディーR』率いる新勢力『超頭脳帝国スーパージーニアス』VSシャイニーフェニックス、今週日曜日我が秋桜(コスモス)学園校庭にて対決!!】


「な、何よ……これ……?」


 私は思わず呆然と呟く。


「おい、新聞部の『しんぶぶんの』、これはどういうことなんだ?」


 私の疑問を代弁するかのように一人の男子生徒が文乃ちゃんにそう尋ねる。


 しかし、その聞き方には問題があった、正確に言えば彼の発した言葉の前半部分に問題があったのだ。


(あ、まずい……)


 ピキピキッと文乃ちゃんの額に青筋が浮かぶのを見て私は思わず耳を両手で塞ぐ。


「私は『にいべあやの』!! 毎度毎度わざとらしく間違えるなーー!!」


「ぐはっ!」


 耳をつんざくような大声と共に放たれた文乃ちゃんの怒りの鉄拳が男子生徒を直撃する。私はあちゃーと口に手を当てていたのだけど、男子生徒はめげずに立ち上がると再度文乃ちゃんに尋ねた。


「そ、そんなことより、この記事について説明してくれよ、新部!」


 男子生徒はそう叫ぶ。


 自分の記事が注目の的となっていることを思い出したのか一瞬で機嫌を直したらしい文乃ちゃんはふふんと鼻を鳴らすと得意満面の表情で説明を始めた。


 それによれば昨日の放課後、新聞部の部室で編集作業をしていた文乃ちゃんの元に一人の見知らぬ女の子が訪れたのだという。


 まあ間違いなくそれは昨日私と別れた直後の蘭ちゃんなのだろうけど、その子は文乃ちゃんには名乗りもせずにスクープのネタを提供してあげるからそれを記事にしなさいと、文乃ちゃん曰く『クソ偉そうな態度』で言ってきたのだそうだ。


 その態度に腹を立てよっぽど断ってやろうかと思った文乃ちゃんだったけど、蘭ちゃんからもたらされたネタは実に魅力的なもので、結果文乃ちゃんはその要求を飲むことになったのだという。


 そして、急遽予定を変更して蘭ちゃんから与えられたネタをもとに記事を作成し、それを今朝校門前広場の掲示板に張り出したというわけらしい……。


 私はその話を聞いて思わず頭を抱えてしまう。


 蘭ちゃん……昔から派手好きだったけど、まさかこんな大々的にやるとは思わなかったよ……。


 元より引くつもりなんかなかったけど、これで私はもう後には引けない。


 私は改めて覚悟を決めるのだった。


 しかし、それはそれとしてこの記事、気になる部分がある。


 それは謎の天才科学者レディーR率いる新勢力『超頭脳帝国スーパージーニアス』という部分だ。


 私は蘭ちゃんはあくまで一人で活動してるのだと思ったのだけど、どうもそうではなくて本当に世界征服のための組織を作り上げたみたい……。


 うーむ、これはちょっと想定外だったなぁ……。


 一体全体どうやったらこんな組織を作れるんだろう? いろんな意味でぶっ飛びまくってる蘭ちゃんのやることだけに組織の規模、戦力、構成員の素性、何もかもが未知数過ぎて想像もつかない。


 だけど、そんな組織が今私の目の前に立ちはだかっているんだ、私は何としても蘭ちゃんを倒さないといけない……。


 しかし……。


 キーンコーンカーンコーン……。


 あたりにチャイムが鳴り響き、その場にいた全員がハッとした顔で校舎へと走っていく。


 そうだ、私には蘭ちゃんの前に立ち向かわなければいけない相手がいるんだった!


 シャイニーフェニックスですら苦戦させる相手……勉強という名の強敵と相対すべく、私は教室へと駆け出すのだった。



 そしてそれから時は過ぎていき、ついに約束の日がやって来たのである――

お読みいただきありがとうございました。

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