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シャイニーフェニックス~落ちこぼれ少女のヒーロー奮闘記~  作者: 影野龍太郎
第2章【将軍ヤーバン現る! 刺客はゲーム怪人!?】

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第6話 強敵出現です!

「く、来るな、来るなーー!!」


 じりじりとにじり寄ってくるゲームキングに金髪のお兄さんは恐慌状態で叫ぶ。

 智子はゲームキングに腕を掴まれたまま、恐怖のあまり声も出せず震えている。


「自らの愚かさをあの世で後悔しろ!」


 ゲームキングが振り上げた腕がお兄さんに迫る! しかし……!!


 バキッ!


「グハッ!!」


 そんな叫びと共に、ゲームキングは店の窓を突き破り外へ吹き飛んでいく。


「え?」


「何!?」


 お兄さんが、そして、ゲームキングから解放された智子がゲームキングが吹き飛ばされた原因――奴を殴り飛ばした私に注目する。


「ま、まさか……あなたは……」


 呆然とした表情で言う智子だったが、彼女がその先の言葉を言う前に、殴り飛ばされたはずのゲームキングが再び店内へと戻ってくると、私に指を突き付けて叫ぶ。


「なんだ、誰だ貴様は……!?」


 待ってました……! これでずっと考えてたあのセリフが言えるよ。


 やっぱり敵に聞かれてから名乗る方がカッコいいよね! よし!


私はポーズを決めると高らかに名乗りを上げた!


「転生の炎は悪を焼き尽くす正義の業火! シャイニーフェニックス!! ギーガーク帝国の野望を打ち砕くために参上!!」


 決まった……!! 


 ああ、気持ちいいなぁ……。これだよ、この感じ。ヒーローになったって感じがして最高だね。


 さて、ここからはカッコよく決めないとね。


「何ぃ!? シャイニーフェニックスだと、馬鹿な、シャイニーフェニックスは二人いたのか!?」


 ゲームキングの言葉に私はガクッとこけそうになる。


「私が唯一本物のシャイニーフェニックス! この子はただのゲーム好きで私の正体とかじゃないの!!」


 智子のことを指差しつつ言う私。智子も私に合わせてコクコクと頷いている。


「な、何……!? まさか、ただの地球人がこのオレにゲームで勝てるとはな……。まあいい、眼鏡の娘はシャイニーフェニックスを倒した後で改造しゲームクイーンとして一生オレのゲームの対戦相手になってもらうとしよう……!」


「ふ、ふざけないでよ。確かにあたしにはゲームクイーンってあだ名があるけどね、あんたみたいな化け物の相手なんてお断りよ!」


 強気に叫ぶ智子、しかし、小刻みに震えているのが分かった。私は彼女の肩に手を置くと安心させるように優しい声音で言う。


「大丈夫よ智子、あいつは私が倒す。あなたは必ず守ってあげるから!」


 そんな私の言葉に智子は安心したようにうなずくが、すぐに首を傾げた。


「ありがとう……。だけど、どうしてあなたあたしの名前知ってるの?」


 ギクギクギクッと、私の心臓が跳ね上がる。しまった、ついいつもの癖で名前呼んじゃったけど、今は香取みうだってバレちゃいけないんだった! どうしよう、どうやって誤魔化そう……。


「せ、正義の味方に分からないことはなし! だから知ってたのよ!!」


 あちゃー、苦しい言い訳になっちゃったかな? いや、でも大丈夫! きっとなんとかなるはず!!


「そ、そうなんだ……。まあ、いいか。助けてくれる相手に対して変に詮索するのは失礼だしね」


 智子、やっぱりあなたはいい子だね……!


 よし、ともかくさっさとこいつを倒してしまおう。私はゲームキングに向き直ると叫ぶ。


「さあ、かかってきなさい、と言いたいところだけど、店の中では迷惑がかかるし、お互い戦い辛いでしょ? 外に出なさい!」


 私は店外を指差しながらゲームキングに向かって叫んだ。ゲームキングはニヤリと笑うと、店の外へ出る。私もそれに続く。


「シャイニーフェニックスよ、オレの目的は貴様をギーガーク帝国要塞に連れ帰ることだ。貴様の能力はレガーン司令も買っておられる、洗脳し我らの戦力として使ってやる!」


 レガーン司令……? そいつがボスの名前ね……それにして私を洗脳して戦力にしようだなんてずいぶん大きく出たものね! そんなのお断りだよ!!


「ふんっ、誰があんた達なんかに協力するもんですか!」


 私が啖呵を切ると、ゲームキングは再び笑い出す。


「フハハハッ! 威勢のいいことだ、だが嫌でも来てもらうぞ!」


 叫ぶと、ゲームキングは腰を落とし拳を腰だめに構える。


「まずは小手調べの一撃だ、食らえ、ショットアタック!!」


 ゲームキングが拳を突き出すと、そこから光弾が放たれる! しかし、私は慌てず騒がず腕をかざす。


「シャインブリット!!」


 私の手のひらから放たれた光弾と敵の光弾がぶつかり合い、相殺される。


 あれ、この光景さっき見た気がする……そうだ、さっきプレイした格闘ゲームのワンシーンと同じだ……!

 確かこの後……。連続コンボを食らって私はKOされちゃったんだっけ……。


 さっきの初心者狩りのトラウマが蘇ってくる……。って、あれはあくまでゲーム、現実の戦いとは違うの……!


 私は少し首を振ると、気を取り直して大きく飛びあがり、上空から急降下キックを繰り出す。


「フェニックスキック!!」


 しかし、ゲームキングは少し身を屈めると、「キングアッパー!」と叫び私に向けてアッパーを繰り出す。迎撃された私はそのまま地面に叩きつけられる。


「う、い、痛……」


 私は両手を地面に付きなんとか立ち上がる。ゲームキングへと視線を向けると、彼は楽しそうに笑っていた。


「ふっ、素人が! 飛び上がっての攻撃など対空技を持たない相手にしか通用せんぞ!」


 くぅ……こいつぅ、まるでゲームみたいなこと言ってくれちゃって……! 現実の戦いはゲームじゃないのよ、もう!


 だけど、悔しいけど今のは不用意に空中に飛び上がった私のミスだ。今度は気をつけないと……。


 私が身構えると、ゲームキングは驚くほど素早い動きでこちらに肉薄し、そのまま連続攻撃を繰り出してくる。


「きゃああっ!」


 上段中段下段、とどめに足払いと立て続けに攻撃を受け、私は地面に倒れる。


 私はゴロゴロと地面を転がり、なんとか起き上がろうとするも、起き上がりに合わせてゲームキングは再び足払いをかけてくる。私は再び地面に転がることになった。


 くぅぅ……馬鹿にしてぇ! 怒りに燃える私は再び立ち上がろうとするが、やはり足払いで転ばされてしまう……!


「な、なんだこれ、まるで永久コンボだ!」


 ゲームセンターの中から戦いを見物に出てきたギャラリーの一人が叫ぶ声が聞こえる。


 何……永久コンボって……? よくわからないけど、この敵の攻撃を食らい続けるしかない状況を例えて言ってるのかな? 確かにさっきから一方的にやられっぱなしだもんね、私……。


 でも、だからってこのまま負けるわけにはいかないよ……!!


 とはいえ、起き上がろうとすれば足払いをされて転ばされるの無限ループじゃどうしようもない。


 私は倒れたまま頭を必死で回転させる……起き上がりに攻撃を合わされる……。


 なら、起き上がらなければいいんだ!


 私は起き上がらずにごろんと体を回転させると、仰向けになる。


「なんだ、その体勢は? もうあきらめたということなのか?」


 ゲームキングは私に近づき顔を覗き込んでくる。今だ!


 私は腹筋の要領で一気に上半身を起こす。


 ガチッ!


 頭と頭がぶつかる鈍い音が響く……! いったぁい……! だけど、ゲームキングの不意を付けた!


 私は一気に跳ね起きると、ゲームキングに向けてダッシュをかける!


「はああっ!!」


 しかし、私の繰り出した拳は、ゲームキングの腕によってガッチリとガードされていた。


「やるじゃない、なら!」


 私はさっきのお返しとばかりに上段中段下段と連続でパンチを放つも、ことごとく防がれてしまう。


 さらに足払いを繰り出すも、それすらもガードされてしまった……!


「くうっ!」


 私は慌てて飛び上がりゲームキングから距離を取る。またさっきみたいに足払いからの連続攻撃を食らっちゃう……!


「そ、そんな……私の攻撃がこんな簡単にガードされるなんて……」


「ははは、オレ様はゲームの天才だ! つまりそれだけ反射神経が優れているということだ! 貴様に勝ち目はない!」


 思わず呟いた言葉に、ゲームキングは自信満々に答える。


 こいつ……ただのゲーム好きじゃなかった、実力も本物、考えがおバカっぽいから忘れてたけど、ギーガーク帝国が繰り出してきた恐ろしいロボット兵器だったんだ……。


 私は改めて、敵の恐ろしさを思い知ることになった……。


「聞いたぞ、貴様はオドモンスターを倒したらしいな。だが急造のオドモンスターと十分に調整された戦闘用ロボットであるこのオレを一緒にしてもらっては困る」


 そう言うと、今度は自分から距離を詰めてくるゲームキング。私は慌てて迎撃態勢を取るも、すでに遅かったようだ。一瞬で懐に入られてしまっていた……! そしてそのまま腹部への強烈なパンチを受ける……!


「ぐふぅっ!!」


 たまらず地面に倒れる私。そこにさらに追い打ちをかけるように蹴りを入れてくる……!


「きゃあっ!!」


 その一撃を受けて、私の体は地面を転がる……!


「つ、強い……」


 思わずそんな呟きが口から漏れる……。余裕を見せてるつもりか、ゲームキングは今度は足払い戦法を仕掛けてくることはなく私を見下ろしているだけだった。


 私はなんとか立ち上がるも、その足元はおぼつかなかった。


「ははは、これで終わりだ。オレの最強技で決めてやる! もしかしたら死んでしまうかもしれんが、それならそれで邪魔者が消えて好都合だ!」


 ゲームキングはそう叫ぶと同時に、全身からバチバチと音を立てて稲妻のような光を放ち始めた!


 な、何あれ!? もしかして必殺技とか……?


「シャイニーフェニックス何やってんのよ、そんな奴に負けないでよ!!」


 その時、智子の声があたりに響いた。


「そんな初心者狩り野郎なんかに負けちゃだめよ、そんな奴やっつけちゃえ!! あなたなら出来るわ、さっきだって思いもよらない方法であいつの不意を突いて見せたでしょ!!」


 続いて、他のみんなの声まで聞こえてきた。どうやら、私がやられているのを見て、応援してくれているようだ……。


(そうだ、こんなところで負けるわけにはいかないんだ……!)


 私は気合を入れ直す、だけど、ゲームキングは技の体勢に入ってしまったようだ。

 その瞬間、私の頭の中にある光景が浮かんできた。それはさっきの智子とゲームキングとのゲームでの対戦の時の映像……!


 そうだ、こいつがゲーム好きでゲームみたいな戦いをすることを考えたら、きっと……!


「食らえ、ラストスパーク!!」


 ゲームキングが両手を突き出す、すると強烈な雷撃が私に向かって放たれた!


「ライトニングダッシュ!」


「なっ……?」


 ゲームキングの無機質な顔に確かに驚愕の表情が浮かんだ。


 それはそうだろう、彼の目からは私が突然消えたように見えたはずだから……。


 これは私の能力の一つ、全エネルギーを集中することによって一瞬だけだけど通常の何十倍、何百倍ものスピードで動くことができるのだ。


 私は一瞬で距離を詰めると、ゲームキングの懐に飛び込んだ。そしてそのまま連続攻撃を繰り出す!


 大技を放った直後、しかもそれをかわされた動揺によって動きが鈍っていたことにより、今度はガードされることなく次々とパンチが決まる! そして最後に思いっきり蹴りを入れた! その一撃を受けて吹っ飛ぶゲームキング!


「最後の最後で超必で決めようなんて欲出したのがあなたの敗因よ!」


 さっき智子がこいつに対して言ったのとまったく同じ言葉を投げかけてやる。


 超必殺技でカッコ良く勝つ、そんな考えにとらわれていたこいつは技がかわされた時の対処法を考えてなかったんだろう。


 ゲームと同じミスをするなんて根っからのゲーム好きだね、だけど、現実の戦いじゃそれが命取り!


 これでとどめだ!!


「コンティニューは出来ないよ! 必殺! シャイニーファイナルエクスプロージョン!!」


 私の両手から放たれた光球がゲームキングに迫る!


 ゲームキングのようなミスは私はしない。かわされた時のために油断なく身構える。


 だけど、それは必要なかった……。


「く、くそっ! ゲームなら貴様なんぞに負けなかったのに!! 現実は、現実は……クソゲーだああああああ!!」


 それが最期の言葉となったようだ……。次の瞬間には、光球の直撃を受けたゲームキングは大爆発を起こし破片一つ残さず消滅していた……。


(勝った……)


 私はその場にへたり込むと大きく息を吐いた……。


 パチパチパチと周囲から拍手が巻き起こる。見回すと現物していた人たちが私の勝利に対して祝福してくれていた。


 私は立ち上がると、みんなに向かって笑顔で手を振る。


 その時、ドガッという鈍い音と共に脇腹に強烈な痛みが走った……!


「ぐふっ!?」


 思わず苦悶の声を上げる私……!


 な、何……? 一体誰がこんなことを?


 痛むお腹を押さえながら振り向くと、そこには見覚えのある顔があった。


「ブ、ブーミ……!」


「クハハ、俺の名を覚えていてくれて嬉しいぜ、シャイニーフェニックス!」


 そう言ってニヤニヤ笑うのは鬼のような姿をした怪人ブーミ・ダイン。ギーガーク帝国の一員でオドモンスターやギーガーク兵などより立場が上と思しき男だ。


 こ、こんな時にこいつが出てくるなんて……。


「部下のゲームキングと手分けしてお前を探していたんだが、ゲームキングが先に遭遇してしまうとはな……、おまけに倒されちまうなんてちと計算外だったが、おかげでお前はもうへろへろ、絶好のチャンスってわけさ、さあ、大人しく捕まるんだな」


 そう言って手をわきわきさせるブーミ。私はお腹を押さえながら後ずさりする。


(くっ、さっきの一撃が効いてる……! それに何よりゲームキングを倒すのにエネルギーを使いすぎちゃった……、この上でブーミと戦うなんてどう考えても無理……!)


 こうなったら逃げてしまおうか……。ヒーローとしてはカッコ悪いけど、時には逃げる勇気も必要なはずだ……。


「おっと、逃げようとすれば、俺はここにいる連中を無差別に襲うぜ? いいのかい?」


 その言葉を聞いて思わず足を止めてしまった私を見てニヤリと笑うブーミ。私は周囲に視線を巡らせる。


 さっきまで私に拍手を送っていた人たちは新たなる敵の出現に、戸惑いとも怯えともつかない表情を浮かべていた。中にはその場から逃げ出す人もいる始末だ。


 だけど、どこに逃げても同じことだろう。私が逃げ出せばブーミは本気で暴れまわるに違いないのだから。そうなれば被害が広がるだけだし、何よりも私のせいで誰かが傷つくなんてことになったら耐えられない!


 覚悟を決めた私は再び構えを取る。

 それを見てブーミはますます嬉しそうな表情になった。


「本当ならこいつらを人質にしてお前を連れ帰ってもいいんだが、それじゃ面白くない。俺はお前をこの手で屈服させたうえで連れ帰りたいんだ、せいぜい楽しませてくれよ!!」


 そう言うと、一気に間合いを詰めてくる。速いっ!? その勢いのまま殴りかかってくるのを何とか避ける。空振りに終わった拳はそのまま地面に叩き付けられアスファルトに大きなクレーターを作る。あんなのまともに食らったらひとたまりもない……!


 こいつ、シュナイダーさんの蹴り一発で悶絶してたり、オドモンスター倒された途端逃げ出したりてっきり大したことないのかと思ってたけど……、全然そんなことなかった……!


 シュナイダーさんの攻撃一発でやられてたのは、要するにシュナイダーさんが強すぎたのが原因だったのだろう。


 こんな状況だというのに、私はシュナイダーさんの強さに改めて感心していたのだった。


 しかし今はそんなことを考えている場合じゃないよね! とにかくブーミの攻撃を避けながら反撃の機会を窺うしかないか……?


 だけど、反撃をしたところで果たしてこいつをどうにか出来るんだろうか……? せめてフルパワーでさえあればなんとかなったかもしれないけど、今の私ではとても勝ち目がない。それでもやるしかないのだけど。


「はあああっ!」


 攻撃は最大の防御とばかりに私はパンチを繰り出す、しかしブーミはあっさりと身をかわすと、私の背後に回り込みまるで抱きしめるように両腕を私のお腹へと回してきた。


「こ、この、離しなさいよ、変態!!」


 私は必死にもがくけど、全然振りほどけない……! そんな私を嘲笑うようにブーミは耳元にフーッと息を吹きかけてくる。ゾクリとした感覚が背筋を走る。思わず力が抜けてしまいそうになるが、何とか踏みとどまった。


「へへへ、いい反応だ、やっぱりお前は最高だぜ……!」


 そう言うと今度は耳に舌を這わせてきた……! 気持ち悪いっ!!


 嫌悪感が頂点に達した時、私の身体から光が発せられた。


「何っ!?」


 光に弾き飛ばされブーミは地面に転がる。


「はぁはぁはぁ……」


 エネルギーバリアを応用してなんとか奴を弾き飛ばせたのはよかったけど、い、今のでまたエネルギーを使っちゃったよ……。


 肩で息をしながら、私はブーミを睨み付ける。ブーミは立ち上がると、ニヤリと笑ってみせた。そして再び私に近づいてくる。


「ははっ、いいぜいいぜ、あっさりやられるよりもそうやって抵抗してくれる方が調教のし甲斐があるってもんだからな!」


 そう言うと、ブーミは再び殴りかかってくる。私はそれを何とか避けるけど、すぐに次の一撃が飛んでくる。それも避けようとするけど、身体が重い……!


 ダメだ……かわせない……!


 ドガッ!


 私はとっさに自分から後ろに飛んで威力を殺そうとしたけど、それでも衝撃を殺しきれず、そのまま吹き飛ばされてしまった……! 地面に叩きつけられ、ゴロゴロ転がる……!


「シャ、シャイニーフェニックス!!」


 智子が叫ぶ声が聞こえる……智子、まだ逃げてなかったの……?


 幸いブーミは私が逃げようとさえしなければ他の人間には興味はないらしいので、智子はそれほど危険ではないのは救いだけど、今はそうやって他人を気遣えるほどの余裕はなかった……だって今の私にはそんなことを考えることすら許されない状況なんだから……!


「もう動くことも出来まい! さあ、後は気絶させて連れ帰るとするか。といってもお前は簡単に意識を失わなそうだからな、へへ、俺の必殺技を見せてやるぜ、安心しな、顔が潰れても要塞に連れて行けば治せるからな!」


 そう言ってニヤニヤ笑いながら近づいてくるブーミに対して恐怖を感じるものの、身体が動かない……このままじゃやられる……!!


 私は思わず顔を伏せる、その時……!


「ぐあああっ!」


 ブーミが突然叫び声を上げたかと思うと、私の目の前に誰かが着地したのが見えた。


 まさか、このシチュエーション、シュナイダーさん!?


 私は期待に満ちた表情で顔を上げる。


 んげっ! 思わず絶句する。


 ブーミを殴り飛ばし私の前に降り立ったのはシュナイダーさんではなかった、流石にそんな都合の良すぎる展開はないと思っていたのでそれはいいのだけど、正義の味方っぽい人ですらなかった。


 赤鬼、一言で言うとそんな感じの男だった、赤銅色の肌にスキンヘッド、額からは角が伸びている。

 だけど、私を絶句させたのはその男の服装である、ビキニパンツとマントだけというとんでもない格好をしていたからだ。


 それにしても凄い筋肉……まるでボディービルダーみたい……それを見せつけるためにこんな格好をしているのだろうか……。


 とりあえず確実なことは、どう見ても地球人ではないということだ……こいつは何者? ブーミを攻撃したということはギーガーク帝国と敵対する立場にある人? だとしたら私の味方ってことになるのだけど……。


「ヤーバン様、何故! 何故俺の邪魔をなさるんですか!」


 ブーミが声を張り上げる、ヤーバン……様……? ということはブーミの上司? やっぱりこいつもギーガーク帝国の一員みたい……。でも、だとしたら何故ブーミを殴ったりしたんだろう?


「ブーミよ、貴様は栄光あるギーガーク帝国の戦士として恥ずかしくないのか? 俺は貴様が戦い始める前から見ていたが、この娘はゲームキングとの戦いで体力を消耗し万全の状態ではなかった。さらに、貴様は邪な考えで無駄にこの娘を甚振る始末。恥を知れ、恥を」


怒りに満ちた表情で言うヤーバン様とやらにブーミはびくりと身体を震わせる。


「う、うぐ、しかしですね……」


「言い訳無用。今ここで俺に殺されるか、大人しく帰るか選べ」


「わ、分かりました、帰りますよ、くそっシャイニーフェニックス、俺はまた来るぞ。それまでせいぜい首を洗って待ってるんだな!」


 渋々と言った感じでヤーバンに答えブーミは私に背を向ける、私はべーっと舌を出したが、ブーミはそれに気づくことなく去って行った。


「さて、シャイニーフェニックスよ、とりあえず部下の非礼は詫びておこう」


「ありがとう……と言いたいところだけど、結局あなたも敵なんでしょ、あまり嬉しい状況じゃないわね」


 私は強がりつつ立ち上がる。もう完全に足はガクガクだし膝も笑っているけどなんとか踏ん張って立つことが出来た……でもまだ身体が震えていてとても戦える状態じゃなかったので身構えつつも相手の出方を伺った……。


「ククク、いい目をしている。絶望的状況だというのに貴様は少しも諦めていない、これは当たりかもしれんな……」


「当たり?」


 謎の発言に私は思わず聞き返す、どういう意味だろう?


「俺が戦うにふさわしい相手かも知れんということだ、だが、今の貴様では無理だろうな。疲れているからという意味ではなく実力が足りんという意味でだ」


 ヤーバンはそう答えるとニヤリと笑ったような気がした、そして次の瞬間には私の目の前にいた! 速い!?


 ヤーバンは私の顎を掴むと、顔を引き寄せ言った。


「俺はギーガーク帝国の将軍ヤーバン・ジーン。強い者との戦いを望む。シャイニーフェニックスよ強くなるがいい、せめてブーミを軽くあしらえるくらいにはな!」


 それだけ言うとヤーバンと名乗る男はマントを翻し去っていった……。


 た、助かった……。それにしても、なんか典型的な戦闘狂って感じの人だったなぁ……。私、とんでもないのに目を付けられちゃったみたい……。


 それにブーミも侮れない相手だとわかったし、私これからヒーローとしてやってけるのかなぁ……。


 シュナイダーさん、私ちょっとだけ自信喪失しちゃったかもしれません……。


「シャイニーフェニックス……」


 私が暮れかけた空に顔を向けていると、智子がおずおずと話し掛けてきた。私は慌てて振り返り、笑顔で答える。


「ご、ごめんね! ちょっと考え事してて……」


 私は咄嗟に誤魔化したけど、きっと不審に思われただろうなと思った。


「それはいいけど、あなたっていったい何者なの? それに、あいつらも……」


「私が何者なのかは詳しくは言えないけど、一つ言えることは正義の味方だってことよ。あいつらはギーガーク帝国、私の敵で宇宙の侵略者よ……!」


「宇宙の……ってことは本当に宇宙人!? もしかしてあなたも?」


 言われて私は言葉に詰まる、さてどうしようか。もちろん私の正体が香取みうであることは秘密にしなければならないのだけど……。


「まあ、そんなとこね」


 考えた末に私はそう答えておいた、シャイニーフェニックスは宇宙人、そう言うことにしておけば地球人香取みうとの関係を疑われなくて済むだろうと考えたのだ。


「そっか、まあそれはどうでもいいか。あなたはあたしを助けてくれた人、それだけで十分だもんね!」


 そう言って智子は笑顔を向けてくる。その顔を見ていると、さきほど生まれた敵に対する恐怖心が少しずつ消えていき、代わりに智子やみんなを守るために頑張らなきゃいけないという使命感が湧き上がってきたのだった――。


(そうだ、こんなところで負けてられない!)


「ありがとう、私負けないから、これからも応援よろしくね!」


 そう言って私は手を上げる。智子はそのまま私に背を向けると、何かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡し始めた。


「どうしたの?」


「いや、みう――ああ、あたしの友達なんだけど、彼女の姿がさっきから見当たらないのよ……もしかしたらさっきの奴らの攻撃に巻き込まれたとか……」


 しまった! これじゃ私行方不明状態じゃない! とりあえず早く変身解除して智子の元に戻らないと……!


 だけど、とりあえず智子を安心させたかった私は彼女に対してこんなことを言っておいた。


「香取みうちゃんなら、私が安全な場所に避難させたわ、だから安心して、もう少ししたらきっとここに戻ってくると思うから」


 それを聞いた智子は安心したのか、ホッと胸を撫で下ろしていた。


「じゃあ、私はそろそろ帰るね。もうあいつらがあなたを狙ってくるようなことはないと思うけど、くれぐれも気を付けてね」


 そう言い残すと、私は空へと舞い上がる。


 いきなり浮かび上がった私に智子は目を丸くしていたけど、手を大きく振って見送ってくれた。私もそれに応えるように手を振り返す。


 そして、近くの公園の茂みで変身を解除した私は、智子と合流した後で家路につくのだった……。


 帰り道、智子からシャイニーフェニックスの活躍の話を聞かされながら、私はそれは私の事なんだよ~と言いたい衝動を必死に抑え込んでいたのだった――。


第2章【将軍ヤーバン現る! 刺客はゲーム怪人!?】

完


【次回予告】

みう「幹部が出てきちゃうなんて……これから大変な戦いになりそう、私やっていけるのかなぁ? それに、学校では翔くんが意地悪してくるし……もうっ、どうして私ばっかりこんな目に遭わなくちゃいけないのよぉ!! 次回、シャイニーフェニックス『みうと翔平とギーガーク帝国と』。絶対見てね!」

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