第76話 幕間-とある空間にて-
そこは不可思議な場所であった。
暗闇に包まれ、ところどころで小さな光が瞬いている。
上下左右の区別すらつかず、全方位に無限に広がる空間。
例えるならば――いや、それはまさに宇宙空間そのものであった。
しかし、宇宙空間とは違い、そこには空気が満ちていおり、生物の生命活動に何ら支障をきたすことはない。
そして、その宇宙のような空間の中に、一人の少女の姿があった。
年の頃は15歳前後、腰まで伸ばした銀色の髪、紅玉のように赤い瞳、透き通るような白い肌とハッとするほどの美しさを備えた美少女であった。
ぞろっとしたフード付きの黒いローブという衣装であるが、フードは外されており、その素顔は露わになっていた。
その少女の名は『D』宇宙支配を企む最恐の帝国ギーガーク帝国の協力者としてその能力を振るう、自称占い師の少女である。
「シャイニーフェニックス……香取みう……」
『D』の呟きの答えるように、どこからともなくその空間に出現した二枚の写真が、彼女の前に浮遊する。
「これが運命によって選ばれた少女ですか……。あまりにも幼すぎる、それにとても強そうにも思えない……。しかし、この少女がヤーバン・ジーンを倒したのは紛れもない事実……」
二つの写真を見比べながら、『D』は物憂げに呟く。
「彼女が本物かどうかを見極めるためにはいましばらくの時間が必要……しかし、そうそう猶予があるわけでもない……ならばどうしますかねぇ……」
顎に指を当てて考え込む『D』。
しばらく考え込んだ後、彼女はある結論に辿り着き懐へと手を入れる。
「仕方ありません、少々過激ですが、強制的にでも覚醒してもらうことにしましょう、本物かどうかなど関係ない……本物にしてあげればいいのです」
そう言うと彼女は懐から数枚のカードを取り出した、それは勝手に彼女の手から離れ、先ほどの写真と同じように浮遊する。
「さて、そのためにはどれを動かすのが一番いいか……『星の破壊者』『宇宙の殺し屋』『日ノ本に恨み持つ過去の亡霊』『邪神』『哀れなる魔法少女たち』おっと『皇女』も使えそうですね。『親衛隊』は流石にまだ早すぎでしょうが……」
カードを一枚一枚確認する『D』だったが、ふと言葉を止め呆れたような顔で苦笑を漏らす。
「宇宙……そして青き星周辺には、邪悪が多すぎる。しかしならばこそ、『救世主』の覚醒にはもってこいの場所と言えるのかもしれませんが……」
そう呟き、彼女は選び出した一枚のカードへと手を伸ばす、しかし、その瞬間、彼女の懐から勝手にもう一枚白紙のカードが飛び出し、彼女の手を離れて浮遊する。
「これは……?」
彼女は驚きの表情を浮かべると、そのカードをそっと手に取る。そしてその途端、白紙だったはずのカードに絵が描かれた。
「な、なんですか……これ……」
そこには片手を頬にやり、高笑いをするようなポーズをとる、白衣の少女の姿が描かれていた。
「これは全くの想定外……新たな運命の紡ぎ手が現れたという事ですか……。ふふ、面白いですね、自ら動いてくれるというのなら私が干渉する必要はないでしょう。そのお手並み、拝見させていただくとしましょうか」
そう言って笑うと、彼女はカードと写真を懐にしまい込む。次の瞬間、そこには最初から何もなかったかのように、その空間から彼女の存在は消えていた。
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