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シャイニーフェニックス~落ちこぼれ少女のヒーロー奮闘記~  作者: 影野龍太郎
第10章【超決戦! シャイニーフェニックスVSヤーバン・ジーン!!】

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第72話 さらばヤーバン! 誇り高き戦士よ!!

 異次元空間にも風は吹くらしい、びょうびょうと吹きつける風が私の髪をなびかせる。


 取り巻くオーラによって金に染まって見えた髪はいつの間にか元のピンクに戻ってた。


 私は今目の前で起こったことが信じられず、ただはぁはぁと荒い呼吸を繰り返す。


 激突直後、膝を突いてしまった私に対して両の足でしっかりと立っていたヤーバン……。


 負けた……近寄ってくるヤーバンを前に私はそう思った。


 彼の口からは私を称賛する言葉が紡ぎ出されるけど、それは皮肉としか思えなかった。


 だけど、それは違った。彼は本心から言っていたのだ。


 この勝負の勝者が誰なのか……それがようやく分かったのは、ヤーバンが地面に倒れ伏した時だった。


 つうっと、私の頬を熱いものが伝っていく。


 それが涙だと気づくのに少し時間がかかった……。


(勝……った……。勝った……勝てたんだ、私は……)


 私は、勝ったんだ……。


 そう自覚した瞬間、私の中に熱いものがこみ上げてきた!


「私、私……勝ったんだーーーーー!!!」


 拳を握り私は空に掲げる。


 疲労感が激しすぎて弱々しくしか挙げられなかったけど、それでも私は勝利の雄叫びを上げた。


「シャイニーフェニックスー! 凄いね! やったね! あんなとんでもない奴に勝っちゃうなんて、ボク感動しちゃったよ!」


 そう興奮気味に私の周りをぐるぐると飛び回るのは、私のサポートアニマルであるルビィだ。


「うん、ありがとう! ルビィ!」


 そう言って私は右手の人差し指をピンと立てると、その指先にちょこんと止まったルビィの頭を撫でてあげる。


「本当に、俺も何度心臓が止まりかけたか……」


 続いて掛けられた声にハッとそちらに顔を向けると、憧れのヒーロー、いつも私を見守ってくれる正義の味方が立ってた。


「シュナイダーさん……」


 私が微笑みかけると、彼はそのままこちらに歩み寄り手を差し出してくれる。


「ありがとうございます……」


 その手を取りながら私はゆっくりと立ち上がる、が……。


「あっ……」


 疲労の限界を超えた私の身体は、ふらりと後ろに倒れそうになる。


「おっと!」


 そんな私を抱き留めてくれたのはシュナイダーさんだった。


 かあああっと、私の顔と体が熱くなるのを感じた。


「す、すみません……!」


 慌てて離れようとする私だったけど、彼は優しく微笑んで首を振るとそっと私の頭を撫でてくれた。


 その優しい手つきに思わずドキッとして私は固まってしまった。


 彼はそのまま静かに口を開いた。


「気にするな、あれだけの激闘だったんだ、疲れるのも無理は無い。今はこうして休んでいるといい」


 そう言って彼は私の頭をポンと叩く。


「あ、あの……ありがとうございます……」


 私はそうお礼を言ったけど、なんだか恥ずかしくなって俯いてしまう。


 そんな私を見て彼はクスリと笑った。


「ふふ、しかし、こうしていると改めて感じる。俺を何度も驚かせてくれた超戦士はこんなにも小さくて華奢な少女だったんだな……」


 シュナイダーさんは言葉を切ると、その顔を倒れ伏したヤーバンの方に向けてから改めて腕の中の私を見下ろしつつ続ける。


「君はその小さな体で、必死に特訓を重ね、懸命に戦い、そしてあのとてつもない力を誇っていたヤーバンを倒した。本当に……凄いよ」


「そ、そんな! 私なんて全然です! 私がヤーバンに勝てたのも、シュナイダーさんがいてくれたからです。シュナイダーさんが怪人軍団と戦って私の体力を温存させてくれてたから、私は全力で戦うことが出来たんです。凄いのは……シュナイダーさんの方ですよ!」


 そう言って、私はシュナイダーさんの顔を見上げる。

 すると彼は少し驚いたような表情を見せた後、フッと微笑んだ。


「君は相変わらずだな。だが、これだけは覚えておくんだ、俺は確かに怪人軍団を相手にすることで君とヤーバンの戦いの手助けをしたかもしれない、だけど、ヤーバンを倒したのは他ならない君自身の君だけの力なんだ」


「私の……力……」


 私は視線を落とし自分の手のひらを見る。


 そこに、ヤーバンを倒したあの瞬間の感触が蘇ってくるようだった。


「だから、自信を持て! そして堂々と胸を張っていいんだ。君は、君が思っている以上に凄い奴なんだぞ?」


「そうだよ! 君はシュナイダー様でさえ使いこなせないというエクシードモードを短時間とはいえ使いこなしたんだよ? もっと自信持っていいんだよ!」


 横からルビィがそう言ってくれる。


「わっ、ルビィ、びっくりさせないでよ!」


「あれれ~? いつの間にか二人の世界に入り込んでボクのこと忘れてたでしょ?」


「そ、そんなことないよ!」


 私は慌ててルビィにそう返しつつシュナイダーさんから少し距離をとる。


「慌てて離れなくてもいいのに……」


「ルビィぃぃ、そうやって人をからかうんじゃないの!」


 腕を振り上げて怒る真似をする私に、ルビィは、


「わぁ、シャイニーフェニックスが怒ったぞ~」


とわざとらしく言いながら飛んで逃げる。


 私は、もう……とため息をつきつつ口元に笑みを浮かべる。


「ふっ、ははっ……。全くあいつは……。だがおかげで緊張がほぐれた。感謝しないとな」


「そうですね……」


 そして私たちは少しの間笑いあった。


「さてと、それじゃ、後始末をしなければな……」


 しばしして、ふとシュナイダーさんが真剣な声でそう言った。


 後始末?


 疑問を浮かべる私には構わず、彼はゆっくりと歩き出すとある一点で足を止めた。


 見下ろす彼の足元には私に敗れ倒れたヤーバンが横たわっている。


 あの見事な筋肉は今は見る影もなくやせ細り、息も絶え絶えといった様子だ。


 私はその姿に憐みの感情を抱かずにはいられなかった。


 私を殺そうとした恐ろしい敵だというのに……。


 私がそんなことを思っていると、シュナイダーさんはどこからともなく彼の剣エクスブレードを取り出すとそれをゆっくりと振り上げる。


 え? もしかして……。


 うそ、でしょ……?


「ま、待ってください!」


 私は思わずそう叫んでいた。


 だって、そんな……。


 ヤーバンはもう動くことも出来ないはずなのに、それなのにどうして……!


 ピクッとシュナイダーさんはそのまま動きを止めると、こちらに視線を向けることなく言った。


「何故止める? こいつはまだ生きている、生かしておけばまた人を襲うだろう。ここで始末しておくのが得策だ」


「そ、それは……」


 私は言葉に詰まる、確かにシュナイダーさんの言う通りかもしれない……でも……。


「それにこいつは君を殺そうとしたんだぞ? 情けを掛ける必要なんてない」


「それは……そう、かもしれません、けど……」


 確かにヤーバンは私を殺そうとした。だけど……でも……。


 私はシュナイダーさんの背中を見つめる、そして意を決し口を開いた。


「それでも、命まで奪う必要は無いと思うんです。確かにこの人は私を殺そうとしました……でも、結果的とはいえ私はこうして生きています。それに、この人はもう戦う力を持っていません。シュナイダーさんも彼自身も言っていたでしょう? 彼はあの力を使うために寿命を……全てを捧げたって。だったらあえて命を奪う必要なんて無いじゃないですか」


 私はシュナイダーさんの背中に向けてそう訴える。


 きっと偽善だ、私の言ってることは……。


 私は今までギーガーク帝国の怪人たちを遠慮なく倒してきた。


 あいつらは人工生命体だから殺すというより壊すという感覚が強かったりとか、そういう違いもあるのだろうけど、結局殺してきたことには変わりはないわけで、それなのに急に殺すのは嫌だから止めようなんて、私の言ってることは偽善だ……。


 でも、それでも私は……もう戦う力もない、それどころか動くことさえできないヤーバンを殺すのは嫌だと、そう思ってしまったのだ。


「間違ってるのかも知れません……。それに、もしかしたら万が一にでもヤーバンが戦う力を取り戻す可能性を考えたら、きっとここで止めを刺した方が正解なんだと思います。でも、それでも私は……!」


「シャイニーフェニックス……」


 シュナイダーさんは私の名を呼ぶと、そのまま少し考えるようなそぶりを見せた後言った。


「分かったよ、俺も進んで殺しを行いたいわけじゃない。君を泣かせてまでやることじゃない。それに、君がそう言うならきっとそれが正しいのだろう」


「シュナイダーさん……」


 私はホッと胸をなで下ろした。


 間違っているのか正しいのか、それはまだ分からない。


 ううん、きっと正解なんてないんだと思う。


 だけど、私の気持ちがシュナイダーさんに届いた、そのことが嬉しかった。


「さてと、ではどうするか……このままにしておくわけにはいかんし、とりあえず拘束してS.P.Oに連絡して引き取りに……」


「くくくく、甘い、甘いぞシャイニーフェニックス!」


 顎に手を当てて考えこむシュナイダーさんの言葉を遮り、突然、倒れていたはずのヤーバンが笑い声を上げた。


「な、なにっ!?」


「そ、そんな……」


 驚愕の声を上げるシュナイダーさんと私。


 そんな私たちの目の前でヤーバンは勢い良く立ち上がるとこちらを……私を睨みつけた。


 その顔にはそれとわかるほどの怒りが満ち溢れている。


「何と言う甘さだ、それでは戦士としての資質がない!」


「ま、まだ動けるなんて!」


「なんという精神力だ……不死身か、この男……!?」


 驚愕しながらも、私とシュナイダーさんは慌てて戦闘態勢を取る。


 しかし、ヤーバンは気にせず私を睨んだまま言葉を続ける。


「シャイニーフェニックス、貴様の覚悟はその程度なのか! 情けない、情けなさすぎるぞ!! 戦士ならば、敵に情けをかけるな! 敵には死あるのみ、それが戦士の宿命だ!!」


「う、うう……」


 ヤーバンの言葉に私は思わず口ごもってしまう。


 確かにヤーバンの言う通りなのかもしれない、だけど……。


「やめろ、彼女は優しい子なんだ! それにお前のような戦士とは違う、責めるのは筋違いだ!」


 シュナイダーさんが私を庇うように前に出てそう叫ぶ。


 しかし、ヤーバンはそんなシュナイダーさんを嘲笑うかのように言った。


「ふん、シュナイダー、貴様もとんだ甘ちゃんだ! そんな小娘にほだされて敵である俺に情けを掛けるとはな!」


「確かにそうかもしれない……だが、優しさを失ってしまったらお前たちギーガーク帝国と同じだ、俺もシャイニーフェニックスもただ敵を倒すだけのマシンになるつもりは毛頭ない」


 反論するシュナイダーさんだったが、ヤーバンはそれを鼻で笑うと言った。


「そうか、ならば俺が全ての始末をつけてやろう! 見るがいい、これがヤーバン・ジーン最後の技だ!!」


 そして、ヤーバンは腕を振り上げる。


「くっ!?」


「あ、ああ……!」


 シュナイダーさんが腕をクロスさせ防御態勢を取り、私は後ずさる。


 私の、私のミスだ……ヤーバンの言う通り、なんて私は甘いんだ……戦士、失格だ……。


 カッ! 上空から放たれた光が全てを包み込み、そして……。


「あ、あ、あああ……」


 思わず閉じてしまっていた目を開いた時、私の前には信じられない光景が広がっていた……。






「こ、これは……」


「どう、して……」


 私とシュナイダーさんはただ呻くことしか出来なかった。


 上空から放たれた光は、私やシュナイダーさんではなく、ヤーバンを貫いていたのだ……。


「貴様らに……情けをかけられるなど恥でしかない……! それに、生きながらえ永遠に牢獄で暮らすよりも……今ここで死んだほうがマシだ……!!」


 片膝を突きながら息も絶え絶えにそう言うヤーバンに私は動揺し震えながら叫ぶ。


「そんな、そんなことって、どうして!? おかしいよ、そんなの!! どうして……!!」


 死ぬことなんてないじゃない!!  せっかく生き残れたのに!  生きてさえいれば、いつかきっと……!!


 ヤーバンはそんな私に対して顔を向けると笑った。それは今まで一度たりとも彼が見せたことのない、優しい……笑みだった……。


「これでいい、これでいいのだ。どうせ俺の命はもう長くなかった。そして、俺は勝手に自らの敗北を悔いて死ぬのだ、貴様が気に病む必要はない」


「で、でも! でも!!」


 私は必死に叫ぶ。だけど、ヤーバンはそんな私を見て静かに首を振った。


 そして、一転厳しい表情を浮かべて語り掛けてくる。


「いいかシャイニーフェニックスよ、一つ忠告しておいてやる。いつまでもそんな甘い考えではいずれ命を落とすことになるぞ!」


 その言葉に私はビクッと震える。


 そんな私を見てヤーバンはニヤリと笑った。


「くく、俺の言葉をどう捉えどう行動するかは貴様の自由だ、所詮俺は敗者、勝者のやることに口出しする権利などないからな……。だが、これだけは言っておきたかった、ギーガーク帝国は貴様の思っているより恐ろしい存在だぞ、特にノヴォス皇帝は、な……」


「ノヴォス……皇帝……? そいつが、ギーガーク帝国の支配者……」


 呟く私の瞳をヤーバンは真っ直ぐに見据えたままさらに言葉を紡ぐ。気づいていた、どんどん口調が弱くなっていることに。


「シャイニーフェニックスよ、貴様はもっと強くなれる。負けるなよ……。ふふ、こんな辺境惑星の調査任務に同行させられたときは怒りに震えたが、貴様と出会えてよかった……。戦士としての俺の人生、何一つ悔いはない……本当に満足だった……まん……ぞ……」


 それが……ギーガーク帝国の誇り高き戦士、ヤーバン・ジーン将軍の最後の言葉だった。


 その身を大地に横たえることなく立ったまま……ヤーバンは逝った。


 それは、戦いに敗れた彼が最後に見せた意地だったのかも知れない……。


「あ、ああ……」


 私は崩れ落ちそうになる身体を必死に支えながら震える声でそう呟いただけだった。

お読みいただきありがとうございました。

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