第67話 次元よ震えろ! 究極決戦開幕!!
「……なるほど、どんな特訓をしたのかは知らんが大分マシにはなったようだな。なかなかの一撃だった、おかげで目が覚めたぞ」
殴られた頬に手をやりながらそう薄ら笑いを浮かべるヤーバンに、シャイニーフェニックスは不快感も露わに吐き捨てる。
「そんな余裕見せてていいの? 今のはただ強くなった私を見せるためのあいさつ代わりの一撃なんだけど?」
「ほうそうか! つまり今の一撃は今の貴様の力のほんの一部にすぎんわけか、面白い、面白いぞシャイニーフェニックス!! 認めよう、貴様は俺が戦うにふさわしい戦士! その力を存分に発揮し、俺を越えて見せろぉ!!」
楽しそうに笑いながら叫び、ヤーバンは両手を腰に当て、咆哮と共に全身に力を込めると筋肉が大きく隆起していく……!
ビリビリビリビリ……! 空気が、まるで悲鳴を上げるように激しく振動する。
「す、凄い……この空間そのものが震えてるみたいだ……エネルギーの数値もどんどん上昇してる! ボクの計測器も壊れてしまいそうだ……うひぃ!」
俺の隣で、ルビィが翼で頭をかばいながら震えているのが見えた――だが無理もないだろう、この凄まじい力の波動を前にすれば誰だって恐怖を覚えるに違いないのだ……。
これがヤーバンの実力か……まさかこんな奴が地球方面部隊にいたとはな……俺がフルパワーだったとしても楽には勝たせてもらえなかっただろう。
この凄まじい力を前にしてはシャイニーフェニックスと言えども……。
俺はヤーバンからシャイニーフェニックスの方へと視線を向ける、すると彼女はヤーバンから発せられる物理的な衝撃を伴うエネルギーの風を両腕でガードしながら、怯むこともなくしっかりと両の瞳でヤーバンを見据えていた。
「なんて……パワーなの……よくわかんないけど、これがたぶん漫画とかでよく聞く『闘気』って奴なのかな? まあ、なんでもいいや。大事なのは心を強く保つこと、冷静さを欠かないこと、相手を怖れず、敵より自分の方が強いんだって信じ抜くこと!!」
そして、シャイニーフェニックスもヤーバンと同じように両手を腰に付けると、気合と共にエネルギーを高めていく。
「私は、地球を守る正義のスーパーヒロインシャイニーフェニックス!! 私は強い! だから負けない! 絶対に勝つ!!」
ボワッとまるで炎が吹き上がるように、彼女の身体から赤いオーラが立ち上る!!
「こっちもこっちでとんでもないエネルギーだ! シュナイダー様! シャイニーフェニックスは一体どうしちゃったんですか!? いくら特訓したからってここまでパワーアップできるなんて……!」
驚愕の表情を浮かべつつ尋ねてくるルビィに俺は、「おそらく」と前置きを置いてから推測を述べる。
「お前も知ってるだろうがSPスーツの力は精神力の力だ、特訓によって自分の甘さと弱さを痛感したこととで彼女の精神力が極限まで高まっていたことに加え、ヤーバンの闘気に呼応してその力が引き出されたんだろう」
「シャ、シャイニーフェニックスって宇宙戦士適正値0だったんですよね? これだけの資質と才能を持ってる子が0なんて……どうして」
呻くように疑問を口にするルビィだったが、俺にはむしろ少しだけシャイニーフェニックスが――みうちゃんが宇宙戦士適正値0と計測された理由が分かる気がした。
彼女がこれだけのパワーアップを果たした最大のきっかけはヤーバンに殺されかけたことだ、そして彼女が助かったのは俺がたまたま地球に来たから、つまり偶然以外の何物でもない。
つまりその偶然がなければ彼女はとっくに死んでいたのだ、そんな偶然の積み重ねの上に発揮される力など、SPチェンジャーの計測器で測れるわけがないのである……。
俺とルビィがそんなやり取りをしている間にも、シャイニーフェニックスとヤーバン、二人の力はどんどん高まって行く、そしてそれが最高潮に達したとき二人が同時に動いた!
「はああああっ!!」
「おおおおおっ!!」
同時に繰り出された拳がぶつかり合い火花を散らすと同時に凄まじい衝撃波が発生し、こちらにまで伝わってくる!!
「わあああっ!」
「ルビィ、掴まってろ!」
飛ばされかけたルビィを俺はむんずと掴むと、自分の胸へと抱き寄せる。
そんな俺たちのことなどもはや眼中にないとでも言うかのように、二人は己の力をぶつけ合っていた、シャイニーフェニックスは身体を回転させヤーバンの拳を滑らせるとその無防備な背中に向けて蹴りを放つ!
ぐはっとそのまま前のめりに倒れ込むヤーバンだったが、地面に手を突くと足を跳ね上げ踵でシャイニーフェニックスの顎をかち上げる――しかし、それすらも読んでいたのか彼女は後ろに飛び退くことで衝撃を殺していた!
ヤーバンは両手を使い身体を反転させると、その勢いのままにシャイニーフェニックスに向かって突っ込んでいく。
「今度は腕だけではすまんぞぉ!!」
慌てて腕をクロスさせ、防御の体勢に入るシャイニーフェニックスをあざ笑うように叫ぶと、その剛腕を振り下ろす!!
ドゴッ!!
その一撃はシャイニーフェニックスの小さな体を軽々と吹き飛ばし、近くのビルへと叩き付けるのだった……! ズガァァァンッッ!!!
崩れを落ちるビルを突き抜けぶっ飛んでいくシャイニーフェニックスだったが、空中でくるくると回転するとなんとか体勢を立て直す。
「と、とんでもないパワー……やっぱり単純な力では勝負になりそうもないわね……」
腕をさすりながら言うシャイニーフェニックスだが、あれだけの衝撃を受けたというのにそこまでのダメージを受けた様子は見られない。
バリアも強化されているからこその状況ではあるが、少なくともそう簡単にやられてしまうようなことにはならなさそうだな……とはいえやはり彼女自身が言うように、パワー勝負では圧倒的不利だろう、なんとか隙を突きつつスピードを活かした戦術で戦うしかないだろうな……。
「はははは、いいぞシャイニーフェニックス! 楽しいなぁ、これこそ俺の望んでいたものだ、もっとだ、もっと俺を燃えさせろ! 貴様には俺を楽しませる義務があるのだ!!」
「何が義務よ、気持ち悪い事言って……これだから戦闘狂って……。だけど、そうやって楽しんでいられるのも今の内だよ! ヤーバン、あなたにも戦いが持つ恐怖と苦しみを教えてあげる!!」
見上げるヤーバンに言い放ち、シャイニーフェニックスは空中から一気にヤーバンに飛び掛かると、拳を繰り出す。
ガガッ! 一撃はヤーバンに受け止められるも、気にすることなくさらに彼女はパンチとキックの連打を繰り出していく。
「はああああっ!」
ヤーバンは矢継ぎ早に繰り出される攻撃をなんとかガードするものの、その勢いに押され徐々に後退していく。
「いいぞシャイニーフェニックス! そのまま押し切っちゃえー!!」
俺の隣で声援を送るルビィの声に応えるように彼女の攻撃はさらに激しさを増していく……!
「くっ……調子に、乗るな!!」
ヤーバンは両腕を使い、攻撃をガードしつつその剛腕を繰り出すも、シャイニーフェニックスは彼が突き出した拳をするりと避けると懐に潜り込みそのどてっぱらに膝蹴りを食らわせる。
ドゴォッ!!
鈍い音が響き渡り、ヤーバンの口から呻き声が上がる――そしてその瞬間を狙っていたかのように今度は顎に向けてアッパーカットを叩き込む!!!
バキィッッ!!
さらに、空中に跳ね上げられたヤーバンに向けてシャイニーフェニックスは追撃の回し蹴りをお見舞いする!
先ほどとは逆に、今度はヤーバンが吹き飛ばされビルへと叩き付けられる番だった……! ガラガラと崩れていくビルの中へと埋もれていくヤーバンだが、それしてもなんという戦いだ……。
ここが俺たち以外には人のいない異次元空間でなければ、凄まじい被害が周囲に出ていたことだろう……もっともそれが分かっているからこそ、シャイニーフェニックスもヤーバンも通常空間では押さえているエネルギーを開放して戦っているのだとは思うがな……。
「どうよ!? 流石に効いたでしょ!!」
瓦礫に埋もれたヤーバンに向けて、シャイニーフェニックスが地面に降り立ちながら言う。その声音には確かな自信が見え隠れしていた。
「――ふっふふ……」
しかし、そんなシャイニーフェニックスの言葉を受けてなのかは不明だが、不意に笑い声が響くと共にゆっくりと土煙の中から歩み出てくる影が一つ、ヤーバンである。
「むぅ、まだまだ余裕はありそうって感じね……」
ダメージは受けているようだが、さりとて致命傷を負ったとはいえない様子のヤーバンを見てシャイニーフェニックスは眉根を寄せる。
「伊達にギーガーク帝国の将軍をやっているわけではない。この程度ではやられんよ。しかし、貴様の力には驚かされるばかりだ、さて、それではそろそろウォーミングアップも終わりにして本格的に戦うとするかな」
そんな彼女の呟きに応えるようにコキコキと首を鳴らしながら言うヤーバン。
次の瞬間、奴が突き出した手のひらから光弾のようなものが放たれる! ――バシュッ!! 放たれた光線を咄嗟に避けるシャイニーフェニックスだったが……避けたはずのそれは空中で向きを変えると再び彼女に向けて襲い掛かってくるではないか……!
「くっ、しつこい!」
シャイニーフェニックスは動きを止めると、気合を込めて腕でそれを弾き飛ばす! 吹き飛んだそれはまるで花火のように大きな爆発を起こす。
「なかなかやる……といいたいところだが、一発防いだ程度でいい気になるなよ?」
バババッ! とヤーバンはさらに何発――いや何十発もの光弾を撃ち出してくる。
「私を……甘く見ないでっ!!」
叫ぶと、シャイニーフェニックスは光弾の嵐の中に自ら突っ込んでいく……!
「なっ、む、無茶だよ!?」
ルビィの制止も聞かず、シャイニーフェニックスは光弾をあるいは弾き、あるいは避けながら一直線にヤーパンの元へ突き進んでいく! そして……。
「バーニングブロウ!!」
拳に炎を纏わせた、強化打撃の一撃を叩き込む!!
――ドゴォッッ!!! 鈍い音が響き渡り、ヤーパンがその体をくの字に折り曲げる。
「う……ぐ、お、おお……が、は……」
そのまま腹を押さえヨロヨロと後退していくが、シャイニーフェニックスは警戒心からか追撃には出ず様子見をしているようだった。
「や、やってくれたな、小娘……!」
口の端から血を流しながら、睨みつけてくるヤーバンの凄絶な顔は、さらなる激しい戦いを予感させるものだった……。
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